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旧優生保護法訴訟に係る
東京高裁判決及び大阪高裁判決上告取り下げについて

2022年3月15日

旧優生保護法訴訟に係る
東京高裁判決及び大阪高裁判決上告取り下げについて

全国自立生活センター協議会
代表 平下 耕三

 私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、障害者権利条約の完全実施に向けて障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会(インクルーシブな社会)を目指して活動する障害当事者団体です。全国110ヶ所を超える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。
国へ、旧優生保護法訴訟の3月11日東京高裁判決に対し上告しないことを強く求め、さらに、3月7日付で大阪高裁判決に対し上告したことへ強く抗議し、上告取り消しを求めます。
2022年2月22日の大阪高裁判決、3月11日の東京高裁判決では、ともに「旧優生保護法は非人道的で憲法に違反する」とし、この法律を作った国に責任があることを認めました。
賠償請求権が消滅する除斤期間に関しては、国が障害者に対して差別や偏見を助長し、被害者らを社会から切り離した国の責任を指摘、「訴訟を起こすための情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境にあった」とし、両判決とも「そのまま適用することは正義、公正の理念に反する」と判断されました。東京高裁判決では、人権を侵害する不妊手術を積極的に実施させていた国には賠償責任があるとして、「原告が国の施策による被害だと認識するよりも前に、賠償を求める権利が失われるのは極めて酷だ」と指摘し、「国が謝罪の意を表明し、一時金の支給を定めた法律が施行された平成31年4月から5年が経過するまでは、賠償を請求できる」と示しました。
また、岸田文雄首相・松野博一官房長官は、大阪高裁判決を受けて「政府として真摯に反省し、心から深くお詫び申し上げる」と言明しました。
国として間違ったことをしていたと反省し、被害者に対して申し訳ないと思っているならば、なぜ国は上告するのでしょうか。一連の旧優生保護法訴訟では、原告の方たちは高齢となっており、全国25名の原告のうち、すでに4名の方が亡くなられています。
これ以上、人権回復、損害補償を遅らせることはできません。控訴人らすべての優生保護法被害者に謝罪と賠償をすること、そして、未だ声を上げることのできない被害者への更なる調査と、二度と同じ過ちを繰り返さないための検証、一時金支給法の抜本改正を行い、優生思想のない社会にするための施策を講じることを強く求めます。

 私たち全国自立生活センター協議会は、全国の仲間たちに国の上告に対して各地から抗議の声を上げることを呼びかけます。障害のある人が一人の人間として尊重され、命の重さや尊さ、不要な命などなく、人間の存在そのものに価値があることを訴え続け、二度と同じ過ちを繰り返させないことを強く求めていきます。

(通常)旧優生保護法訴訟に係る
東京高裁判決及び大阪高裁判決上告取り下げについて

(やさしい)旧優生保護法訴訟に係る
東京高裁判決及び大阪高裁判決上告取り下げについて

【要請文】旧優生保護法
東京高裁判決上告しないでください!
大阪高裁判決上告取り消してください!

 

旧優生保護法の大阪高裁の判決に対する声明

2022年3月2日

旧優生保護法の大阪高裁の判決に対する声明

全国自立生活センター協議会
代表 平下 耕三

私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、障害者権利条約の完全実施に向けて障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会(インクルーシブな社会)を目指して活動する障害当事者団体です。全国110ヶ所を超える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。

2022年2月22日、旧優生保護法のもとで不妊手術を強いられたことは憲法違反だとして、聴覚障害のある夫婦らが国に賠償を求めた裁判で、大阪高等裁判所(太田晃註裁判長)は大阪地裁の判決を覆し、国に賠償を命じる判決を言い渡しました。

2018 年 1 月、宮城県の女性 2 人が 10 代のとき、強制的に不妊手術をされたとして、国 を相手にとって裁判を起こしたことをきっかけに全国各地で起こした裁判で初の勝訴判決となりました。判決では、1審判決で認められなかった賠償請求権が消滅する除斤期間に関し、「そのまま適用することは正義、公正の理念に反する」と判断しました。まさに除斤期間を適用しなかったことを強く支持します。

