■包括長時間支援について■■□■■■■■■■■■■■■■■

■ALSの方の生活状況


北谷 好美(NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会)

 『病院から在宅へ。安心して自分らしい生活を』障害を持つ私達にとって、自分達が暮らしている地域社会において安心して普通の生活ができる保障が必要です。特に、私のように最重度の難病といわれているALS患者にとっては、この度の自立支援法によって今までのQOLを下げることなく在宅療養を維持していけるかどうかが最重要課題となります。ALSは進行性の難病ゆえ、病気の進行と共に介護の形態も変わってきます。私は未だに人工呼吸器は使っていませんが、将来的には呼吸器をつけて在宅で生き続けたいと思っています。 ALS患者のうち呼吸器をつけているものは約3割にすぎないと云う実情を考えると、介護保険と支援費制度無しにこの選択をすることは不可能です。両制度を組み合わせて、医療・看護・介護体制を整え、在宅でも自分の望む生活を送る事は可能ですが、そこには、さまざまな問題があります。私の場合、今までの支援費制度の時間数では足りませんでした。時間数が足りないと云う事は、必要なサービスが受けられないと云う事です。ALS患者の大半は、24時間介護が必要なのです。介護が受けられないということは、死活問題なのです。支援費は介護保険を使いきらないと使えないという不具合もありました。他にも問題点は多々ありましたが、なんとかなっていた所に、また今度の改革です。予算が足りなくなったから、1割負担にします、では、あまりにズサン過ぎます。多くの障害者は仕事を持っていません。特に、難病の患者が就労に就く事は難しいと思われます。収入がないから支払えないのは当然の事で、そういう社会的弱者を救えないとなると、この国の将来が不安になります。今までは、従来の支援費制度と介護保険制度でなんとかなっていましたが、すべてのALSの在宅患者が私のように、ある程度のレベル(十分ではないけれど)を持って生活しているわけではありません。私の事をお話しますが、これはほんの一例に過ぎないと云う事を念頭に置いて聞いて下さい。
 私は34歳で発病。36歳で妊娠。37歳で出産。発病当時は、自分の事は、かろうじてできていたものの39歳ぐらいから全介助、24時間体制が必要となりました。今は24時間を介護者と過ごしながら、今年10歳になった娘と夫と暮らしています。当然の事ながら、障害年金だけでは生活はなりたちません。夫が仕事をしないで介護に専念するなど到底無理な話で、一家全滅になってしまいます。24時間を他人介護に頼らざるを得ないのです。私は主婦であり、子育てをする母であり、夫にとっては悪妻であり、ALS患者としては活動家?(ようやく活動を始めたばかりですが)として、障害に負けずに自立してやって行こうと思っています。こんなに過酷な病気でありながらも、在宅で療養生活を過ごせるということが、生きる力を与えてくれるのです。もし、私が妊娠・出産をあきらめ、病院の白い壁に囲まれて、進行する病気と孤独の狭間で闘いながら生きる方を選ばざるを得なかったとしたら、今の私はいなかったかもしれません。一番困難だといわれているコミュニケーションについても、在宅ならば、慣れた介護者に自分の意思を伝える事ができます。病院では、どうでしょうか?決められたタイムスケジュールの中で、ただ淡々と月日が過ぎていくような気がします。そこでは、母である事も、妻である事もなく、患者というだけの役割のない個人になってしまいます。ALSと云うと呼吸器を付けて寝たきりだと思われがちですが、呼吸器を付けても在宅療養を続け、積極的に外に出掛けて生活を楽しんだり、社会的にも活躍されている方が大勢います。また、私のようにALSでも呼吸器をつける前の患者に対しては、比較的手がかからないと思われがちですが、呼吸器をつけている患者と同等、または、それ以上のケアを必要としています。そして、呼吸器をつける前の患者の多くは、病気の進行が早く介護が追いつかないのが現状です。
 私の場合も全身性介護人派遣制度のときは、呼吸器をつけている人達が16時間認められていたのに、呼吸器をつけていないからというだけで8時間しか認められなかった経緯があります。福祉事務所に何度も嘆願(たんがん)し要望書を出し、ようやく認めてもらいましたが、娘が小さかった事もあり、私にとっては大変辛い時期でした。本当に大変なのは呼吸器をつける前なのかも知れません。安心して在宅療養を続けるためには、吸引などの医療環境、訪問看護、ヘルパー体制などを十分に整えなければなりません。 もう一つ大事な事は、家族の負担を減らす事です。家族介護が限界を超えると患者は病院行きを選ばざるを得ません。社会福祉制度や医療環境を充実させて障害を持つ者も安心して暮らせる社会を構築できるように、皆さんのお力添えをお願いして終わりにします。2005年5月11日北谷好美
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川口有美子(NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会)

