命の選別につながる
「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」
第3条4項の削除を求める緊急声明

2020年11月30日

命の選別につながる
「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」
第3条4項の削除を求める緊急声明

神経筋疾患ネットワーク
全国自立生活センター協議会

私たちは、日本産科婦人科学会が「重篤な障害がある場合の着床前診を承認する」と公言したことをきっかけに発足した、遺伝性神経筋疾患等の当事者で構成している団体(神経筋疾患ネットワーク)と、インクルーシブな社会の実現を目指す118の加盟団体で構成する障害当事者団体(全国自立生活センター協議会)です。

私たちは障害のある命の選別【堕胎】につながる「着床前・出生前診断」が、生殖医療技術の高度化によりどんどん拡大していくことに、かねてから障害当事者の立場から反対しています。

私たちは、本法案の「基本理念」第3条4項「生殖補助医療により生まれる子については、心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう必要な配慮がなされるものとする」との文言に、言葉にできない恐怖と戦慄を覚えました。
これは明らかな優生思想であり、障害者の存在を真っ向から否定する障害者差別であると強く抗議し、直ちにこの条文の削除を求めます。

この「心身ともに健やかに生まれ」という表現は、1996年に廃止されたおぞましい優生保護法と同じであり、再び同じ過ちを冒す恐れがある条文です。着床前・出生前診断によって障害のある命は未だにずっと殺されています。私たち障害者は常に、価値のない者として、その命を軽視され続けています。障害のある人は不幸せで世の中に要らない命なのでしょうか。

もう私たちを殺さないでください。要らない命などありません。これは人権侵害法案の何物でもありません。
誰にも人の幸・不幸を決め付けることは許されません。そのような価値判断こそが、今も後を絶たない肉親による障害者殺人や、出生前・着床前診断による堕胎につながっている優生思想です。そして2016年7月26日に起きた津久井やまゆり園重度障害者虐殺事件も人々の根っこにある優生思想が引き起こしたものです。

私たちが実現したいのは、どんな命も歓迎される社会です。今を生きる、未来に生まれてくる、障害を持つ子どもたち、障害を持たない子どもたちのためにです。彼らが安心して生まれ、尊厳を守り、ともに育つことができる社会こそインクルーシブで幸せな社会です。国はその実現にのみ寄与するべきです。

以上

【連絡先】
全国自立生活センター協議会
192-0046
東京都八王子市明神町4-11-11シルクヒルズ大塚1F
TEL:0426-60-7747 FAX:0426-60-7746
E-MAIL:office@j-il.jp

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