一連の旧優生保護法訴訟では、原告はいずれも高齢となっており、全国25名の原告のうち、すでに4名の方が亡くなられています。今回の控訴人の80代の夫は、「高齢なので国が上告すれば、判決まで待てるか不安なので上告しないでほしい」と求めています。

国に対しては、上告せずに速やかに本判決を確定させること、控訴人らすべての優生保護法被害者に謝罪と賠償することを強く求めます。そして、未だ声を上げることのできない被害者への更なる調査と、二度と同じ過ちを繰り返さないための検証、一時金支給法の抜本改正を行い、優生思想のない社会にするための施策を講じることを強く求めます。

私たち全国自立生活センター協議会は、全国の仲間たちに今回の全国で初めてとなる勝訴判決をこのまま確定させるべく国に上告しないよう声を上げることを呼びかけます。そして、すべての被害者の方々が救われるよう、全国各地の裁判での勝訴を目指し、傍聴をはじめとする様々な支援を行います。

障害のある人が一人の人間として尊重され、命の重さや尊さ、不要な命などなく、人間の存在そのものに価値があることを訴え続け、二度と同じ過ちを繰り返させないことを強く求めていきます。

旧優生保護法の大阪高裁の判決に対する声明

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コスタリカコーヒー販売事業が引き継がれました。

当会の加盟団体であるメインストリーム協会が、コスタリカの自立生活センター支援のためにコスタリカコーヒーの販売をしておりましたが、販売事業がNatuRica合同会社(下記URL参照)へ引き継がれました。
コーヒー販売の収益はコスタリカの自立生活センターMORPHO(モルフォ)の活動資金として使われます。これを機会にぜひみなさんの事務所やご家庭、カフェにコスタリカコーヒーの導入をご検討ください!JIL事務所でもいつも頂いています。毎日飲むのにぴったりな、すっきりとした味わいでとっても美味しいです!

NatuRica合同会社:https://www.naturica-cr.com/

コスタリカの自立生活センターの活動はこちらでチェック!

 

 

障害者無差別殺傷事件から
5年を迎えるに当たっての声明

2021年7月26日

障害者無差別殺傷事件から5年を迎えるに当たっての声明

全国自立生活センター協議会
代表 平下 耕三

 私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、地域の中で共にある社会の実現を目指して活動する障害当事者団体です。全国各地に110ヶ所を越える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。
 2016年7月26日未明、神奈川県相模原市にある障害者支援施設「津久井やまゆり園」に元職員で死刑判決を受けた植松聖被告が侵入し、鋭利な刃物で入所者19名を殺害した事件から5年が経過しました。しかし昨年、全16 回に及ぶ公判において被害者個人の名前は「甲」「乙」などと匿名で扱われ、その生きてきた証も表明されておらず、事件が起こったその背景や、そもそも入所施設の在り方などの点において、審議が明らかに不十分で何も解明されていません。判決文の中に植松聖被告の反省のなさやヘイトスピーチには踏み込んでおらず、社会の中にある優生思想とこの事件の関係について問題意識が感じられない判決文だったと言わざるを得ません。Ablism(能力主義)と優生思想の関連に触れることなく、社会に蔓延する優生思想の危険性について全く触れられなかったことは、この事件の波及性を社会に訴える機会を逸した多くの課題を残す裁判となりました。
 昨年からの新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大は未だに収まらず、多くの人々の命や健康が脅かされ続けています。
健康や経済が阻害されると誰もがあっという間に弱い立場に追いやられ、そして、すでに弱い立場にある人がさらに置き去りにされるという、日本社会の脆弱さをこのパンデミック(世界的大流行)は浮き彫りにしました。
 このような社会の脆弱さは、障害のある人たちを入所施設に収容してきた社会の在り方と繋がっていると考えます。
事件当時、障害のある人たちに対するヘイトスピーチが浴びせられました。今回のコロナ禍においても優勢思想にもとづいた障害のある人への治療が拒否されたり、後回しにされてしまうという差別が国内のみならず、世界中で起きていることを私たちは知っています。誰もが命と生活を軽んじられる状況があると考えます。奪われてよい命、軽く扱われてよい命などありません。
 私たちは、改めて事件の風化を阻止し、障害のある人が一人の人間として尊重され、名前が匿名で扱われることがないような社会の実現に向け、命の重さや尊さ、不要な命などなく、人間の存在そのものに価値があることを訴え続け、二度と同じ過ちを繰り返させないことを強く訴え続けていきます。

