■シンポジスト各氏の発言■■□■■■■■■■■■■■■■■

■障害者問題に関するご自分のこと、どう関わってきたのか、今の主な役割や立場について


伊原 和人 (厚生労働省福祉課企画官)

 皆さん、こんにちは。ご紹介いただいた伊原です。私のことを、今までどこかでご覧になったことのある方?1人いました。では、自己紹介をします。
 今、障害保健福祉部の企画官というポストで、自立支援法の後押しをしています。
自立阻害法とか、自立なんかできないという批判を受けていて、とくに皆さんからの心配や懸念が寄せられています。
 今日は、今我々がどういうことを考えているかを説明し、ご理解と納得がいただけるかはわかりませんが、霞ヶ関にいる自分たちが何を考えているのかを、お話したいと思います。 おそらく、どんな履歴の持ち主がこういう法案をつくっているかにご関心があるかと思いますので自己紹介をします。
 私は1987年に厚生省に入りました。それは、学生時代に、セツルメント運動というのをやっていて、所得の少ない方が多い地域に入り、ボランティア活動をやっていました。 そのときに、自分としては、当時の厚生労働省はずいぶん誤っているという問題意識があり、自分が役所に入って変えてやると思い、入りました。 障害者問題に関する経歴を話してくれと言われましたが、そのとき初めて自閉症の子供たちに関わりました。これは私にとっての初めての障害者の方との接点でした。 私が子供のころは、統合教育はまだスタートしていなくて、障害をお持ちの場合には、養護学校に行くのが普通でした。 そういう意味では、初めてです。
厚生省に入ってからは、主に医療施策をやっていましたが、入って4年目に兵庫県伊丹市役所に行き、福祉の仕事を2年ほどやりました。主にやった仕事は高齢者介護の仕事が主でした。 市役所なので、障害者の福祉支援も行いました。ずいぶんいろいろやりました。
 今から15年前のことです。そのころの福祉の状況は、今から見ると、ずいぶん乏しいものだったと、今、改めて思います。 今朝、保健婦をしている女房と話しをして、こういう会があるという話をしましたら、女房がALSの人と出会ったのが10数年前、その頃、ホームヘルプが週2〜3回、一日2から3時間まさに、自立生活という言葉も、名前だけで、中西さんの活動が始まったばかりの頃です。 そういう時代に市役所にいました。 私はその頃に自分で原稿を書いたりして、日本ではこのままいったら介護は財政的に苦しくなるだろうと、介護保険を提案しました。
私はその頃に自分で原稿を書いたりして、日本ではこのままいったら介護は財政的に苦しくなるだろうと、介護保険を提案しました。 戻って4年ほどで、厚生省でも介護保険制度をつくろうと。30歳頃です。昔そんなことを書いているやつがいた、ということで、介護保険をつくるプロジェクトに入れてもらいました。
 3年ほど、今の介護保険法案をつくる仕事をしました。 これは多分、障害者の方からはあまり評判がよくなくて、介護保険法案はひどいものだと思われる方も多いでしょう。しかし、私自身の気持ちから言えば、やはり、家族の介護を中心にしていた1980年代から90年代初めにみると、介護保険法案は、日本の社会保障を大きく変えたと思っています。自分もそのつもりで、その仕事をしてきました。 そのときは、高齢者の側から介護問題に入りました。その後、医療保険の仕事をしていましたが、去年の8月に、突如、人事異動があり、障害保健福祉部。端的にいうと、支援費の立て直しをしようということで、任命されました。 ちょうどこれで、10ヶ月ぐらい。今やっているのは、まさに、今の支援費制度をどう立て直すかの中で、障害者の方の自立を支えるための枠組みはどういうものが良いのかということを考えています。障害保健福祉部は、大臣、部長となり、部長の下には3つ、企画課、精神保健福祉課、障害福祉課があります。実は、私はその全体に所属しています。北川というもう一人も。二人で自立支援法の中身、今後施行するための準備をしています。
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川口有美子 (NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会)

 お世話になっています。さくら会の川口です。
いつも、橋本操さんというノーテンキなALSの方と一緒に皆さんの前でお話していますが、今日は橋本さんが岡山にいっているので、北谷さんと一緒に来ました。
