当事者エンパワメントシンポジウム高松 ●

2003.12.9


 昨年4月より支援費制度が施行され、障害者福祉においてもこれまでの行政措置としての福祉サービスから、障害者自身が権利としてサービスを選択し利用する仕組みとなった。また、障害者はサービスの消費者のみならず、多くの当事者団体が指定事業者となりサービスの供給主体ともなっている。
 このように『地域福祉』『エンパワメント(=当事者自身が力を得ること)』が今後の福祉施策の方向性として明確に示される一方で、依然として支援費制度における地域福祉の財政的、社会的な基盤は施設福祉にくらべて弱いことが課題となっている。
 このような現状を変えていくには、世論を喚起し社会的合意形を図っていくことが必要であり、そのためには、障害者・高齢者の分野を越えて”地域福祉”“当事者エンパワメント”に取り組む当事者、支援者、研究者、行政、サービス事業者のネットワークを形成することが不可欠である。そこで、日本全国でシンポジウムを開催し、”地域福祉”“当事者エンパワメント”のネットワークを組織し、地域福祉を推進する社会的な合意形成を図ることを目的とする。また、介護保険見直しのテーマの一つである障害者の介護保険組み込みに関しても、障害者の望ましい介助サービスのあり方について議論する。     (開催要項「目的」より)

●コーディネーター ●

和泉 とみ代 氏(香川短期大学助教授)
●シンポジスト ●
田中 慎治 氏(身体障害者通所授産施設 善通寺          希望の家 施設長)
道官 敬子 氏(自立生活センター・高松副代表)
野村 知司 氏(香川県健康福祉部障害福祉課 課          長)
村木 厚子 氏(厚生労働省障害保健福祉部企画           課長)
中西 正司 氏(全国自立生活センター協議会)

(五十音順)

       シンポジウム講演録 


あいさつ



中西 正司 氏(全国自立生活センター協議会)
 施設から在宅へという国の方針が、地方ではまだ動いていません。しかし、そういう状況の中で、地域の中で暮らす障害者が増えています。そういう障害者を支援するネットワークです。施設の指導員の人も、在宅サービスをしている人などもいらっしゃいます。高齢者の支援等でボランティア、施設、在宅、高齢など、あらゆる障害者を含めた地域で暮らそうと言うネットワーク作りが趣旨です。

 皆さんも地域で活躍されていらっしゃると思います。そういう力をあわせて今後の地域福祉を高めていきたいのです。われわれサービスの当事者、それに支援者が輪になり新しい時代を切り開きたいと思っています。全国10ヶ所で講演会をやっています。これが第5回目です。大分、仙台もやってきました。そして高松にきました。

 
みなさんが支援費の話に興味を持って、是非、地域行政、国を動かしてほしいと思います。今日は県の障害福祉課長などにも来ていただいています。よろしくお願いします。

シンポジスト各氏の発言

田中 慎治 氏(身体障害者通所授産施設 善通寺希望の家 施設長)

よろしくお願いします。自己紹介をします。現在は授産施設にいます。大学は四国学院大学で、卒業後福岡に帰りました。最初は知的障害の施設にいましたがそこを辞めて、北海道に移った後、また四国に戻ってきました。

地域生活支援ということから言うと、身体障害であるが、グループホームを持っています。今年から支援費制度が始まりました。うちは障害の重い方のグループホームがあり、ホームヘルプが使いづらく、そして土日の支援がなかなかできないということがありました。施設のスタッフが中心に余暇を支えていました。去年は赤字の状況でした。

やはり豊かな生活を送るということは難しいことです。今年度からはホームへープ、ガイドヘルプが使いやすくなっています。今日はコンサート、明日はガイドヘルプを使って、ビデオ屋さんに行くことになっている、といった具合です。グループホームをうまく使っています。支援費制度は使っている人たちにとっては有意義なものになっています。

施設から在宅への取組みは、今は通所の施設なので、家族からグループホーム、一人暮らしへの移行などいろいろな動きをみせています。例えば、国に事業を使い、少しずつ動いているという形。10年前くらいだったら隔離でしたが・・・。

入所の施設のときに感じたのはこの人がなぜ施設にいるのかということでした。力がありながら施設にいるということを感じました。本当はそういう人にはサポートはいらない、少しのアドバイスで生活できる、皆、力をもっていて自立できる、そう確信しました。

軽い方だけでなく、障害の重いかたも経験をすることで生活を作っていけると感じています。とりあえず今のところこれで話を終わります。

道官 敬子 氏(自立生活センター・高松副代表))

 自己紹介をします。自立生活センター高松の副代表です。自立生活センター高松は出来て5年くらいになります。きっかけは、総合司会で話していた那須が、当時、高松は24時間のヘルパー制度がなかったが、東京では24時間の介護保障ができていたという状況の中、彼の「高松でもできないことはない」というのを聞いて始めました。

在宅生活をはじめました。組織として支えるために、自立センターが設立されたのが最初のきっかけでした。彼は入院しながらも交渉を続け、4年かかって高松に制度ができました。自立センターを始めて、副代表としてやっています。この4月から、措置制度から利用契約にもとづく支援費制度が始まりました。自立生活センターとしては今まで自立生活をする人のピアカウンセリング相談をしていました。利用者の立場、事業所の立場、二足のわらじを履いています。

支援費制度は4月の移行で、メリットは事業所と契約をしてサービスを受けるということです。サービスを選べます。事業所と契約し、選べます。ホームヘルパーも20歳以上の親の義務が外れました。ガイドヘルプは自己負担がないが、ホームヘルプは負担があったので、そこはよかったかなと思います。夫と子供の扶養義務がまだ残っています。まだまだ枠が難しいです。事業所を選べるようになったが、しかし本当に選べているのでしょうか?