障害者無差別殺傷事件から5年を迎えるに当たっての声明
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相模原障害者殺傷事件(津久井やまゆり園事件)から
5年。各地での追悼企画のご紹介

相模原障害者殺傷事件(津久井やまゆり園事件)から5年。
コロナ禍により大規模集会の開催はありませんが、
各地での追悼企画をご紹介します。

今年は相模原障害者殺傷事件から5年の年です。
毎年この時期に神奈川の団体が中心となって「ともに生きる社会を考える神奈川集会」を開催し、DPIとJILは共に呼びかけ団体として参加してきました。
昨年はコロナ禍で開催がなされず、声明を発表するという形になりました。
今年は、コロナ禍及びこれまで中心的に活動されていた神奈川の団体の諸事情もあり、残念ながら具体的なアクションができません。
しかし、他県での集会や、小規模であったり個人単位での開催も含めて各地でそれぞれの取り組みがなされます。7/17までにいただいた開催情報を、以下のようにご紹介させて頂きます。

自立生活センターSTEPえどがわ:今村登

<関東>
■7月25日(日)12:30~
場所:LOFT/PLUS ONE(新宿)&オンライン配信有り(有料)
『相模原障害者殺傷事件の真相に迫る』
https://peatix.com/event/1953097T~fbclid=IwAR2Vie95IYGNRf-398OdSD0aXQQ1uhM1aokQ-E5ZVNvxDhCUJkNv3eAFuqU

■7月25日(日)14:00~
オンライン(zoom)イベント
相模原殺傷事件を忘れないzoom合同アピール行動2021
共催:相模原殺傷事件を忘れない実行委員会えどがわ/津久井やまゆり園聖火リレーに反対し、自分達のありようも問い続ける仲間達の会
https://www.facebook.com/Poemhajimenoippo/posts/2837760632980581/

■7月26日(月)14:00~15:30
場所:津久井やまゆり園(オンライン献花)
7.26 施設害者虐殺から5年・JIL脱施設プロジェクト「献花及びオンライン献花
呼びかけ:JIL脱施設プロジェクト
連絡先:jcsa.kikusui@gmail.com
現地(津久井やまゆり園とZoom繋ぎオンラインで献花)
https://us06web.zoom.us/j/89710205103~pwd=NEgvVkpuN1h3ZlNoMkFKcS9sZS9Udz09
ミーティングID: 897 1020 5103パスコード: 575682

■8月1日(日)13:30~
場所:ソレイユさがみ
『津久井やまゆり園事件から5年~マイノリティの人権について考える』
主催:津久井やまゆり園事件を考え続ける会
https://www.facebook.com/events/1409843546043453

<関西>
■7月25日(日)15:00~
オンライン追悼アクション(facebookイベントとZoomでライブストリーミング)
『障害者を殺すな 7.25 オンラインアクション ――やまゆり園事件を忘れない』
主催:リメンバー7.26神戸アクション
https://www.facebook.com/events/958845818242668~ref=newsfeed

■7月26日(月)18:30~
場所:大阪梅田ヨドバシカメラ周辺
『7.26施設障碍者虐殺5年目の追悼アクション』
主催:726追悼アクション有志
https://www.facebook.com/events/160686652695988/~acontext=%7B%22event_action_history%22%3A%5B%7B%22mechanism%22%3A%22your_upcoming_events_unit%22%2C%22surface%22%3A%22bookmark%22%7D%5D%2C%22ref_notif_type%22%3Anull%7D

