Making the Active Wheelchair
in Pakistan


パキスタン
アクティブ車椅子(AW)プロジェクト

報告書

主催:SAKURAGIS(パキスタン)
協力:マイルストン/ライフ自立生活センター(パキスタン)
   後援:全国自立生活センター協議会/パキスタン地震緊急救援基金

報告者: SAKURAGIS技術開発部主任
ムハンマド・ハビブ・ウル・ラーマン 

パキスタンアクティブ車椅子(AW)プロジェクト 報告書
 0.プロジェクト概要
 1.背景
 2.資金
 3.支出状況
 4.プロジェクト詳細
 5.プロジェクト実施によって明らかになった費用効率
 6.まとめ
 7.今後の展望:緊急!新たなAW100台が必要です!
 8.JILへの希望



0.プロジェクト概要


 パキスタン地震緊急救援基金より50万円のサポートを受け、アクティブ車椅子(AW)25台を作製・配布しました。SAKURAGISは、パキスタンの障害者団体であるマイルストンとライフ自立生活センターより委託を受け、AW作製を行いました。4サイズの作製に成功し、マイルストンが推薦する障害者25名へ配布しました。

 AWとは、ユーザーのニーズに対応した車椅子のことです。自走可能で、姿勢保持の観点から車椅子とクッションをつくりました。現在、パキスタンでは重たい患者用車椅子が一般的です。

 配布対象者は、今後パキスタンの自立生活(IL)運動を担っていく見込みのある人と2005年10月のパキスタン地震被災者です。パキスタン各地で活動している次世代リーダーへAWを配布することで、地震被災者支援を活発に進めていくことを目指しています。
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1.背景

 2005年11月、私は、パキスタンのライフ自立生活センターと提携しているSAKURAGIS技術開発部主任として、全国自立生活センター協議会(JIL)より日本での短期車椅子作製研修の機会を得ました。この研修でアクティブ車椅子(AW)の構造や作製技術を学び、自国で地域資源を利用したAW作製の成功を確信するに至りました。

 研修を終えて、パキスタンへ帰国し、サンプルの作製にとりかかることになりました。サンプル被験者としてAWタイプの車椅子を必要とする人たちはたくさんいましたが、資金は限られており、財政的な支援が必要となりました。

 私たちは、パキスタンで被災した人たちのために、少なくとも3000台の車椅子を生産することを目標としていました。JILに活動の趣旨に賛同していただき、地震基金から25台のAW作製費のサポートをうけました。
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2.資金

 50万円 ※AW25台 ・・・ パキスタン地震緊急救援基金より (2006年5月30日送金分
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3.支出状況


 主に車椅子とクッションの材料費、障害当事者の技術者研修費、車椅子を受取人へ届けにいくための旅費交通費等へ支払いました。詳細は下記の表1をご覧下さい。


     表1:支出明細

費目

金額(Rs.)

金額 (円)

車椅子・クッション材料費 (Rs. 8500 x25台)

212,500

425,000

研修費 (Rs. 200×3人×10日)

6,000

12,000

旅費交通費(ラフォール-アボタバード)

12,000

24,000

通信費

3,500

7,000

雑費

13,000

26,000

2,47,000

494,000

残金

3000

6,000

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4.プロジェクト詳細

(1)障害当事者へのAW作製技術研修


 下記の障害当事者3名へ、AW作製にあたって必要な技術的な研修を、10日間行いました。

<研修対象者:カムラン氏・アマナト氏・リズワン氏(マイルストン所属)>


(2)アクティブ車椅子の作製

 25台のAWを、4サイズで作成しました。台数の内訳は下記の表2をご覧下さい。

       表2:サイズ別AW台数一覧

車椅子のサイズ(車輪のサイズ)

台数

13インチ 子供用

6

14-15 インチ

10

16インチ

5

18インチ

4

25



(3)車椅子の配布状況

 25台の車椅子は下記のa.及びb.の2タイプの対象者へ配布しました。

a. IL運動次世代リーダー(13名)
b. 地震の被災者(12名)


a. IL運動次世代リーダーへの配布

 対象者は、@すでにマイルストンでIL運動の研修を半年から一年受け、A今後、継続的に研修を受ける予定で、Bパキスタン各地でIL運動・被災者支援を展開できる見込みのある人としました。

 さらに、移送コストをへらすため、@〜Bの条件にあてはまり、第14回パキスタン全国障害者スポーツ大会(2006年7月4-6日アボダバード開催)への参加者を対象者としました。この大会参加者へは交通費が支給され、パキスタン各地に住んでいる対象者が同じ場所へ集まるため、この機会を利用してAWを配布しました。車椅子の配布者リストは下記の通りです。



 表3:AW配布者リスト(パキスタン全国障害者スポーツ大会にて)

NO.

名前

写真

NO.

名前

写真

1.

アミール ヨウサフ(Amir  Yousaf)

アミール ヨウサフ

2. 

ファラク シャール(Falak Shar)

ファラク シャ―ル

3.