 今、北谷さんのお話を聞いて、はじめからというか、呼吸器を装着する前から、これだけきちんと障害を受け入れている人は、本当に珍しく、皆さんが北谷さんや橋本操さんのようだと思うと、大間違いです。全国でALSの正確な患者数はわかりませんが、申請している人で、6000人前後いるといわれていて、そのうち、人工呼吸器をつけましょう、ということになる人は、1500人くらいです。正確な数はわかりませんが、協会も把握しにくいのですが、約3割の方しか人工呼吸器を選ばれません。  その理由は、およそ半分の人は、とてもそんな、呼吸器をつけて、機械に支配されて、長く生きるなんて考えられないということで、自分からつけないと決められる方が約半分です。およそ2割の方は、「呼吸器をつけたい、生きていきたい」と思って、発病してから、どんどん体が動かなくなっていく過程で、生きる道を探し続けますが、とうとう呼吸器の麻痺がくるまでに、生存するすべを見つけられず、家族の介護ができないことで、ヘルパーなど受け入れる事業者もおらず、自治体からは24時間ヘルパーを派遣して、あなたの命を町で支えましょうという人もいなく、亡くなっていく。というより、あきらめるしかない。約2割があきらめて、説得されて亡くなっていく。 私はその、2割の人を助けたい。生きたいと思っている人には生きる方法を、ぜひ与えてください。その2割の人は、家族が同居している方はいいですが、家族がいるから生きられるのではなく、いても生きられない。家族には自分の生活があるからです。家族は自分を犠牲にすることを前提に介護をするならば、患者さんを救ってあげるというように、取引を迫られます。家族はそれを受け入れて、初めて生きるチャンスができる。家族の選択などをはずしてあげる。「患者の自己決定」なんて簡単に言われますが、自己決定などはないに等しいです。まず社会的状況があって、生きていくことが見えてくる。社会的に介護が保障されて、はじめてフェアだと思います。初めてそこで、「生きようか」それとも、呼吸器をやめるか、というフィフティ。フィフティの選択ができるんだと思います。その状況をまずつくっていただきたい。それでも生きていこうと思って、生きている人たちに対して、これ以上、今頑張っている在宅でやっている人が700人強800人くらいいます。皆さん、もう、へとへとです。家族が体力的に破綻寸前。だから、支援費をいくら使っても足りない状況です。そこにもってきて、皆さんご存じかもしれませんが、尊厳死が言われています。自己決定で、過剰な医療を断る権利。私たちには自分たちで選んで死んでいく権利。ですから、介護やケアが足りず、それによって、自分のQOLが下がった、そういう人が死ぬ権利があると言われて、自己決定によって死んでいく、ということです。ASLの人は呼吸器を付けていますので、呼吸器をはずせば死ぬことができます。だから、呼吸器を外す権利があるのではないかと医者の学会などで言われ始めています。その中で、患者さんも家族もやっぱり生きたい、生かしたいと思っています。ですから、ぜひここを支えてほしいと思います。ALS患者が呼吸器をつけていきていける、また、事故で植物状態になった人たちが、在宅で暮らしていけるのも世界ではまれなことで、日本独自のASL観があります。海外では、ALSは、急速に進行する難病なので、初めから呼吸器をつけない。つけることを医者も進めませんし、発病した患者さんも付けようとは思わない。だから呼吸器をつけている人は少ないです。だけど日本の患者さんは勇気をもって付けてきたし、呼吸器をつけて、呼吸が楽になったときに、はじめて、障害に対する偏見が、障害をもつ前にはたくさんあったが、それが呼吸器をつけた障害者になって、あらたな学びを得て、これでも私は生きているんだと、学びなおしていきます。そうやって社会で生きていける自分を肯定できるようになっていく。そういう姿を、私たちも見ながら、医療職の人もみながら、日本独自のALSの生き方があった。