 自己紹介ということですが、私の母がALS患者です。1995年に発病しました。在宅介護10年目です。母は、ここにいるどなたよりも重い障害を持っています。つまり、ALSのなかでも、重いのです。 目の動きも止まってしまい、どこも自分の意志で動かせなくなっています。それでも考えたり感じたりはできていますが、考えたことをすぐ近くにいる私にも伝えられないので、かなりのストレスを抱えながらの状態だと思います。 それがALSの最後の状態だということで、TLSという別名でよんでいます。そういう重篤な患者は、ALS患者のうち、10%発病すると最近わかってきました。ALSもきつい病気ですが、さらにきつい症状でおります。 それを知らないで、母が最初にALSだと言われたとき、ロンドンに私はいまして、障害のことなど考えることなく、子どもたちを育てていました。夫の仕事にくっついて行っておりましたので、毎日、ガーデニングをしたり、料理をしたりしていました。母の病気のことを国際電話で聞いて、もし、私が帰国して、母の介護を24時間するなら、お母さんは呼吸器をつけて生きていけると、保健婦さんから正直に伝えられました。 私はあまり深く考えることもなく、「それなら帰ろう」と思いました。24時間といっても、まさか本当に24時間くっつくこともないだろうと思って、夫も、良いと云ってくれたので母の介護を始めました。 始めてみて、トイレの時も、お風呂に入っている間も、痰が詰まったらどうしようとか、寝ている時も耳が起きている状態。3日で「こりゃいかん、できない」と思いました。そして、いつまで続くかわからない介護・・・。呼吸器を付けてくれたので、長く生きられることは分かっていました。妹もいましたが、とても家族だけではできないとわかって、そのとき、ちょうど介護保険ができ、支援費制度もできて、他人の介助者に頼る機会ができてきました。そのとき、ALSの患者は外出ができないので、移動介助も使えず、制度があっても使えない状況というのが難病の特徴ですが、支援費制度が始まったとき、ヘルパーを捜して派遣する仕事をしようと思い、橋本さんと相談して立ち上げたのが、NPOさくら会です。たぶん、ALSの患者の中でこのような活動をしているのは全国でもここだけだと思います。 橋本さんとうちは、それぞれで事業をしています。
 うちはケアサポートと訪問介護の派遣、支援費制度を使った介護派遣をの事業をしています。ヘルパーを捜し、養成し、派遣する。橋本さんもご自身の事業をしています。自分もどきの活動をして仲間に入れていただいています。 今日はこうやってALSの悩みを相談させていただく場所を作ってもらい、本当にありがとうございました。半分以上が愚痴になるかと思いますが、よろしくお願いします。
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北谷 好美 (NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会)

 ALS/MNDサポートセンターさくら会会員、北谷です。ALSを発病して13年です。呼吸器はまだつけていません。ALSになってから、出産をし、子育てをしています。今は、ALS協会の運営委員もやっています。今日は自立支援法案に対する意見を皆さんに聞いてもらいたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
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中西 正司 (全国自立生活センター協議会)

 今日は、伊原さんに、打ち合わせの時にも話しましたが、かなり厳しい質問がくると思います、でもそこで、きちんと国が受け止めて、どういう問題を解決しないといけないか、厚生労働省の立場でどう考えているのかを具体的に答えてもらえたら、納得できるかもしれないので、逃げずにきちんと答えて欲しい、と言いました。伊原さんは「わかった、説明責任を果たそう」ということでした。楽しみです。
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■障害者自立支援法をめぐる現在の状況の説明について


伊原 和人 (厚生労働省福祉課企画官)

 進行が予定より5分ほどオーバーしていますので、25分で行います。
 自立支援法については、毎週末のように全国あちこちで話をしています。今日はおそらく、だいたい中身は熟知されているだろうということですので、せっかくの時間を、法律についてお話するのは時間の無駄かと思います。 今の国会の状況、今日のレジュメを読むと、皆さんの関心は重度の方がどうなるか、移動介護について、など細かい部分にあるようです。 私からは、今回の自立支援法は悪いところばかりではないという、私の考えを話をします。