■7月26日(月)14:00~
場所:長居公園
『相模原事件を風化させないアピール活動』
主催:大阪のあいえる協会(自立生活センターまいど)

■8月1日(日)13:30~
オンライン(zoom)イベント
定員:30人程度(先着順)
『津久井やまゆり園事件を忘れないZOOM集会inみえ』
主催:津久井やまゆり園事件を忘れない集会inみえ実行委員会
https://sites.google.com/view/yamayuri0801~fbclid=IwAR1-OoYK6SCMYNzoYGP2ENE4K5ensqGYZ03062GiIZ6c4fhyE7zoB5oxH8Q

小山田圭吾氏の「障害者いじめ」問題から見る、
日本におけるインクルーシブ教育の課題に対する声明

2021年7月21日

小山田圭吾氏の「障害者いじめ」問題から見る、
日本におけるインクルーシブ教育の課題に対する声明

全国自立生活センター協議会
代表 平下 耕三

 私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害者権利条約の完全実施に向けて障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会(インクルーシブな社会)を目指して活動する障害当事者団体です。全国110か所を超える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。
インクルーシブな社会を実現するために、教育分野からでは、障害者権利条約第24条「教育」および一般的意見4号(インクルーシブ教育を受ける権利に関する一般的意見)に書かれているインクルーシブ教育の実現を目指し全国で活動しています。

東京2020オリンピック・パラリンピック大会における楽曲制作へ参加する予定だったミュージシャンの小山田圭吾氏による「障害者いじめ」発言や一連の報道について、全国自立生活センター協議会(以下「本会」という。)として次のとおり、声明を発表いたします。
小山田氏は私立の小中高一貫校に在学していた際、障害のあるクラスメイトおよび近隣の特別支援学校(養護学校)に通っていた障害のある人たちに対して、「いじめ」という言葉では済まされないような残虐な行為や心ない発言をしており、そのことを複数の音楽雑誌のインタビューにて自慢するかのように語っていた、と報道されています。一連の報道や世間からの批判を受け、7月19日付で楽曲制作担当を辞任すると申し出ており謝罪もしています。

今回の事案について、本会としてはインクルーシブ教育の視点から、以下の3点について問題提起いたします。

1.多様な子どもがいることを学べる機会となるはずのインクルーシブ教育が、ダンピングとなってしまっている社会的環境要因を見直すべき
小山田氏のインタビュー記事より、自身が在籍していた学校は、障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶ方針をもっている学校であったことが伺えます。
日本は、2014年に障害者権利条約を批准し、障害児者に関する様々な法制度が整備され、インクルーシブ教育の実現を目指しています。「インクルーシブ教育」「共生教育」を教育方針として掲げる学校も増えてきました。しかし、合理的配慮(「障害の社会モデル」の視点から一人ひとりの困難さに向き合い、その人に必要なサポートを保障すること)が提供されずに、ただ「同じ場所で共に過ごす」ことに重きを置かれ、何もサポートがないままに教室で過ごしているという状況の学校は、過去には「投げ捨て」(ダンピング)という言葉で批判されています。小山田氏が通っていた学校でダンピングが行なわれていたかどうかはわかりませんが、そのような状況の学校は今でも多く見られます。
学校のバリアフリー化が進んでいない、教員の多忙化、障害の社会モデルの考え方が浸透していないなど様々な要因が考えられます。担任だけで問題を抱え込むのではなく、社会全体としてインクルーシブ教育の実現に向けた取り組みを行なうことが求められます。障害のある子どもを含む多様な子どもたちが、ただ一緒に過ごすだけでなく、一人ひとりに応じた必要なサポートを受けながら、クラスの一員として様々な学びや経験を保障されるインクルーシブ教育の重要性を改めて表します。