 高松市内ではヘルパー派遣、移送サービス、高松は介護タクシーの先進圏でもあるようです。介護保険がはじまりタクシー会社でリフトタクシーなどが増えました。高松市内なら、公共交通も利用しながら、ガイドヘルパーとして移動できる部分はあります。しかし市内をはずれると、介護タクシーが少ない。輸送サービスも県内くまなくとはいきません。ヘルパーもいまだに社会福祉協議会しかない状態です。支援費によって移動介護、ガイドヘルパー決定してもらったが、足がないので利用できない人がいます。そのあたりをかわすために、うちも移送サービスを提供することが必要だと考えています。

 サービス提供の立場からは、ヘルパー養成が2級講座では対象が高齢者になっているということがあります。身体障害、知的障害、精神障害は少ししか触れていません。実際に支援費制度が始まる前に自立生活センターとしても、ヘルパーの養成講座を一度行いました。まだまだ受け皿は少ないと感じています。事業所では知的障害のヘルパー派遣がうけるようになっていますが、香川県全体では受け皿は不足しています。男性ヘルパーがほとんどいません。介護タクシーは運転手がいるが、まだまだ少ない状況です。

 自立センター高松のような24時間介護の部分で男性ヘルパーがうちにはいります。知的の人の派遣業務がきています。その場合に、今まではヘルパー資格、実際に入って当事者が研修をして入ってもらうのが可能でした。しかしヘルパー資格が必要となってきました。うちも研修を実施してはいますが、なかなか追いつかないということがあります。

 研修をする事業所も大分増えてきました。だんだん解消していくと思うのですが・・。研修してすぐOKというわけにはいきません。身体も知的もそうですが、その人とかかわりを持ち、一緒に行動する中で理解が深まります。それがとても大きいことです。研修を受けたから即OKとはいかないのです。難しいところです。
 
 市町村で地域格差、情報格差が出てきているように思います。高松市の場合、知的障害の支給が厳しい状況です。親が元気なら、親がするのが当然という言われ方をします。それは大事な自立支援ですが、それができないということになります。つまり、親ばなれ、子ばなれができないのです。親がいるうちに準備をしないといけないということを分かってもらえないのです。共倒れになってしまうことが、分かってもらえません。

 支援費になって、その受け皿となる行政が理解して、準備を早くから始めるほうがよいということをわかってほしいのです。センターとしても当事者の支援はしているが、センター、行政が連携した活動をしたいので、もっと理解してほしいと思います。


野村 知司 氏(香川県健康福祉部障害福祉課 課長)

 10分ずつなので、前半は現状、後半はこれからの取組みを話します。

 香川の現状の紹介したいと思います。4月から支援費制度が始まりました。障害者関係のターニングポイントとなると思います。障害者福祉の現状を資料の中に大雑把なデータですが載せていますので印象をつかんでいただきたいと思います。9ページです。補足をすると、現状の中で施設サービスと、在宅サービスについてです。施設は定員、在宅サービスの方は何人分の数ではなく、箇所です。場所の数です。全国の数字を入れるとわかりやすかったのですが・・・。

わが県の現状は入所は全国平均並みになっています。わが県は100万人なので、全国平均です。身体の入所は若干、上回り、知的は下回ります。在宅サービス、事業所の数は多いくらいだが、グループホームは知的障害の方、すごく少ない、全国の半分以下です。46番目です。基盤の状況は地域で支えるものは、これからまだまだ動く必要があります。アパートの一人暮らしが多いか?というと……。生活をしているかたは増えています。先日の全国手をつなぐ育成会で報告されたように、親元を離れて生活を始めた人もいましたがが、まだまだ身体障害の分野でも似たような状態です。

 一方、支援制度になってから、利用はどうなったか?というと・・・・・。支援費制度には施設サービスと在宅サービスがあります。在宅サービスについて話します。施設の入所、通所の方もいらっしゃいますが今回は割愛します。在宅サービスは、支援費の受給者証の受給を受けた人です。ひとりで複数しているかたもいます。2114人です。措置制度の3月と比べてみました。倍くらいが福祉サービスの対象者となっています。このサービスの利用状況は10ページにあります。「増えているんだな」ということを把握していただきたいと思います。

ホームヘルプは、高松市、県内の市町を含めた数字です。昨年間の費用は、1.7倍前後になる状況です。ほかのサービスも伸びていますが、国の補助金が足らないと新聞にでていました。全国的なことだと思うが、国のホームヘルプの補助金予算は15パーセントぐらいを見込んでいました。実態は70パーセントぐらい増えています。この背景には、一つには制度が変わったときに気がついて、双方向の掘り起こしがあったということです。行政から広報しました。ニーズを抱えている人は、使えるかも?と請求をしたというわけです。そんな中で利用が増えています。

資源と実際の状況をみていて、県として考えているのは障害者プランです。10ページ下です。障害があってもなくても同じ住民です。支援していく体制をつくるべきです。それぞれが住みたい場所で生活をするということです。これまで「介護が必要だ」「障害がある」というと施設へという流れがありました。戦後長い間・・・。

