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「みちのく記念病院」の殺人隠蔽と不正問題
についての要望書

厚生労働大臣 福岡 資麿 殿

2025年3月27日

 

全国自立生活センター協議会
代表 平下耕三
東京都八王子市明神町4-11-11
シルクヒルズ大塚1F

 

「みちのく記念病院」の殺人隠蔽と不正問題についての要望書

平素は精神医療の改革を進めていただきありがとうございます。
私たちは障害種別を問わず障害者が地域であたりまえに自立生活が実現できるよう、障害者の権利擁護活動や様々な支援をおこなっている全国組織です。
 各種メディアによって大々的に報道されていますが、青森県八戸市の「みちのく記念病院」で殺人事件隠蔽が明らかになり、理事長と主治医が逮捕されています。私たちは精神障害者が尊厳を踏みにじられることなく安全に医療を受ける権利が保障され、地域生活に戻れるよう以下の要望をさせていただきます。

1 「事件の徹底した調査と理事長、主治医などに対する処分について」
入院病棟で殺人があるということは病院としてあってはならない事件ですが、起こってしまった事件を隠蔽するということは、人の命を預かる病院・医師としてありえない行為であり、人としての道義も問われます。私たちはそのような医師に心身を預けることは到底出来ません。またそのような病院が存在すること自体が精神疾患を持ったものにとってはもちろん、社会にとっても大きな脅威になります。病院のそうした行為は精神障害者や精神科病院への偏見・差別を助長することになりますので徹底した調査と厳しい処分を求めます。

2 「不正防止のために病院の徹底した調査と、医師の資質に頼る精神医療システムの抜本的変革について」
担当の看護師は事件があってすぐに院長などに「外傷がある」と報告をしていたにも関わらず、主治医は次の日の朝まで出勤せず出勤後も診察を行いませんでした。その間の被害者への処置は看護師のみで行っておりました。被害者の死亡原因は頭蓋内損傷および失血であるのに、診断書を「肺炎」と書くよう院長が看護師に指示し、病院から遺族への説明では「ころんで容体が急変した」と伝えています。死亡診断書の担当医は事件当時同病院に認知症で入院中の医師の名前を使い作成しています。また現在服役中の男性を事件が外部にもれないようにするために医療保護入院に切り替え隔離したとされています。このように隠蔽は院長の指示の元、組織的に行われました。
隔離され閉鎖された病棟は外部から確認することが出来ず、医師の決定が絶対の権力となります。その決定は医師の資質・倫理観などに依存しています。このようなシステムでは、患者は精神医療の名のもとに簡単に人権が奪われる危険性があります。
今回の事件の徹底した調査と厳正な処分、また医師の資質によって簡単に事実を隠蔽できるような現精神科医療のシステムを抜本的に見直すように求めます。

3 「事件以外の病院内の不正に徹底した調査と再発防止について」
みちのく記念病院はこの事件以外にも200件以上同様な手口で認知症入院中の医師の名前を使い死亡診断書を作成し、そのほとんどが「肺炎」と記載していました。不正が常態化していた可能性が高く、組織ぐるみで不正を行っていた疑惑があります。病院内での調査ではなく、第三者委員会を設置し徹底した調査と再発防止策の検討をお願いします。

4 「みちのく記念病院の廃院について」
 私たち精神障害者、また国民にとって脅威となるみちのく記念病院は廃院も含めて検討してください。

5 「石山隆容疑者と石山哲容疑者の指定医等の停止の要望」
元院長であり医療法人『杏林会』理事長の石山隆容疑者、担当主治医の石山哲容疑者は精神保健指定医の無期限の資格の停止、可能であれば医師免許の停止を強く希望します。

6 「精神疾患と身体疾患重複患者の受け入れ問題について」
精神科治療と身体疾患の重複の場合、多くの精神科病院あるいは一般の総合病院、身体疾患を専門とする病院では受け入れが出来ず、みちのく記念病院が最後の受け皿となって一手に引き受けていたとされます。故にこのような事件が起こると、そうした精神疾患・身体疾患の重複する患者を受け入れられる病院がなく、医療崩壊にすぐに陥ってしまいます。なによりそれは患者、市民にとって憲法で保障された、健康に生きる権利、その他の基本的人権を著しく脅かすことになり、生死にかかわる一大事であります。これは神戸市の神出病院での事件、八王子市の滝山病院事件などと酷似し、このようなケースは全国に多く存在すると推測されます。そうした現状が「悪い病院」であっても受け皿がなくなるので仕方がないと、問題解決がされないまま存続する可能性も高いと考えられ、同様の問題が起きないために抜本的な改革を検討してください。

7 「精神疾患・身体疾患の重複患者を受け入れる病院の実態調査」
精神疾患と身体疾患の重複する患者を受け入れる病院の実態調査を行い実態の把握と、問題の把握と解決を早急に行ってください。

8 「精神疾患・身体疾患の重複患者を受け入れる病院を増やすための取り組み」
精神疾患と身体疾患の重複する患者を受け入れる病院を増やすための取り組みを厚生労働省として取り組んでください。