2.分けてきたからこそ起こりやすくなる同様の事件が、さらに「分離」に加担することのないように、事件の根源を見直すべき
インクルーシブ教育は、障害のある人とない人が分け隔てられることなく、誰もが差別されず、共に生きられる社会をつくっていくことにつながると考えられています。「障害」という言葉を知らない小さい子どものうちから、多様な人たちと出会い共に過ごすことで、様々なことを子どもたちは学び取り人権感覚が養われていきます。
今回の件が発端となり、「障害のある子どもがいじめの対象になってしまうかもしれないから分けたほうがいい」というように、社会全体で障害のある子どもと障害のない子どもを分けて教育をする「分離教育」に逆行してしまうのではないかと私たちは危惧しています。障害があるかないかで分けてきた教育が、「障害者はいないほうがいい」「生産性がない」という優生思想を生み、排除を加速させてしまうのではないかと考えます。インクルーシブな社会はインクルーシブな教育からつくられるのです。

3.私たち一人ひとりが差別に向き合い、なぜ差別が起こってしまうのか考え続けることが必要
上記にも書きましたが、「いじめの原因は障害があるからだ」という考え方は問題の本質から目を逸らしていることに過ぎません。
今回は小山田氏の過去のインタビュー記事から、障害のある人への差別について大きなバッシングが起きましたが、小山田氏のように障害のある人への差別や偏見を抱く人は未だに少なくないでしょう。小山田氏個人を非難するのではなく、障害のある人への差別が起きてしまう社会の構造を変えていくことを、私たちは求めています。なぜいじめが起きるのか、差別とは何か、障害とは何か、私たち一人ひとりが向き合い、内なる優生思想と闘い続けることが必要です。社会の一員である私たち一人ひとりが、他人事ではなく自分事として受け止め考え続けることが求められます。

(以上)

小山田圭吾氏の「障害者いじめ」問題から見る、
日本におけるインクルーシブ教育の課題に対する声明

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国連の締約国会議のサイドイベント報告 【WIN共同声明】の発信

国連の締約国会議のサイドイベント報告
【WIN共同声明】の発信

6月14日(月)、国連障害者の権利条約の第14回締約国会議で、WINとして初めてサイドイベントをウェビナーで開催しました!
WINは2017年の設立依頼、2-3ヶ月に1回の【WIN世界役員会議】を続けてきました。 これまで各国のIL運動の発展について情報交換をし、またコロナ禍で世界の障害者が直面した共通の課題についても各国の状況を報告し合い、コロナ禍での声明も出してきました。
今回のサイドイベントはヨーロッパIL協議会(ENIL)のリーダーシップで、WINとして初めてイベントを企画し、世界で連結して脱施設化を進め、権利条約19条及び一般的意見5の実施を目指していくため、【WIN共同声明】を発信しました。
サイドイベントでは、JCILの大藪光俊さんが日本代表として報告をしてくださり、イベントの終わりにはWINの世界役員と一緒に【WIN共同声明】を読み上げました。

★このサイドイベントのビデオ・報告はENILのホームページから閲覧可能です。
https://enil.eu/news/win-calls-for-global-independent-living-movement-to-play-a-role-in-covid-recovery/


写真①:ZOOMスクリーン(WIN世界役員と大藪さん、ジュディ・ヒューマン、権利委員会のアマリアさん、韓国のチャノさん、NCIL代表サラさん、 ENILジェイミーさんと国際手話通訳)