 しかし、人間社会にはいろいろな人がいます。そんな方向にそって障害施策を考える必要があります。まず基本的な考え方があります。当然支援費制度のサービスの事業所を増やしていくことも必要ですが、支援費は、生活を支えるための道具のひとつに過ぎません。支援費だけあれば暮らしがなりたつかというとそうではないのです。地域の中で暮らすためには、他のサービスも必要です。

就労サービス、教育関係などいろいろネットワークを作ることがわが県の課題です。そのため、県では支援センター、地域支援事業、市町村生活支援制度、障害のある人、家族から相談を受け、どういう支援が必要か考え仲介します。連絡を取りながらの支援センターを作っています。地域の中でささえあうネットワーク作りが大切です。休憩の後の課題になると思いますが・・・。今あるものを利用するだけでなく、そしてボランティアをつなぐだけではなく、対応できるもの、出来ないもの、ニーズにこたえられるかといったことを考えたいと思います。ないなら仕方がないではなく、どうするか考えるネットワークが大切です。地域を作っている、地域を変えるネットワークが大事なのです。これから必要となってくると考えています。

逆に香川だけではないが、ネットワークワ−ク作りがまだまだだと思っています。県として今までよりしっかり方向性を示して、福祉の事務は市や町に権限がおりてきています。そこに方向性を持たせます。支援費支給設定の考え方、決定方向を認識してもらえる市や町の意識が大切です。県から提案し市や町が取り組むことが大切だと考えています。

村木 厚子 氏(厚生労働省障害保健福祉部企画課長)

 省庁再編の前に労働省に入省しました。労働短縮、女性問題も長くしており、介護休業とにたずさわっていました。平成9年から11年に障害者雇用対策課におりました。知的障害者のかたが雇用制度のなかに組み入れられた時、障害者の問題を「働く」ということを入り口にして入っていくようになりました。

その時印象に残ったことは、障害の重い人がかなり働いている現状があるということです。企業で働いている人と同じレベルなのに、軽い人が施設にいる等、「ここを何とかしないと」と思ったことが私の出発点です。幸いにも、福祉の分野で自分の仕事として取り組めるようになりました。重い仕事だと思いつつ、面白い仕事をやらせてもらえるなと取り組んでいます。8月末に今のポジションについて、新しい仕事についたとたんに「支援費のお金が足りない」という問題に目を丸くして金策に走っています。

支援費制度が始まりました。香川の話が野村課長からあったが、全国でもサービスが伸びています。これには、大変喜んでいます。まだ、全国から数字があがっていないので現状の集計はまだなく、全体を見ることは不可能ですが、今年度の前半で推定すると、今年のホームヘルプサービスとグループホーム、だいたい昨年の6割増となっています。香川は7割増です。今年用意したお金、3割増でした。昨年は、予算は使いきらない程度でした。

どこが伸びているかというと、身体障害の人たちのホームヘルプの利用も伸びているが、知的障害や、障害児のためのサービス、デイ、ショートの伸びが大きくなっています。知的障害の人たちのホームヘルプサービスは市町村の3割ぐらいにしかありませんでしたが支援費がはじまって「しています」という自治体が増えました。スタート地点が低かったのです。

せっかく生まれたサービス、いい形でサービスが使い始まったので、芽をつぶさずによい形にするのが私たち行政の仕事だと思っています。昨日の朝、厚生労働大臣が「大体のめどがついた」と閣議の記者会見で話していました。お金を持っているところ、ほかの所に、いろいろな形で予算の我慢をしていただきました。政治家にいろいろ話しに行きました。

 支援費制度が政府の中、政治の世界の人たちにどれだけ認知をいただいているのでしょうか?みなさんが応援してくれるのでしょうか。共通していたことは障害者の問題は大きな問題と思っていなかったということです。高齢者の問題が主でした。1から説明しないと分かってもらえない人がたくさんいました。話をするなかで、「やっといい形ですすんでいる」と非常にプラスに評価をしていただきました。

こういう財政事情なので、お金はいくらでもない、出来るだけ効率的に運営する仕組みが必要です。厳しく言われたり、やわらかく言われたりしました。障害者の問題も政府の中でも、政治の場面で大事な認識をしてもらう流れを作ることが必要です。これが3ヶ月の実感です。もうひとつ、スタートをした支援費制度の中、「お金が足りない」の声が多くありました。小さな声で、使いにくい・・・、小さくもないが聞こえてきたりもしています。そこを色々と工夫していきたいと思います。契約を結ぶまでのサポートをしっかりしてほしいと、視覚障害者の方から要望がありました。どんなサービスが受けれるのか情報が少ない、実際に確認をしてから申し込みたいのに・・・ということでした。

 地域差があるが、事業者がいない、という声もありました。使いやすい工夫、情報が流れる工夫をしていきたいと思います。事業者が少ないというのは、地域差もあるが、宿命のようなものです。日本は資本主義社会で完全に自由化されたサービスならニーズがあって高いお金を払う人がいると事業者が参入します。その中で価格の安い業者が生き残ります。淘汰の仕組みを作れないのです。福祉の世界は過剰な形で供給するのが難しいのです。逆に安定供給ができるという長所もあります。そんな中で、いいサービスになるためには、選べるのが一番ということになります。あるサービスは質を高めることが大切です。

 支援費制度と同時にスタートしたはずの、福祉の基礎構造改革、第三者評価、よそから評価をしてもらう、その評価を外に出していく、支援費を育てながら、地域で暮らす、地域でケアを受けながら働いたり、社会参加をするということを皆と育てていけたら・・・と思っています。「道具」としての支援費制度をつくっていきたいと思います。