 まず、自立支援法案は、今年2月10日に閣議決定をし国会の法案の審議は、予算が可決されてからスタートしますので2〜3月は国会で平成17年度予算を審議し、4月に入ってから法案の審議をしています。 ただ今年は、厚生労働省の関係の法案を審議する場所は、厚生労働委員会で、介護保険法が先に審議されそれが終わった4月末からこの自立支援法案の審議が始まりました。 今まで、セレモニーみたいな審議もありましたが、実質的には3回の審議と2回の参考人質問がありましたので通常であれば、今後参考人質疑を続け、あと何回かの審議の後に採決をするのが通常の予定です。ただ現段階では郵政法案で国会が非常にすったもんだして、先週、空転しています。いよいよ今週から介護をやりたいと思っていますが、今後の見通しについては現段階ではわかりません。通常、法案というのは、採決をする前に与野党間でいろいろな話し合いが行われます。賛成なのか、反対なのか、修正するか、確認質問という形で話し合いがなされるのですが、現在、そのあたりについてまだ与野党間での話し合いがスタートしておりませんので、今後どうなるかは正直、分かりません。政府が我々の手を離れて、与野党間の話になっていますので、今週から始まるだろうという状況です。どういう点が国会審議で論点になっているかというと、ひとつは、利用者負担をめぐるもの。今回1割負担と食費の実費負担をお願いすることになっていますが、それに対して、いろいろな意見があり、負担できないとか、所得が少ないと、厳しいという意見が出ています。 もう一つは、新しい支給決定手続である審査会や、障害程度区分の新しいルールをどう考えるか、心配があるというご意見が出ています。 今日もご質問が出るかもしれませんが、給付の再編成が行われています。今まで支援費という言葉で定義されていましたが、支援費といっても、入所施設と通所施設のものと、ホームヘルプの支援費がありました。それを今回再編成し、介護給付と訓練等給付と地域生活支援事業に変えていきます。その中身についてのご意見。その中でもとりわけ、議論の一つとしてあるのは、移動支援です。今回、移動の部分が重度の身体介護を伴うような方については、個別給付という義務的経費になるのに対し、それ以外は地域生活支援事業になります。ほかにも、障害者の雇用の問題など、いろいろな議論があります。まだ障害者福祉や就労の問題を幅広く議論しているのは、おそらく例年にない、何十年ぶりのことだと思います。そのような議論が国会では論点として広がっています。今申し上げたのが、全体の概要です。審議の進捗状況です。今回の法案をどう考えるかということについて、お話をしたいと思います。 今回の改革には、大きく5つのポイントがあります。
 どうしても議論になるのは、手続きや基準の透明化・明確化・あるいは利用者負担あたりです。 おそらく、これから、もし仮にこの法案が成立すれば、5年、10年、振り返ったときに、大きなターニングポイントになると思っているのが、障害者福祉サービスの一元化の部分。ここが、おそらく5年くらいでターニングポイントになると思います。サービスの提供主体を市町村一元化する。身体、知的、精神というふうに分かれているものを1つの法律に束ねて、一つの枠組みで運用するという仕組みです。 障害の問題は、それぞれの障害の人がいろいろな事情を抱えていて、厳しい生活を強いられていると思いますが、他方、横断的に議論することがあまりにもなかったし、横断的に物を考えることも最近になって、障害者基本法の議論の中で行われるようになりましたが、今回、福祉サービスの面で、1本のくくりでやる。これは大きな転換だと思います。
 現在、精神障害の方は支援費制度の対象からはずれ、市町村の事業という形で行われています。ホームヘルプについても、今でも支給対象の方はそう多くありません。 一方、精神病院には、35万人の方が入院され、そのうち7万人ぐらいの方は、条件さえ整えば、家に帰れるということもある。その中で、一元化を実施できれば、そのへんも前進するのではないか。 身体障害者、知的障害者、精神障害者の枠組みがなくなり、支援の必要な障害者という枠組みになっていく。ただ、これが全ての解決になるわけでなく、谷間の障害者が残っています。 今言ったのは、3障害のいずれかに該当するのは、当然、対象にスムースになり得ますが、発達障害とか難病とかは、今回のこの議論で解決はしないで、課題として残ります。