写真②:国連障害者特別報告官ジェラルドクイン氏はビデオメッセージで参加。

WINサイドイベントレポート
JCIL 大藪光俊
京都にある日本自立生活センター(JCIL)で当事者スタッフとして活動している大藪光俊です。
去る6月14日、国連ニューヨークで行われた障害者権利条約締約国会議のサイドイベントにて、日本のスピーカーとして登壇させていただきました。
今回のサイドイベントは、WIN [World Independent Living Center Network] が主催したもので、アジア・北米・中米・ヨーロッパから活動家が集まり、各地の状況を報告しました。
世界的にコロナ禍が広がり、施設入所を強いられている多くの障害者が集団感染で命を落としたり、十分なヘルスケアを受けられない障害者がたくさん生み出されてしまいました。障害者を弱い存在と見なし、医療モデル的な障害の捉え方にこの世界が逆戻りしてしまう危険性が謳われています。コロナ禍から世界が立ち直りつつある今だからこそ、改めて障害者権利条約第19条の実現に向けて、世界規模で脱施設に向けた自立生活運動の推進の重要性が確認されました。
私も日本代表として3分間のスピーチをさせていただいたのですが、自身が今中心的に関わっている「筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト」の取り組みについて紹介しました。日本全国で重度訪問介護による24時間介助保障が認められているのに、未だに筋ジス病棟には2000人もの人たちが収容されている。しかも、コロナ禍以降、誰も病院の中に立ち入ることができず、入所者の人たちは1年以上にわたって愛する家族や支援者にすら会えない状況に置かれています。私自身はたまたま生まれた時から地域で暮らし続けてきましたが、筋ジス病棟に入ってそのまま一生を終えていた可能性も十二分にあります。だからこそ、みんなに地域に出て欲しい、そんな思いを伝えさせていただきました。
当日は世界で活躍する障害者運動の活動家たちを前に、また自立生活運動を牽引するジュディ・ヒューマンを前にして相当緊張しましたが、私たちの活動を世界にアピールできたことは本当に嬉しく光栄でした。また、各国で脱施設の取り組みの重要性が共有されているということを実感できて、これからも粘り強く、日本の脱施設化に向けて着実に運動を展開していきたい、そんな思いを新たにさせられたひと時でした。本当にありがとうございました!

写真③: JCIL藪光俊がスピーチしているところ。
(スクリーン右側に大藪さん、左側に国際手話)

写真④:サイドイベント終わりに、WINメンバーが【共同声明】を読んだ。 (スクリーンはWIN役員と大藪さん、ジュディと権利委員会のアマリア氏+国際手話通訳)

WIN共同声明【日本語版】
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WIN共同声明【英語版】
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津久井やまゆり園でのパラリンピック採火に対する抗議文

2021年4月16日

津久井やまゆり園でのパラリンピック採火に対する抗議文

全国自立生活センター協議会
代表  平下 耕三

私たちは、どんな重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、地域の中で共にある社会の実現を目指して活動する障害当事者団体です。全国110 ケ所を越える障害当事者団体(自立生活センター)で構成しています。
3月21日の報道によると、神奈川県、相模原市、かながわ共同会は、2020東京パラリンピックの採火を「津久井やまゆり園」で行うことを固めたとあり、一部では「共生社会の実現に向けた強い決意を国内外に示すため、園で採火することにした」報道されています。
しかし、「津久井やまゆり園」は、150名以上もの障害のある者を収容してきた大規模施設です。2016年7月26日未明、元職員によって19名もの知的障害のある者が殺害され、24名の知的障害のある者と2名の職員が負傷しました。戦後、最悪の大量殺人事件として世界中の障害のある者を恐怖に陥れ、優生思想が社会に蔓延していることを顕著にし、賛同する声が相次ぐなど、むしろ助長させた場所であると言えます。さらに、この事件により亡くなった19名は、家族の意向等で名前を公表されていません。事件から5年経ったいまでも亡くなられた人たちの悲痛な叫びは未だ触れられておらず、真相究明には全く向かってすらいません。また、事件後も「津久井やまゆり園」では、障害者虐待が繰り返されており、とても人が生活できる場とは思えない環境で、いまもなお、尊厳を奪われて人権を踏みにじられています。
すでにご存じの通り「障害者の権利に関する条約」第19条には、「障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと。」と明記されています。例え、いくら地域に根ざした施設であっても、障害のある者を集団で収容している時点で条約に反しており、そもそも、自ら望んで施設に収容されたのではないことは明らかです。つまり、施設は「共生社会」とは程遠いところに位置しています。
今回、「多様性」というところであれだけ問題になったにも関わらず、パラリンピックの採火という神聖な取り組みの場所として、残虐な事件が起き、いまも虐待を受けている人たちがいる「津久井やまゆり園」で実施することについて全く理解することができず、強い憤りを覚えます。あの残虐な事件と今回の採火は全く別の問題であるにも関わらず、それを混同して共生社会実現への決意などという後付けの考えは、筋違いも甚だしく、よいイメージで上書きし、事件を風化させようとしているように思えてなりません。共生社会実現の意思をこのような全く筋違いの方法で国内外に発信することは、国内の障害のある者に対する侮辱であり、国際的にも人権侵害のある国として世界中に宣伝するようなもので、ハッキリ言って世界の恥です。
真の意味での「共生社会」を正しく理解し、優生思想に立ち向かう行動を起こしてください。そのためにも、パラリンピック採火の地として「津久井やまゆり園」を設定することは、白紙にしてください。