中西 正司氏(全国自立生活センター協議会)

 自立生活センターは1986年にスタートしました。現在は200箇所の自立生活センターがあります。地域の中で重度障害者が暮らしていけるようにとスタートしました。多くの先達がいました。70年代、障害の子を親が殺した・・などの事件もありました。施設の中での人権、多くの障害者が手術の実験台にされた等の問題もありました。80年代になって、在宅で暮らせるような制度が必要という流れになりました。

今までは高齢者の地域生活を支えたヘルパー制度。それを障害者が使えるようになりました。私が地域で暮らし始めた頃は、「親は?」「兄弟は?」と言われました。障害者同士の夫婦は、税金の無駄使いといわれたこともありました。今はそんなことは言われなくなりました。

 1980年代以降、障害者自身の団体を設立してきました。今までの10年間で1000名を超える障害者がわれわれのサービスを利用してきました。多くの障害者が暮らしてきたことで駅にエレベーターもつきました。DPIの議長をしましたが、新宿駅に300名の車椅子が行ったことがあります。そこで駅のホームに6人がかりで車椅子を上げました。アルバイト等をやといました。そのため、やっと駅にエレベーターがつくようになりました。障害者が作ってきたものです。

 当事者の自己決定、選択という言葉を聞いて、国が措置制度ではダメだということになったのです。親や当事者が行っても、施設から出られませんでした。今までは行政処分だったので……。それは大きな変化です。全国で50回以上のセミナー、300人以上の研修をしてきました。2003年に全都道府県実施を行いました。介護者と障害者がペアとなって施設を利用しました。支援費制度の中では親元でなければホームヘルプサービスが使えませんでしたが、新制度になって、利用できるようになりました。生活保護を受け、親元を離れて暮らすことが可能になったのです。4月に出来たばかりなのに。

 今までは障害者は施設か、親元で暮らせということでした。4人に一人の知的障害者は施設にいます。1月の騒動の中、われわれは厚生労働省の前で戦いました。村木さんは、ビルから見ていられたそうですが・・・。支援費制度を動かしたのはわれわれです。地域で暮らしている障害者がいると、国や市町村は何も言えません。

 実体を作ることが必要です。駅にエレベーターがついたように、前へ進めばバックはしません。弱肉強食の世界を作ろうとしていたのではないし、お金を稼げない人は施設にという話でもありません。一番困っている人たちにお金を投入されなければいけません。命を守らない国家が道路を作る意味はないのです。防衛も国民の命を守るということです。障害者の命を守れないのならそんな国家は必要ありません。みんな税金を払っている上に、障害者保険を払っています。障害者が利用できないサービスを提供できなければ、国家とはいえません。

田中氏補足

 課題というか基盤整備がされていないのが一番の大きな課題です。野村課長も言われていましたが、たとえば知的の方であれば、グループホームが足りません。本人の力を引き出すという事業所が足りないのです。なかなか理解してもらえない部分か多いのが現状です。見ているだけではなく、支援センター、支援事業の人たちが、サポートすることが必要です。ネットワークを組む体制が必要だと思います。使えるサービスの数が少ないというのが間違いなのです。また、そのあたりが、われわれ含めた福祉の人間の考え方を変える必要もあるということです。

和泉 とみ代氏
 
 ありがとうございました。在宅福祉を充実させるために、いくつかの課題がだされたが、支援費制度がスタートして、当事者の権利が尊重されるようになりました。いくつかのサービスの利用者も香川県は思った以上に多いし利用者も増えました。一方での課題は、後半話していきたいと思います。サービス事業者をさらに充実させるために、サービスの内容、質の向上はどうすればよいか?また障害者の生活実態をしったヘルパーやボランティア、マンパワーの拡大、充足をどうすればよいか?分かりやすい情報を提供してもらえないものか?一番大きな課題は、財源問題です。解決をして、より充実させながら、地域で暮らす方法を探さなくてはなりません。私の人生よかったといえるような体制を作りたいと思います。

後半

ディスカッション


和泉氏
 たくさん質問が出ています。
後半は地域での生活を充実するために、どう課題を解決していくか。回答を含めながら、発言をいただきます。まず、道官さんから、当事者としてどうしたらよいか。できること、国に望みたいこと、支援団体と解決したいことをお願いします。

道官氏
 今後の取り組みとして、当事者としてできることについてです。利用者であるけれど、当事者として、きめの細かい当事者同士の相談、自立支援という部分からのサポートを行いたいと考えています。ヘルパー研修でも、「何でもしてあげればよい」というので支援になりません。自立支援の観点からのサポートの方法というのも研修でもやっていきたいと思います。自立生活センターの考え方は決めるのは利用者である当事者である、それをサポートするのがヘルパーであるという考え方で介助をやっているわけで若干それは一般の事業者とは違う考え方ですが、その観点で、やらないと自立支援ということにはならないと思うのです。その辺のところを当事者としてやっていきたいと考えています。利用者の立場から利用しやすいサービスの形態を考えたいと思います。

例えば、高松市外だと公共交通機関がないところでは、輸送サービスは欠かせません。そこを充実したいと思います。支援費と輸送サービスを組ませて利用者の立場にたった利用形態を考えていきたいのです。それから、地域で支援センターが出来てきています。うちにも各地域の支援センターからの相談、「一緒にやってくれないか」という申しでが増えています。