ナザム ウル レーマン(Nazam-ur-Rehman)

ナザム ウル レーマン

4. 

スルタン カン(Sultan Khan)

スルタン カン

5.

アサド ウラー(Asad Ullah)

アサド ウラー

6. 

タモール ハッサン(Tamoor Hassan

タモール ハッサン

7.

ナディール カン(Nadir Khan )

ナディール カン

8. 

M.アシフ イクバル(M. Asif Iqbal )

M. アシフ イクバル

9.

タンウィール ウドゥ ディン(Tanweer-ud-Din)

タンウィール ウドゥ ディン

10.

ナジル ブット(Nasir Butt)

ナジル ブット

11. 

シェル カン(Sher Khan)

シェル カン

12.

ヤジル ハミド(Yasir Hamid

ヤジル ハミド

13.

アドナン ニザル(Adnan Nisar)

アドナン ニザル


b. 地震被災地への配布(バラコット・マンセラ・アボダバード)

12台の車椅子は2005年10月8日の地震の被災者(バラコット・マンセラ・アボダバード)へ配布されました。

 地震発生後、マイルストンやライフ自立生活センターでは、新たに障害者となった人たちの自宅訪問を行い、車椅子を必要としている人たちは確認できました。しかし、文化的な背景から現地では個人的な情報を十分に集めることが難しく、地域のリーダーへ車椅子を手渡し、対象者へ配布してもらいました。
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5.プロジェクト実施によって明らかになった費用効率


現在のパキスタンにおける下記の問題点(1)・(2)へ対し、今回のプロジェクトで(3)の解決策が明らかになりました。

(1) 現状の問題点@ 〜自走・姿勢保持ができない標準車椅子
 パキスタンで一般的に使用されている車椅子は、病院で患者を移動させるために設計・利用されています。このタイプの車椅子では、自走できず、姿勢保持の面でも問題があります。自立生活運動を担っていくには、パキスタン標準タイプの車椅子は不適当です。

(2) 現状の問題点A 〜高コストなAWタイプ(一般的な場合)
 AWの機能や動きやすさへの認識は非常に低く、ユーザーのニーズに対応した、片手で利用できるAWタイプの車椅子は生産されていません。
 仮に、ユーザーのニーズを満たす車椅子(AWタイプ)を注文すると、約3万円となります。通常、工場では大量の注文がない限り、新しいタイプの注文を生産する設備がないため、非常に値段が高くなります。

(3) 解決策 〜高品質・低コストなAWタイプの生産(SAKURA社製)
 このような理由で、一般のルートでAWタイプを低価格で購入することは難しいです。平均月収2万円の一般人には、とても手が出せません。
 しかし、SAKURA社では、日本での技術研修と今回のプロジェクトのおかげで、パキスタンの地域資源を利用しながら高品質、低価格のAWタイプ車椅子を生産することが可能です。


   表4:パキスタンにおける車椅子の費用効率比較

標準車椅子

一般的なAW

SAKURA社製AW

金額(1台あたり)

Rs. 7,000

(¥ 14,000)

Rs.15,000

(¥ 30,000)

Rs.10,000

(¥ 20,000)※

姿勢保持

×

自走

×

片手操縦

×

  ※内訳:材料費…Rs.8,500(¥17,000)/研修費・人件費・雑費…Rs.1,500(¥3,000)


SAKURA社製 車椅子1
SAKURA社製 車椅子: Access to Life


SAKURA社製 車椅子2
SAKURA社製 車椅子: Access to Life

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6.まとめ 

 本プロジェクトは、パキスタンで@低コストのAWタイプ車椅子作製を可能にしたAAWタイプ車椅子を必要としている人へ配布できた、といった点で成功に終わりました。今後、車椅子を受け取った人たちが、パキスタンの自立生活運動の中心的なメンバーになっていくことを期待しています。
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7.今後の展望:緊急!新たなAW100台が必要です!
   →新たな50台分の報告はこちら 2006年11月16日

 現在、緊急に100台のAWが必要です。現在80名の待機者がいますが、今後、激増することが見込まれます。
 AWは障害当事者の生活にとって不可欠です。今回のプロジェクトでAWを受け取った人たちは、積極的な自立生活運動のメンバーになりました。待機者リストも彼らが作成しました。
 SAKURA社は、今回のプロジェクトを達成したことで、必要とされる品質及び台数のAWを作製することが可能です。
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8.JILへの希望

 私たちは、次のプロジェクト(AW100台作製)達成に向けた財政的支援の継続を希望します。同時に、日本国内外で私たちの活動に賛同・ご支援いただいている皆様へ、私たちの活動について情報を提供していただけるよう希望します。
 どうぞよろしくお願いいたします。


JIL及び私たちの活動をサポートして下さる皆様へ:
今回のプロジェクト実現に向けた研修の機会と財政的支援に対し
多大なる感謝の念をここに表します。


プロジェクトによって作製されたAW AWと利用者〜バスの中 AWと利用者


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