津久井やまゆり園でのパラリンピック採火に対する抗議文
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JIL Statement against Paralympic Torch Ceremony at Yamayurien_JIL_Letterhead
(津久井やまゆり園でのパラリンピック採火に対する抗議文 英訳)
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命の選別につながる
「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」
第3条4項の削除を求める緊急声明

2020年11月30日

命の選別につながる
「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」
第3条4項の削除を求める緊急声明

神経筋疾患ネットワーク
全国自立生活センター協議会

私たちは、日本産科婦人科学会が「重篤な障害がある場合の着床前診を承認する」と公言したことをきっかけに発足した、遺伝性神経筋疾患等の当事者で構成している団体(神経筋疾患ネットワーク)と、インクルーシブな社会の実現を目指す118の加盟団体で構成する障害当事者団体(全国自立生活センター協議会)です。

私たちは障害のある命の選別【堕胎】につながる「着床前・出生前診断」が、生殖医療技術の高度化によりどんどん拡大していくことに、かねてから障害当事者の立場から反対しています。

私たちは、本法案の「基本理念」第3条4項「生殖補助医療により生まれる子については、心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう必要な配慮がなされるものとする」との文言に、言葉にできない恐怖と戦慄を覚えました。
これは明らかな優生思想であり、障害者の存在を真っ向から否定する障害者差別であると強く抗議し、直ちにこの条文の削除を求めます。

この「心身ともに健やかに生まれ」という表現は、1996年に廃止されたおぞましい優生保護法と同じであり、再び同じ過ちを冒す恐れがある条文です。着床前・出生前診断によって障害のある命は未だにずっと殺されています。私たち障害者は常に、価値のない者として、その命を軽視され続けています。障害のある人は不幸せで世の中に要らない命なのでしょうか。

もう私たちを殺さないでください。要らない命などありません。これは人権侵害法案の何物でもありません。
誰にも人の幸・不幸を決め付けることは許されません。そのような価値判断こそが、今も後を絶たない肉親による障害者殺人や、出生前・着床前診断による堕胎につながっている優生思想です。そして2016年7月26日に起きた津久井やまゆり園重度障害者虐殺事件も人々の根っこにある優生思想が引き起こしたものです。

私たちが実現したいのは、どんな命も歓迎される社会です。今を生きる、未来に生まれてくる、障害を持つ子どもたち、障害を持たない子どもたちのためにです。彼らが安心して生まれ、尊厳を守り、ともに育つことができる社会こそインクルーシブで幸せな社会です。国はその実現にのみ寄与するべきです。

以上

【連絡先】
全国自立生活センター協議会
192-0046
東京都八王子市明神町4-11-11シルクヒルズ大塚1F
TEL:0426-60-7747 FAX:0426-60-7746
E-MAIL:office@j-il.jp

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船形コロニー建て替えへの抗議と地域生活の推進
・脱施設化を求める声明

2020年9月10日

船形コロニー建て替えへの抗議と地域生活の推進・脱施設化を求める声明

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり

全国自立生活センター協議会(JIL)
代表 平下耕三

 私たちは、どんなに重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、地域の中で共にある社会の実現を目指して活動する障害当事者団体である。

 さて、9月1日に宮城県の知的障害者支援施設「船形コロニー」が建て替えられ、「船形の郷」としてスタートしたが、最終的には300名の定員になると報じられている。これは、我が国が批准している障害者権利条約が求める脱施設化に逆行する政策であり、抗議の意思を表明するとともに、地域生活の推進・脱施設化の取り組みを求めるものである。