支援センターもいろいろな立場の支援センターがあります。支援センターの窓口のスタッフが、どれだけその地域での在宅の視点を持てているか?という部分がすごく大きいのです。その部分を持てているスタッフだと寄り添った相談ができるかということも問われているように思います。

そういう部分をもてているスタッフでなければ、なかなかよりそった相談はできないのではないか、相談窓口に座っている人というのは本当に大事なキーパーソンだと思うのです。そういうスタッフと連携をとって相談に来る当事者がエンパワメントできるか、そういうよりよいサポートをこれからやっていきたいと思います。

 国に対して望みたいということは、補助金削減、利用時間の限度が突然でました。年末年始重いものを抱えて眠れないというようなすごく不安な日々をすごして、支援費が始まってみたものの、「どうなるんだろう」というのを抱えてやってきたのですが「ここにきて、補助金不足か」、また「悪夢がよみがえってきたのか」という不安をもっていてその辺の国の施策、在宅に重点をおいた政策に転換していただきたい。財源も今の配分とは逆の位の形にしないと在宅というのは保障されないと思う。施設から地域といっても、移行するサポートが少ない。自立体験室等、移行の部分を重点的に保障していただきたい。

和泉氏
 
続きまして、田中さん。
知的障害者−軽度の方をふくめて、その人達への地域支援の取り組みについて、今後必要となるサービスメニューや具体的な活動目標など発言お願いします。

田中氏

 確かに資源が少ないということもあるが、先ほどもふれたが、福祉を仕事としている人間がどういう方向に向かっていくのか、極端な話が社会福祉法人のあり方等が大きな問題になってくるとは思う。
これがまず1点。知的ということが身体の方とごちゃごちゃになる場面もある。施設から地域へ移行していくというところで選択肢が「施設」「地域」しかない。中間がない。在宅の場合も同様です。

 ずっと家族と一緒に生活するか、ひとりで生活するかグループホームで生活していくかとしかない。とにかく選択肢がものすごく少ない。その中間が大切だと思う。知的の人達は具体的に一人暮らしがどんなものか、グループホームがどうなのか、イメージをすることが難しい。中間的なもの、来年厚生労働省が予算要求しております「地域生活の体験事業」。滋賀県ではもう県の単独事業でやっている。実際にどういう生活かを知る、実体験がものすごく必要になります。

身体のほうにはいるが、親と一緒に生活をしている人も、自分の一人暮らしのイメージがつかみにくいということがあります。親と一緒だと自分が言いたいことをちょっと言えば、親が察してぱっとやってくれる。そういう生活を続けているので、介助者をつかって一人暮らしをするイメージが身近なものになってはいません。もちろんそれだけではなくて、その間の部分、「一人暮らしか」「家族か」、グループホームか、家族か、施設なのかというところではなくて、その間のところをなんとか制度として使えればいいと思います。

そういう場所を使って実際にそういう体験をしていくこと。そこにたとえば、居宅の支援費、ホームヘルプサービスが使えるようになればもっと本人の負担は少なくてすみます。実際に支援センターで一部屋借りてそこで実際に生活の経験をしている人がいますが、そういう中で自分の生活をイメージできていると感じる。自宅ではないので、居宅でのホームヘルプサービスが難しいので、居宅でなくても例えば、そういう体験をしていくところに、支援費がうまく使えると、そういう体験がしやすくなるのではと感じています。

 知的障害者の施設では自活訓練事業、それをうまく使うというのも一つの方法。ただやはり自活訓練事業は施設がやるので施設の職員が入るという部分があります。施設とは別の人がそこに入り、生活支援をするというシステムが必要。身体の方なんかでは特にそうなのですが、本人の生活をバックアップしてくれる我々福祉関係者もそうだが、いわゆる当事者のピアカウンセラーの重要性。そこであと一歩背中を押してくれるピアカウンセラーの存在が重要です。

中間、そこらへんを大切にしないといけない。地域の生活が大事だからといきなり外へ出て失敗し、また施設へ戻る・・・。そういういことの繰り返しになってしまいますからその間の本人の気持ちの移り変わりをきっちりささえていけるような制度が必要だなと感じています。

和泉氏
ありがとうございました。
道官さん、田中さんから今後の課題を解決する提起があったが、皆さんの質問が、野村さん、村木さんに集中しています。

野村さんにはただいまお二人のご要望にあわせて、実際に事業を展開しているなかで、ホームヘルプの支援費が抑えられている。市町村によっては児童のホームヘルプを基本的にみとめないとか、視覚障害のかたのガイドヘルプの制限がある。そういった問題についてもどうなのかという質問があります。特にいろいろな問題が絡んでいると思うのですが、障害を持つ人の地域への移行、それを更に進めるために問題、課題に県としてどう取り組めるのか?厚生労働省に望むこと等あわせて発言願います。ただいまの当事者団体との連携についてもあわせてご発言いただきたい。

野村氏

 県でしゃべるときは一人で何時間もしゃべることが多い
です
持ち時間を持つと制限され辛いものがある。前半はなした部分で、資料の訂正を。

 資料の10ページ。ホームヘルプで支給決定、つまりホームヘルプ、支援制度つかえますという方は679人、これは9月時点のあらい速報値ですが、支払い人数387人は、これは間違いでして4月の数字で、9月では590人になっている。今、お二方のお話とか、あるいは会場からのメモでいただいたご質問を踏まえてということなのですが、まじめにはなしをすると時間がかかるので、かなりはしょります。

 まず、支援費制度の基本理念は自分で選ぶ、自分で決める。選択と決定です。他人任せにするのではなくて、自分で、と。サービスの利用にあったってそうであるので、実際のサービス提供の場面においても基本理念に沿ったサービス提供が求められる。

「なんでも代わってあげる」のではなく、本人がどうしたいのか?を引き出してそれに寄り添うという形が必要であるとおっしゃっていましたが。これからは、これは支援費の対象にかぎりません。高齢者のほうの介護保険のほうのホームヘルプ等々のサービスでも同じだと思うのですが、基本は自立の支援。では「自立」とは?