 海外では毎年、国際会議があるが、そういうところに、橋本操さんたち、元気な患者さんたちが、飛行機に乗って、呼吸器を座席の下に設置して、13時間ぐらい飛行機に乗って行き、その土地、デンマーク、オーストラリア、オランダ、ミラノなどで、呼吸器をつけた姿を見せると、海外のお医者さんに聞いたり、当事者の人たちはすごくびっくりします。死んじゃっているはずの人が飛行機に乗って来たと。日本のALS患者はケンカを売りにいって、「そんな体で来てつらくないか」とか質問を受けます。そこでもちゃんと言い返してきます。時々、私たちは虐待だとか言われます。呼吸器をつけている患者を海外まで連れて行って、と言われますが、それでもちゃんと言い返し、最後は納得させて帰ってきます。日本では命を大事にする、という日本人独特の生命倫理をアピールをしてきます。なぜそこまで出来るのか?日本の障害福祉は、皆さんが培ってきて、ここまで弱い人たちも、ちゃんと障害者を仲間に入れて、在宅で一緒に暮らすという制度がそういうふうにさせているのです。これは誇っていいことだと思います。だから、ここは何としても死守して、最重度の人、ALSだけじゃないと思います。ALS以上に大変な人はたくさんいると思います。知的や精神の方でも、自分の気持ちがいっぱいいっぱいで暮らしているのがつらいという人には、それに見合った給付をしてほしいと思います。
 事業者側でALSの患者さんを抱えている方、いらっしゃいますか?ずいぶんいますね。私のいい足りないことは後で、質問してください。これからすごく大変になってくると思います。私が一番気になっているのは、「包括」というと、病院の包括だと、あまり、サービスが限定されたり、サービスが悪くなったりするのを目の当たりにしていますので、包括というのは聞こえのよい単語ではないが、包括でいくらになるかはずっと気になっています。厚労省にいくたび、「いくらになるの」としつこく聞いています。今日もお聞きしたいと思っていました。いつ、いくら、という予算が決まるか、まだ見えていませんので、そこを伊原さんに後でお聞きしたい。また、包括の中身です。例えば、家計費だと、私は主婦ですから、これだけのお金で1か月生活してと、ポンと渡され、細かくチェックされないで「好きなように使っていいよ」と言われたら嬉しいですね。そういう包括ならありがたいが、中身、使い方についての確認はどうしていくのか、今、気になっています。ALSの介護に関する事業所もそうですが、個別性と同時に進行性なので、対応はとても難しいと思います。そのへんのことは後で、中西さんがALSのことをよくご存じなので、後で事業者側からということで話があると思います。
 もう1つ、話し出すと、きりがないのですが、自己負担については、すでにALSの人は介護保険を使っています。これは実は、制度の抑制になっています。現実に35000円払いたくない。要するに、介護保険を全部使うと35000円。その金額を自己負担しないといけない。支援費制度を使うためには、ホームヘルプで半分は使わないといけないが、それも払いたくない。介護保険は、地方にいくとあまりつかっていない。なぜかというと、事業所が吸引をできない人を派遣してきても、患者も家族も何を頼んでいいか分かりません。一番欲しいサービスをしてくれない人がきてもしょうがないので、「来なくていい」ということになります。介護保険がつかわれていない。支援費までとどいていない。ALSの方がもっとも望んでいるのは、土曜休日と夜間の長時間介護です。それは介護保険ではなく、支援費制度の日常生活支援の中にかろうじてあります。でもそこまでも、使えていません。全国で、日常生活支援を使っている数値は、60件とか80件。さらに夜間介護だと、17とか20という数字。本当かどうか知りませんが、私の聞き知るだけですが、本当に地方では、夜間の長時間介護はできていません。いまでさえ家族が仮眠状態で、いつでも起きられる状態で、毎日患者さんの隣でやっている状態です。ですから、長時間介護に何時間ということもありますが、ALSの介護の特殊性については周知されていない。その状況の中で、急激な制度移行でいくらいい制度ができたとしてもサービスを提供する側の準備が出来ていなければ、無理だと思います。いくらいい制度が出来たとしても来年の10月からなんて無理だと思う。その辺の所をお聞きしたい。
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■事業者サイド・事業者の立場から