 宮城県福祉事業団は、船形コロニーを2010年までに解体し、入所者全員を地域生活に移行させる「施設解体みやぎ宣言」を2002年に発した。さらに2004年には浅野史郎知事(当時)が「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を発表し、宮城県内にある知的障害者の入所施設を解体して、知的障害者が地域の中で生活できるための条件を整備することを宮城県の障害者施策の方向とすることを宣言していた。しかしながら、村井嘉浩知事によって方針が修正され、船形コロニーが建て替えられ、地域移行が進められないままに大規模収容施設が存続している。

 我が国が2014年に批准した障害者権利条約第19条では、締約国に対し「全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる」ことを求めている。

 さらに、「(a) 障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと」「(b) 地域社会における生活及び地域社会への包容を支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(個別の支援を含む。)を障害者が利用する機会を有すること」としている。

 さらに、19条に関して、国連・障害者権利委員会が2017年にまとめた文書(一般的意見・第5号)には、「第19条の下での障害のある人の権利の尊重は、締約国が施設収容を段階的に廃止しなければならないことを意味する。締約国による新規の施設の建設は認められず、古い施設も、入居者の物理的安全の確保に必要な最も緊急の措置以上の改築は認められない。

 施設は拡大されるべきではなく、施設を出る者の代わりに新規の入居者を入れるべきではない」と明確に記されている。このように、船形コロニーの建て替えは、世界的な潮流に逆らい、障害者権利条約の諸規定に反するものと言わなければならない。

 どんなに建物をきれいにし、接遇の改善が図られたとしても、少ない人数で大勢に対応するというのが施設運営の手法であることから、どうしても入所者の生活は管理的になり、個々の行動や選択の自由は制限される。そうした空間、環境下での虐待事例は未だ後を絶たない。

 今年新型コロナウィルス感染症のパンデミック対策として世界各地で都市のロックダウンがなされ、日本でも緊急事態宣言により外出の自粛が呼びかけられた。これにより世界中の人々がほぼ同時期に行動と選択の自由を奪われ、他人に制限されるということの不自由さがどういうものであるかを経験したはずである。入所施設での生活とは、コロナ禍で皆が経験した不自由さを終わりなく続けることと同様と言っても過言ではない。

 障害者は、必要な支援を受けることが出来れば、地域で自立した生活を送ることができる。現在福祉先進国と言われる北欧諸国をはじめ、多くの国々もかつては大規模な入所施設が障害者施策の中心であった時代があったが、これは人権侵害にあたるという反省から、脱施設への政策転換が進められた。

 一方、我が国では、21世紀に入ってから地域移行の取り組みは一定進められてきたが、障害者権利条約批准以後、地域移行は進展するどころか、国の基本方針が見直される度に、その数値目標は下げられ続けてきている(15%→12%→9%)。家族依存の制度の下、地域生活を支えるサービスや体制、予算の不備・不足が背景にある。

 先ほどの障害者権利委員会の文書では、「障害のある人のあらゆる形態の孤立、隔離又は施設収容を撤廃するために、脱施設化のための明確な、的を絞った、具体的な時間枠と適切な予算を伴う戦略を採用すること」を締約国に求めている。

 ところが、我が国は未だに「脱施設化のための戦略」が不在な状態にある。今回の大規模施設の建替えの背景には、こうした国策レベルにおける問題があることもあわせて指摘しなければならない。

 宮城県には、ぜひとも障害者権利条約の理念を再確認し、見守り支援も含んだサービスである重度訪問介護や小規模で生活するグループホーム等地域支援サービスを拡充し、障害者の地域生活を推進し、脱施設化を進めることを強く求める。併せて、マスコミ各社においても、障害者権利条約に照らし合わせることなく建て替えに好意的な報道を流したことに問題はなかったのかを検証し、何らかの形で検証結果を公表されることを求める。

 さらに、国に対して、障害者権利条約の批准国にふさわしい「脱施設化のための戦略」を障害当事者参画の下で作成し実行することを求めるものである。

 


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