「こうありたい」という本人の意思。その本人の意思を尊重することが第一歩です。一方的に提供する側の、思い込み、決め付け「こうしてあげればいいんではないか」ではなくて、実際にはあいてが何をのぞんでいるか、利用者の自己実現を考えているか。「支える」まさに「支援」「費」という名前がそうだと思います。

 本人ができることまで代行するのではなく、出来る限り本人の力、意思を引き出すことがサービスが求められる。前半でもご指摘ありましたが知的障害者に対応したヘルパーが少ない。そういったもろもろこれから福祉サービスに対するあり方であるとか、求められることが変わってきている。そもそもなかなかヘルパー=介護保険、高齢者ということで、特に若い知的障害者や児童に対応できる人材がいない。検討しても障害分野のホームヘルパーの養成研修であるとか、あるいは現にホームヘルプに従事している人(高齢者・障害者とわず)に対する研修をしているが、そのような場面を通じてこういう基本的な考え方をしっかり広める必要があります。

その際に大切なことは、県庁や県の研修センターが言っても説得力がない。「考え方としてはわかるけれども」で終わってしまう。そういうことから研修の場とかでも、地域で暮らしておられるかたがた、実際に研修の場でも、実際に地域で暮らしている人にも来てもらってこともあると思うが、当事者の声としてもそうだ、とつまり何でもかんでもしてもらうというのではなく、自分たちは自立を考えているというメッセージを提供サイド、最―ビスを提供する方にうちだしていただければと思います。

 さらに、支援費制度の中で考えると、支給決定2市町村でやっている。市町ごとにばらつきがあるのもおそらくあると思う。制度的には究極的には自治事務であるので、その当該市町村がどのように判断するかというところでのばらつきがでてくるところではあるのですが。

 児童にはホームヘルプはない、事業所はあるかもしれないけど支給決定しない、とか知的障害者は支給決定しない、など、そういう決め付けをされるのは困ります。基本として必要なのは、ケアマネジメントといった発想が必要なのか、と思います。はなからない、しないと決め付けるのではなく、実際にどういう支援が必要か?を本人や家族等と一緒になって、コーディネーターが話し合い、プランを作る。そういった取り組みが必要ではないのか、と思います。逆に言えば、そういうプランを作っていく中で具体性をもって話し合う必要があります。

 抽象的にホームヘルプがとにかくほしいといわれてもよくわからないというところもあるだろうから、ある程度具体性をもって話せるような基盤というのをみんなでつくっていく必要があると思います。県の方でいうならば支援センター、地域療育支援事業とかをやっているけれど、ここでやっているコーディネーターさんたちにもこれからよりいっそう徹底していかなければならないのかな、と。お話をきいた、それで終わり、というのではなくて、話を聞いて、ではどういう支援をするのか?それをどういう風につかいこなしましょうかということを一緒に考えるコーディネーター、そしてその支援を引き出す、キーパースン、関係者の調整をする。支援費制度であると市、町、ホームヘルパーの業者なり、ボランティアサービスであるならば、そのボランティア団体ですとか、いろいろな団体があると思うんだけれど、そういったところと連絡調整をしてみんなで考える。

 「ケアチーム」で考える必要があると同時に、体制を作っていく必要があります。支援費支給決定には支援センターと一緒になって地域療育市町村生活支援事業をやっているところを間にはさんで一緒に考える、マネジメントする。マネジメントという思想はちゃんともってくれ、といっています。今後もそれをする必要があると思う。

 
それと後、「選択肢のなさ」、究極の二者択一のようなところがあります。特に知的障害の分野、身体の場合でもそうはかわらないのかもしれないですが、施設に入所する。本人にとっての良し悪しを別にして、とりあえず介護者は安心。そうじゃなければ、親子だけで、家族だけでぽつんと地域の中で孤立してしまい、その中で必死に頑張らなければならない。その二者しかなかった。その間、グラデーションというものがなさすぎた。全国都道府県で見た場合に地域によっては、グループホーム、サポートネットワークができていて、その間の選択肢が出来ているところもあるがわが県の現状ではまだ少ない。

 その意味では、いろいろな選択肢をこれから具体的に提示していく。アパートを改造したグループホームができた、日中は就労、作業所授産施設に通いながら、地域生活を実現した人がいると、実像をみえるようにしていく。選択肢があると感じてもらえる形にしていく必要があります。地域生活をしていくうえで、グループホームだ支援費だということだけではたりません。支援費制度がすべてのニーズは全てカバーしきれているとは限らない。

 就労支援はハローワークとの連携が必要、学歴のある人については学校との連携も欠かせない。そういうところをつなぎ合わせていく、ネットワークが必要。ホームヘルプでサポート、デイサービス、ショートステイなど・・・。人間の生活というのはこれだけで果たして足りているだろうか、人間の生活は24時間 365日。色々な局面がある。