中西 正司 (全国自立生活センター協議会)

 全国自立生活センターを始めるとき、植物人間の命をどうみるか、その人たちの命を救えなければ、自立生活センターでないというように、命という価値を、植物人間の方の命も、伊原さんの命も同じ値打ち、生きること自体に意味がある。生きる命をを絶えさせてしまうような政府や社会であってはならないというところから、活動を始めた。
 最初の介助した患者さんもALSでした。介助する方の意志のままに我々はサポートしようと思っていますが、実際に現場に入ってみると、どんどん進行していく、それに対して、我々の対応も変えていかないといけない。コミュニケーション方法も変えないといけないし、食事介助をしながら事故に気をつけながらやっていく必要がある。医者や弁護士とも話しながら進めていきます。周辺調整、介助者を訓練し、新しい人を育てる必要もある。ところが呼吸器やコミュニケーション等一つとっても、覚えるまでに、1ヶ月以上かかる。そうするとその間、予備で出ていかないと間に合わないのに、2人分の介助をつかっても、1人分の介助料しか保障できない、そうなると、事務所負担となり、事業所としては完全に赤字覚悟です。外国の同じようなサービスを見ると、最初、会社に入って慣れるまでの間は2人分を払いましょうという制度があります。どこのセンターでもそういう大変な思いをしていると思います。呼吸器を付けている人の入浴介護は、4人がかりです。2人で体を洗い、もう2人がベッドセットをしないとならない。そうなると事業所側も、受ける事業所はほとんどありません。結局は看護職を雇っているような事業所しかなくなります。在宅で受ける事業所はなくなる。しかも病院はどんどん追い出そうとする。ALSの人が再入院したくても、ベッドが空かないと、入れてくれない。病気が悪くなっても、すぐ入れない状況ができてくる。こういう不安が常につきまといます。そういうALSのいい加減な介助を見て、介助者訓練も含めてどうみているのか?包括という一律の金額でやっていいのか。安い金額になって、こんな金額ではやれない、包括で80万円という噂がとびかったが、すると時給300円。そんなことはないと言うが、単価の問題はあります。ALS一人一人の状態が違うので、それを同額でやるのか、一人一人違う額でやるのかも聞きたい。
 我々の主な業者は、長時間利用の問題を一番心配しているので、ここにも答えてほしい。930億円も使っているわけです。そういうことをよく言われますが、去年の状況では、都内で4〜5個の区市で、財政的に歳入欠損を起こしたという状況でした。さらに足りない状況は、3障害に広がっているとはいえ、市町村も抑制をかけられて、自立支援の継続もままならない状況で、さらに抑制をかけようという状況にある。実態も知らずに、利用抑制ばかりをかけてきているという印象が我々にはある。個別のニードについて厚労省が数字が出るのは7月ぐらい。今の状態では伊原さんも何も言えないのでしょうが。我々の提案としては、今の事態を打開するには、審査会の中で非定型の議論をガチガチにやっていくと、審査会はほとんど在宅の障害者を知らない人たちが集まって、お互い顔をみたこともないような人が審査するわけですから、こんなところで細かい議論ができるわけない。頚髄損傷でもいろいろな種類があって、その程度をペーパーでわかるわけない。こういう中で、実際に審査会が信用できないとなると、非定型部分の審査に重要度を置かれると、実際には市町村レベルで危なくなる。すると程度区分は国の按分基準なので、一人一人のニードを決めるものではないという説明をいまやっていますが、自主的に財源が限られると、その財源までしか出さないのが、今までの状況です。ですから、財源の支給決定は、かなりこの部分をかさ上げしておいてくれないと、今の時間の基準のままでは、125時間が上限になってくる危険がおおいにあります。125時間はやらないという話も聞いているが、実質、どこまで上げるのか、包括と同じ問題が出てきます。実質的に1人1人がどのくらい使っているかを見れば、24時間対応の人は全国で10人はいないだろう。20時間はいたとしても24時間はそんなにいない。最高でも744時間の24時間介助。さらに2人介助があって、800時間くらい。特に厚労省が考えてもらいたいのは、家族がいる場合と、ひとり暮らしでは全く状況が違う。それを一言で審査会で見るとういうことをやって、本当に基準値を5〜6倍も上回るような決定ができるかというと、それは当然できない。ひとり暮らし基準が、例えば、今200時間ぐらいとしても、500〜600時間はその3倍。一人暮らし基準を別立てで立てなければ無理だ。個別給付で、一般のひとり暮らし基準をきちんと分けて、30、60,120,150,240と一般基準があったとしたら、ひとり暮らし基準は120,240,480,600,800と考えて、その中に、実際に、当てはめてみれば、財源は足りるだろう。あまり影に怯えていて、実態をきちんと見れば、おそれることもない数字が出てくる。自立センターでも、1人、2人自立させればいいくらい。それ以上やれる力もない。年間200カ所の自立生活センター関連で、ひとりずつ自立させても200名。10年で2000名にしかならない。財源が果てしなくなくなるという心配はない。 知的障害者にとっても、自立するのに、1〜2年体験していかなければならない。3年ぐらいかかる人も多い。親元から出てくるのに、来年になったら急に自立した、なんてことはありえません。影に怯えているばかりで、実態を見れば、そんなに心配はない。厚生労働省で、Aさんが何時間申請して、何時間使った、という数字を持つわけですから、それをもとに作ってもらえば心配ないのではないか。ですから、こんなふうに言い合わなくても、実態を見れば、問題がなかったで終わるというような楽観的な気持ちもあります。それも含めてお答えいただきたいと思います。
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質疑応答