残りますが、現在の枠組みから見れば、前進です。 2つ目のポイントが、障害者がもっと働ける社会に。就労の問題があります。今日おこしの方も、センターなど、職を持った方もいらっしゃるでしょうが、なかなかそれは難しい、実際には仕事なんてないよ、というご意見もあると思います。ただ、厚生省と労働省が合併したことで、障害者の就労問題に正面から取り組みたいと言うことで、こういった提案をしています。私の経験から申し上げますと、15年前に市役所に行きました。そのころ、知的障害者のグループホームをつくりました。当時のグループホームは、働けるレベルの方、また、通所授産施設にコンスタントに通える方を対象にしていました。その当時の知的障害の方の就労先は、割り箸を袋に入れるとか、あるいはクリーニング、名刺の印刷。これが定番でした。私自身そういう意識が強かったのですが、昨年、この福祉課に入り、改めて、障害者、特に知的障害者の方への考えが変わっりました。ユニクロやスタバといった企業。ユニクロだと、障害者雇用率が7.4〜7.6ぐらい。なぜか?企業が優しくなったわけじゃない。障害者が働き易いように、この10何年かの間に雇用がパッチワークのようになされてきた。また、働くための支援、常に誰かが隣にいて、最初の1〜3ヶ月、サポートする仕組みが整ってきた。そういう意味で、この10何年間に、福祉以外の領域で、ずいぶんかわってきたことを学びました。今回、すべての方が働けるという意味ではなく、働く意欲がある方、あるいはそういうチャンスをつかめなかった人たちに、就労の道を開いていく。それが、この新しい、就労移行支援事業。従来の授産施設や更生施設を再編して、そういうものをつくっていきたいと思います。あわせて、精神障害者の雇用の問題ですが、企業にも精神障害者の雇用率も義務づけています。
 3つ目ですが、地域の限られた社会資源ということで、規制緩和をし、もっと多くの事業所が参入できるように改正しようとしています。 4つ目は、今、法律の改正をしようとすると、原則、社会福祉法人でないといけないのです。これが、今回からNPOでも通所事業を始められるようにしようとしています。併せて、規制緩和をして、設備、構造に関し、やりたいことについては規制を緩和して、できるだけ身近な地域で、サービスができるようにしたいと思っています。 今の3つのこと、一つ一つをとると、いろいろなご意見があろうかと思いますが、総論としてご賛同いただける方も多いと思います。心配や不満もあると思うのが、4番目と5番目でしょう。 4番目は、公平なサービス業務の…というところ。これは、障害程度区分を設けたり、審査会を設けます。ここには、障害者の福祉サービスを総合的に判定するため、支給決定の段階において、@障害者の心身の状況、障害程度区分、A社会活動や介護者、居住に関するもの・・・・。いろいろな事項を勘案して支給決定できるようにしていきたい。障害程度区分がどうなるか、審査会の役割などが気になると思います。障害程度区分というものは、今までは、支援費の場合、自治体ごとに、実際のケースワーカーが個々に判断し、独自のガイドライン、判定基準を作っていました。地域によるばらつきがあり、ケースワーカーごとにもばらつきがあるので、今回は、全国一律の障害程度の判定基準をつくろうという動き。現在、障害程度区分は全国61の自治体で、106項目をもとに、試行事業をやっています。何段階に区分するかについては、正直なところ、まだ決めていません。106項目のバラツキ具合とか、並行して、全国で支援費を利用しているかたの利用実態を把握しようとしています。一人一人の障害者の方が、身体介護でホームヘルプ何時間、日常支援で何時間、移動介護、デイサービス、ショートステイ、通所でどのくらい、というのを、身体、知的、精神の障害分野別に把握しています。把握することで、どのくらいの方がどのくらいのサービスを一人あたり利用しているか、障害程度区分の分布に重ねて判定する基準を作ろうと、作業をしています。 もう一つ。障害程度区分は決められていますが、それが決まると自動的にそれぞれの方のサービス料が決まってしまうと、誤解されている方が見受けられますので、ここで申し上げておきたいのは、障害程度区分というのは、あくまでも、支給決定するための判断事項です。 障害程度区分が重い方で、介護者がいる場合とそうでない場合、1人暮らしかそうでない場合も、支給料は変わってきます。支給決定では、障害者の障害程度、重さと同時に、介助者の状況や、本人の意向を勘案した上で、それぞれの自治体ごとに決定する、このような仕組みを考えています。 