 支援費の中だけではまかないきれない外出ニーズとか社会的ニーズがある。支援費制度というのはまた事業者の参入基準がある。その基準にはあてはまらないけど、身近にあるといいよね、というもの。制度のすきまに落ちるもの・・・などを埋めていく必要がある。

 それはボランティア活動でもいいけれど、それだけではなくて有償のサービスなど。うちの県では香川型レスパイトサービス育成事業というのをやっている。これも昨年からはじめて、これから取り組み団体増えています。けれどいかにこういうものを根付けせて地域の資源として活用してもらえるような形に育成をしていくのかということがこれからのポイントです。

長くなるが、あと2点・・・。

地域生活を体験する。つまりグループホームにせよアパートにせよ、「施設」か「ひとりか」。その間のグラデーションとして、中間として親子で住んでいるが、デイサービスを使ったりすることもあります。グループホームにしてもアパートにしてもいきなり親元を離れるのは勇気がいることです。アパートを借りると敷金、礼金などの問題もでてくる。実際にどういうものかわからないけれど敷金礼金だすというのは金銭的にはリスクがある。そういうところで、踏み出しやすい取り組みがあると良いと思います。

 国の要求の中でも提案されている。実際に国の予算を通るかどうかというのは判らないところもあるのですが。このあたりは村木課長が答えなくてもいいと思うが・・・・。提案が示唆するのは全国的な課題であるということだと思います。滋賀県では県独自にやっています。あるいは世の中には法人独自の取り組みということでまた、自腹でやってるところもあります。やっぱりああいうのが仕組みとしてあるとより一層進むよね、と。

「施設から地域へ」これが示唆するのは、施設の中にいるが地域に暮らしたい人もいる。一方で、それ以外にも、今親元にいる人も地域で暮らせるように。地域の中で親離れする、あるいは一人暮らしが継続できるようにというメッセージも当然含むものだと思う。そういうのを考えると、ああいう風に実際ワンステップおいて、めどをつけてからグループホームに行ってみる、一人ぐらしに思い切って入っちゃうということが必要なのかと思います。皆さんもわかると思うが、障害があってもなくても一人暮らしは不安がある。寮に入った人がホームシックにかかることもある。不安を抱えながら人間は生きています。種別を問わず、障害があれば、直面する問題も多い。訓練をしながら一歩ずつ進むことが仕組みとして必要であると考えます。

そして自治体で仕事する身としては財源の問題が避けてとおれない。支援費制度をやっている人達というのは多くは社会福祉法人であったり福祉の情熱のある方だと思うのですが、かすみを食っていきてるわけではない。霞ヶ関。(冗談です)福祉サービスというのは天からお金がふってくるわけではない、ということをほんの中にかいて、つかまった厚生省の事務次官がいますが、なにをするにもコストもかかるので財源の問題をしっかり考えていく必要があるのかなと思います。やっぱり、社会を動かす中で、お金がかかっている。必要なものだということを行政の中で、福祉課だけではなく理解を求める必要があります。

役所の中や、県庁だけでなく、社会全体にもこんな課題があるということを知る必要がある。世界二位のGDPを誇るわが国でもいかんせんこういう課題があるということを広く社会へ知ってもらう。社会保障というと、年金、医療、介護、何兆円というお金がかかっているところにばかり集中しているが、そうではなく、人々の生活を支える為には雇用保険、労災などいろいろある。みんなの問題であるという意識を持ってほしいと思います。

支援費制度をやってるものとしては自己選択を裏付けるための財源を確保するために、アピールして、共感してもらわなければならないと思うし、社会全体でも意識する必要がある。答えになったような、ならないような話でしたが・・・・。最近感じていることです。

和泉氏
 今日いくつかのご質問がサービス利用についてあったのですが、具体的には本人のニーズをつかみながら、どんどん柔軟で新しいサービスを作りながら、市町村の窓口ではなく、香川県の野村さんのところに伺い、毎日うかがいながら、具体化していくという手もあるのかな、と思いながらきいておりました。
村木さんには、たくさんの質問があります。いくつかを答えていただく。厚生労働省としての施設から在宅への移行の取り組みについてどのような支援をしているか、厚生労働省としての役割をお答えいただきたい。質問です。

 制度的に身体障害者のグループホームはないのか?知的障害の場合、入所施設のバックアップが必要だが、そのへんは検討していないのか?居宅の事業所や24時間対応する事業所や医療的ケアの必要な方の連携した事業所の設置を検討しているか?

 事業を実際に展開している方が、現在のデーサービスの単価が低くて、赤字になってしまう、地域で質のよいサービスをする上で在宅重視の予算配分の、今後の見通しなどの質問があります。このあたりを踏まえながらお願いしたいと思います。

村木氏

 道官さんからも質問があったが、在宅支援の財源をどうするか?について。今年サービスが6割伸びた。それで予算が3割のばしていたのに足らなくなったという話を冒頭にした。国の予算の編成方針は、去年よりはお金は伸ばさないという形になったわけです。障害者の政策は大事だね、障害者サービスは伸びている。じゃあ予算を3割伸ばしましょうか?5割のばしましょうか、で「うん」とは言ってもらえない。では高齢者はどうなのか。どこかを増やせば、どこかが減る。虐待を受けている子もたくさんいるよね、これをどうするか?そういう問題の中で障害者の問題も大切なので、きちんと配分をお願いする。