樋口/
 論定整理の私の役割は中西さんがやってくれたみたいです。包括の部分の、金額はどうなってくるのか。一律か個別か。(論点整理)金額的にどれくらいというのも、出せる程度の検討が進んでいるか、ということと、中身の使い方について、どういう制約が課せられているのか。使いやすいものになっていくのか、ALSの方の例を話していただきました。
 ALSの方は、今、すでに、介護保険を使った上で、支援費を使える。介護保険を使って自己負担を1割した上でなくては、支援費の夜間介助や土日休日が使えないということです。それが明らかになるサービス利用の制限になっていて、本当に必要な人が必要な時間を使えないという現実が既にあることを、お二人の発言の中にいただいています。そのことも含め、自立支援法は自己負担については、それらの問題点を解決して進んでいけるのか、というあたり。それから、会場からの質問が、寄せられているが、長時間と介助の内容が複雑な重度障害者がいたとして、その人に対して、審査会がその人の長時間介助を認めた場合、それは公的予算で、国の義務的経費として、2分の1を支出してもらえるのか、市町村に丸投げされるのでは、やっぱり市町村ではできない、ということで長時間介助を認められなくなるのではと言う質問があります。それも含めて中西さんの矢継ぎ早なる提案に対する回答も含め、10分ぐらいにまとめて頂きたいと思います。