もう一つが、利用手続きについてです。新たに設けられる市町村の審査会があります。ここでは大きく2つのことをやっていただこうと考えています。 1つは、障害程度がどの段階かの判定。それから、判定が出ると、1人1人の障害者の方に程度区分が決まりますが、それをご本人に通知した上で、本人が実際、「自分はこのサービスをこのくらい使いたい」ということを市町村、自治体のケースワーカーと調整をして、利用計画案を作成します。これを踏まえて、市町村作成の支給決定案ができ、これが非定型的な場合、市町村が自分で持っている支給基準と比べて、著しく違う場合、非常に長い、というような場合については、市町村が必要と認めれば審査会に審査をあおぐ。そのときの判断基準は、逆に、なぜ市町村のケースワーカーは、なぜそういう支給決定が必要だと思ったか、理由を示し、それを審査会で合理的で納得できるということになれば、納得できる判定をして、支給決定する。そういう仕組みを考えています。これをやることで、支給決定される。従来の仕組みでは、仮に、利用者の方が支給決定に不満がある場合、行政上の審査に異議申し立てをする。市町村に対して異議を申し立てるということでしたが、今回は都道府県に対して申し立てるということです。後でご質問があると思いますので、その段階で、またお答えします。支給決定手続きは、そういうルールを設けています。支援費の伸びが、現在大きい中で、なぜ伸びるのかを、世の中に説明できるように、支給手続きのルールを透明化しようというのが、今回の手続きの透明化の目的です。 もう一つが、利用者負担。これは正直言えば、今、利用されている方の中で「賛成です」という方がなかなかいるとは思えません。ですから、当然、誰も、お金を払いたいという人は、よほどお金が余っている人だけで、簡単にご了解いただけるとは思っていません。事情を申し上げます。支援費制度の施行状況があります。2年前の4月に支援費制度がスタートしたときに、ホームヘルプを利用している人は10万人でした。それが去年の10月、ちょうど1年半で、利用者が16万人。これは喜ばしいことです。(今まで利用できなかったことが、できるようになった。(1.6倍)その結果が、支援費がスタートする前の予算は493億円だったのが、今年、17年度には930億円ということで、倍近くの水準に増えています。15年度、16年度は予算は増やしていますが、結局、足りなくなって、不足が生じ、昨年度は約270億円強の不足額が生じました。これを補正予算でさらに追加し、厚生労働省は他の予算から90億円を流用し、さらに11億円足りなかったが、自治体に我慢していただく、ということになりました。ホームヘルプに関しては、所要額を確保しています。このように伸ばしていきます。18年度以降ものびていくと思われます。なぜならば、まだサービスを利用されていない方は全国にいらっしゃいます。この中で、今後も予算を確保しなくてはいけないというのが我々の今おかれた状況です。一般歳出、社会保障関係費などもここ3年間伸びています。政府全体として、0.1%、0.1%…3年平均ではマイナスです。社会保障関係費は高齢化でのびが大きいですが、ずっと伸びていますが、それでも3%。在宅予算は倍近くのびている。政府関係でこれほどのびているのは、ほかにはありません。今後とも、この水準で確保する必要がある。今回、では、ここでどういう改革案を提案しているかというと、1つは15年度16年度で足りなくなっている赤字予算が出ないように、国の義務的経費に変えるというようにします。 もう一つは、皆さんにはご不満だと思いますが、今、サービスを利用されている方には負担の能力に応じて、もう少しご負担をお願いしたい。というのが今回の利用者負担の話です。利用者に幾分か負担してもらえると、その分を新しいサービスを必要とする方に回していける。それが今回のもう一つの改革。もちろん、よく言われますが、一割負担や食費負担など負担が上がることについて、負担できないという意見があります。そこで、我々としては、他にないような負担を講じることで、何とかご負担いただけるよう配慮したい。その中で、なんとか負担をお願いしたい。それを今、まだサービスを受けてない人にも回していきたい。 政府の役人の話で、政府の都合だと思われると思いますが。ただ、今回の改革は、皆さんの眼から見ても評価いただける部分も、納得できない部分もあるでしょうが、是非全体から評価し、あるいは今後10年といった展望から見て考えていただきたいと思います。
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