9 「精神科病院内での事件を防ぐための措置と隔離拘束について」
 精神科病院内で殺人が起こるようなことは決してあってはなりませんが、それを防ぐために患者を安易に隔離・拘束することは大いに問題があると思われます。服役している男性は「身体拘束が辛くて事件を起こせば病院から出られると思った」いう趣旨のことを話しており、問題の根本に、患者への人権侵害があり、そのことが事件を起こす大きな一因となったと考えられます。この事実を重く受け止め、国の方針として、隔離拘束を基本的になくし、患者に寄り添い、気持ちを聞くことによる治療を基本とすることを方針として明確化してください。安易な隔離・拘束をなくすためにさらなる基準の厳格化を求めます。

10 「殺人事件で精神障害への差別が助長されないための対処」
精神科に入院中の患者が別の患者を歯ブラシで刺して死亡させたという犯行の残忍性が強調された報道がされ、さらにアルコール依存症の患者が事件を起こしたという差別や偏見を煽るような誤った情報拡散も広まっています。依存症患者への偏見・差別、精神障害者全体への偏見と差別が強まることを私たちは危惧しています。厚労省として精神障害者の人権を守り差別を助長しないよう自治体への注意喚起、ACジャパンなどを通じてテレビなどで広報するなど、精神障害者への差別・偏見の防止策をしてください。

以上10項目について全国自立生活センター協議会は強く要望いたします。10項目の要望について5月31日までにご回答ください。宜しくお願い致します。

 

「みちのく記念病院」の殺人隠蔽と不正問題
についての要望書

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【お知らせ】中西正司さんお別れ会

「中西正司さん お別れの会」のご案内

お別れ会案内チラシ(PDF)

お別れ会案内チラシ(テキスト)

令和7年3月26日、日本のそして世界の自立生活運動のリーダーのひとりである中西正司さんが逝去されました。

障害者運動史に残るその功績を振り返りつつ、みなさんと一緒に故人を偲び語り合うお別れの会を下記のとおり開催いたします。お忙しいこととは存じますが、ご来場賜りますようお願い申し上げます。

日時: 4月26日(土) 10時~18時
会場: 京王プラザホテル八王子 4F 錦(にしき)
※上記時間内にご自由にお越し下さい。

長い活動の記録や事務所などでの写真、ゆかりある物や愛用品などを並べます。みなさんに思い出話をたくさん語っていただける場にしたいと思います。

※当日は平服にてお越し下さい。
※香典、供花につきましてはご辞退申し上げます。

お問い合わせ(ヒューマンケア協会)
電話: 042-646-4877  メール:humancare@nifty.com

主催: NPO法人 ヒューマンケア協会
共催 : 自立生活センター日野・ILみなみTama
全国自立生活センター協議会・DPI日本会議

【訃報】JIL創設者の中西正司さんがご逝去されました

全国自立生活センター協議会(JIL)創設者のお1人でいらっしゃった中西正司さんが、2025年3月26日4:19に、天国へと旅立たれました(享年80歳)。謹んで中西さんのご冥福をお祈り申し上げます。
中西さんらがJILを立ち上げ、強靭なリーダーシップで、ここまでの当事者主体の全国組織を築いていてくださらなければ、現在のような1日24時間365日の長時間介護保障が可能となる公的制度はできていなかったといっても過言ではないでしょう。他にも数々の業績は多く、65歳以降も重度訪問介護サービスと他の在宅医療・福祉サービスを活用し続け、亡くなる二日前まで出勤もし、最後まで介助をつかって生活され、ご自宅で生き抜かれた生き様そのものが、今後の自立生活運動が獲得すべき道を指し示して下さったと感じています。
改めて最後の最後まで障害者運動家であり続けた中西さんのこれまでのご尽力、ご功績、ご厚情に対し心からの敬意と感謝を申し上げます。
どうか、先に旅立たれた日本中いや世界中の障害者運動の諸先輩、お仲間のみなさんとご一緒に天国から私たちを見守り下さい。
今まで本当にお疲れ様でした。そして本当に本当にありがとうございました。

2025年4月11日
NPO法人全国自立生活センター協議会
理事長 平下耕三

 

 

 

 

 

 

 

 

写真1:2016年にNCIL事務局長(当時)のケリー・バックランドさんを迎えての講演会にて、挨拶をする中西さん。横断幕には「公益財団法人 キリン福祉財団助成事業 アメリカ自立生活IL運動の現在」と書かれ、NCIL、キリン福祉財団、JILのロゴマークが並ぶ。中央で挨拶する中西さんと、マイクを持つ介助者。後ろには手話通訳者が写っている。

 

 

 

 

 

 

 

写真2:2018年に来日した、NCIL代表(当時)のブルース・ダーリングさん、同副代表(当時)のサラ・ラウンダーヴィルさんを、中西さんのご自宅でお迎えしたときの一枚。左から、中西由起子さん、ブルースさん、サラさん、中西さんが、それぞれ笑顔で写っている。

 

 

 

 

 

 

 

写真3:2016年に在日本米国大使館にて、ADA法の制定に深くかかわったトム・ハーキン元上院議員を迎えてのレセプションに出席された際の一枚。前列左から、中西正司さん、中西由起子さん、後列左から、トム・ハーキン上院議員、キャロライン・ケネディ大使(当時)が笑顔で写っている。