伊原/
 すでに時間をオーバーしていますが。多くの宿題に関して、順を追って、どれだけ進めるかわかりませんが、説明したいと思います。
 重度包括支援については、法律の中で、新しく、きわめて重度の障害者に対するサービスを確保する。一定額の報酬を支払う仕組みにして単価の設定や利用サービスを自由に制定。このあたり、大きな規制緩和をしようと考えています。これを具体的な報酬額や介助者の増がどうなるかですが、まず、対象者の範囲ですが、秋ごろには方向を明らかにしていく必要があります。進め方は、川口さんも入っていただいていたと思いますが、厚労省研究というものがあり、ALSや状態の方を対象にした実態調査をやりながら、すすめていきたい。具体的報酬については、予算をきめるということが一つある。今回の重度訪問介護も来年10月なので、来年度予算になります。そうすると今年度末に来年度予算を決めます。全体を合わせた総予算額が決まる。これは、個々の積み上げというよりは、全体として厚労省予算がきまり、その中でどう配分するかが決まると思います。今年でいうと、930億円に相当する額が決まります。そのつぎに、重度包括支援、重度訪問介護などにどう配分するかが決まります。具体的にはわかりませんが、来年の春、具体的基準を決めることになるだろうと、今、想定しています。そこに向けた作業として、今は大きく2つあり、1つは障害程度区分について、全国61自治体で行っています。もう1つが、中西会長からも話があった、全市区町村で、今、支援費を利用している方のサービス量の実態を調べています。いろいろな方がいると思います。正直、全国でどれぐらいいるかの正確な把握はできていません。今あるのは、定点市町村で行ったサンプル調査の結果だけです。全国がはっきりするのが7月の末ぐらい。その数字をいただいた後、そこで重度の方の医療実態が分かると思うので、そこからサービス量を決めていきたいと思っています。
 まずALSの方のような重度障害者の関係でいうと、いろいろな方がいると思います。以前、ALSを特集した、テレビを見ましたが、長時間のサービスを受けているような地域もあれば、ほとんど、サービスを受けられない地域もあります。日本全体にばらつきがあります。その中で、我々としては、水準が低い所のかさ上げをはかるのが、優先順位の1番だろうと思います。 今の、利用者に対してどう考えるか、ですが、よく実態を調べ、地方自治体が配慮している場合、あるいは、ALSだけでなく、重度訪問介護の場合は、生活保護の他人介護など、いろいろ組み合わせて実際に生活されていると思うので、そこを含めて地域での生活を支えるための具体的な水準を決定していきたい。自己負担ですが、介護保険と支援費の関係は、保険優先の考えがあります。今回の自立支援法でも考え方は基本的に同じです。医療保険の生活保護など、先に保険制度を使っていただきます。誤解があるようですが、以前、橋本操さんの話の中であったのですが、介護保険で1割負担した上で、さらに新しい制度の1割負担を別に払うのではないかとありました。今回、新たな支援法では、介護保険の1割負担と障害福祉の方と合算する、ということです。合算した額が15000円とか、24600円、42000円という上限までくれば、それ以外にはご負担いただきません。その意味では、自己負担が発生したりしなかったりというばらつきがなくなるのではと思う。 一人暮らしの問題ですが、今でも25時間、50時間、125時間というルールは決まっています。あとは自治体のなかで、家族がいるかどうかなど決めていく。今度新たな基準を作っていくわけで、何時間ということで基準を設定するのか、金額で設定するかはまだ決めていません。 実態を把握できた段階で、中身をよく見て具体的基準を作っていくつもり。そのとき、念頭においているのは障害程度区分で基準を定めていきたい。ただ、一人暮らしだけで基準が解決するものではない。高齢の介助者しかいない、というケースもありますので、単純に一人暮らしだけ特別扱いをするものでなく、小規模な自治体の場合や独居の場合など、ケースによってきめ細かい対応が必要だと思います。そうした問題については、実際にでたデータを見て、全体を把握して、支障が生じないようなルール、基準を作りたいと思います。今の段階では全く白紙なので、実態を見て決めていきたい。その作業も具体的には年末なり年明けに基準を決めていくことになると思う。審査会についての会場からの質問ですが。審査会で決めた場合に、全部国が持つのか?今回の国と地方の関係では、国は義務的負担にすると言いましたが、義務的負担というのは、一定の国庫負担基準の範囲内であれば義務的で、それを越えた部分は義務からはずれます。その基準は、今の話の形で決められます。したがって、自治体、市区町村は、審査会できめたからすべて、国の義務負担になるのではなく、国の義務負担の範囲内であればするが、それと違う部分については対象外となる。したがって、審査会の判断基準と国の国庫負担基準の問題は別のものだと考えています。

樋口/
 というと、やはり、利用制限につながるというか、長時間必要な人でも、長時間出せませんというふうになる危険性が大きいと?

伊原/
 私も詳しく把握していませんが、今、東京都の23区や指定都市などで、現在の125時間ルールをかなり超えた水準で支給決定されている。自治体の担当者に聞いても、今までの経緯や経費、他人介護や、派遣事業を実施してきたなど、特殊な判断で出されています。それは我々としても、国としてそれはよくない、ということではなく、自治体の判断として尊重していくと思っています。

樋口/
 新しいところには広がってはいかない。今できているところで、それを自治体が活用していくのは文句はいいませんよ、ということですね。

伊原/
 1つは、文句をつける筋合いの話ではなく、それは地方自治の姿だと思う。また、全国の状況では、国庫負担基準はありますが、多くの自治体ではそれ以下。あるいは、そのレベルに達していないところもあります。国としてまず最初にやらなければならないことは、格差を縮めるという作業です。特に国のお金で、さっきも言いましたが…。支援費の支給決定者数の都道府県の格差は7.8倍です。人の数です。それから、時間数でも、都道府県単位で、4.7倍の格差があります。そういう意味では、この格差が、もちろん地方分権の時代ですから、ある程度は住民の判断で違うのは、当然のことかもしれませんが、この格差は、4.7とか7.8という数字は、介護保険は1.7倍という数字から見ても非常に大きい。早く手を打ちたいと思っています。

樋口/
 議論を進めたいですが、次のテーマの、移動介護についてをやってから、また戻りたいと思います。 では、移動介護について、最初に、地域支援事業化される、移動、知的の人たちの移動の問題とかを中西さんからお願いします。
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