 中西さんから国家間の話がありましたが、道路の建設をやめればよい。厚生労働省の役人としては本音では当然そう思っているのですが、誰が決めるか?といったら政府全体なり、国会になるが、所得の再分配、国民の命を守るというのが国の仕事だというのは私自身もその通りと思う。ただ国という抽象概念はなくて、「国機能」という立派なコンピューターが最適な答えを出してくれるのならよいのですが……。国ってなにかといえば、最後は地域であれば自治体の首長であり国全体であれば、それは我々が選んだ、国会議員であり、国会議員が選んだ総理であり、という風に大きな枠組みを動かすというのはそこになるのですよ。

 担当部局は福祉と主張するが、国防、医療が大切という人もいる。政策決定のところを動かす必要がある。心配なお正月を迎えてもらうわけにはいかない。予算確保は担当としてやりたいが……。

長期の話です。予算は、12月に決まっていくが、大きく2つの流れがあります。三位一体で、支援費制度は国が自治体に補助金を出して、最終的には市町村で事業をする。国庫補助負担金という流れ。これを地方分権で、補助金をつけるではなく、財源ごと地方に移そうという流れがあります。

 国全体で20兆円の国庫負担金がある。これを3年間で4兆円を地方に移します。1年目は1兆円という話が11月に出てきた。新聞等で見たと思うが、2500億円のお金として、厚生労働省は、生活保護との割合を変える。自治体が欲しい、自分たちでよいと思うサービスをやらしてほしい、そのお金を地方に回して欲しい。乱暴な言い方だが、自治体がやる。プラスの面は、住民の身近なところで、自治体がお金を持っていて、サービスをする。

 
逆にデメリットは、地方に財源を移すと、今のままの財源となり地方の責任でお金を集める必要があります。国での問題が地方でもおこるろいうことです。今、実は、市町村では格差が起こっています。施設中心で進んでいたところが、逆に、在宅となり遅れてしまった場合もある。施設がなかったために、在宅の流れにうまく乗れたところもある。全体的に進んでいます。

 これらの格差はどうなるのか?縮まるかもしれないが、そのままかもしれない。
三位一体で考える。関心のある人は、今週から来週をよく見ててください。障害者のお金の問題と関わりが深い。意思決定をする段階です。もうひとつ財源の問題として、いくつかの県の革新派の知事さんのいるところから違う発想がありました。今年の春から提言があった。地域でケアの必要な人にケアを提供する。

 介護保険と障害の問題は共通性がある。
財源として、介護保険は何がいいか?保険料をとるという新しい財源ができている。払う人がいる。宙からお金がでてくるわけではない。年金がほしかったら、保険料はいくら・・・と、今話題になっています。保険料を取りながら、提供できるサービスをする。その方向へいくのはどうかとの提言。

 中西さんも出席してくれている検討会があったが、彼は2つ保険の良さを強調した。
財源的には保険の制度が大事。もうひとつは、皆が保険料を払う。自分も将来そうなるかもしれない、そのときに保険から給付を受ける。彼らの問題ではなく、我々の問題という意識。その趣旨の発言をされました。保険へいこうか、地方へ財源を移すか?この時期に、国の予算として勝負をかけていく?その道もある・・。

 財源問題については、大きな岐路であす。
今年の予算編成の仕事を見つめながら、これからどうするか?団体として、住民として、国民としていろんな意見を聞かせてほしいと思います。財源問題は一番大きな話だが・・・。今はいくつかの、サービスの問い合わせが来ています。規制緩和できないか?今、個別に検討のお答えは出来ないが、正確に質問をうけて、お答えしたいと思います。

 
さっきから話に出てきているように、新しいサービスをつくるため、実態や最初のチャレンジが必要。地域でこれをつくるのは、自治体かもしれないし、NPO、社団法人・・かもしれない。規制緩和について、特区の制度があります。地域の中でうまい工夫がある。追加的なお金がかかるのは無理だが、規制緩和することで地域としてサービスができる。特区という発想で挙げる方法もある。ぜひ活用をしてほしいと思います。

 
あと、これからの大きい枠組みの中で課題を2つ。精神障害の問題。「支援費にも乗り遅れた」このような言い方をする。雇用制度も乗り遅れた。今は7万2千人が社会的入院、病院で入院している。環境さえ整えれば社会で生活できるのに・・。この人を何とか地域にかえそう。その対策が始まったところです。具体策を会をつくって検討している。医療の改革、精神障害についての意識を変えていくための普及啓発、地域生活の支援のこと、3つでています。精神の方々の対策も行いたい。高齢者、児童などもっと広がるかもしれない。

 
地域で暮らすのに、困っている人のサポートの仕組みがつくれたらと思っている。知的46万、精神は204万、大きな問題。地域で暮らすのに、困っている人のサポートの仕組みがつくれたらと思っている。支援費のケアの問題。地域でモデルをつくる。中西さんも出ている検討会で、ある方の発言。ケアの話で「人間は介護を受けて、何をするか」これが大切。社会参加することが大切。働くこと、社会参加のこと、住宅政策との連携、それを考えたケアの問題を考えたい。現場で就労のこと考えている人とも連携をしたいと考えています。

和泉氏
 たくさんの分野で話していただきました。
財源問題等皆さんも支援費制度が介護保険と一緒になるのでは?という不安もあったでしょう。中西さんから支援費制度を充実するにはどうするか。どういったとろで力をかけるかについて。

中西氏
 今の支援費制度は今後の社会を作る根本的な問題にあたっていると思う。
いままでの国の構成は、企業、NPOのサービスなどがある。殆どは、企業のサービスであった。ホームヘルプサービスも国がやってきた。社会福祉協議会が行ってきた。上のほうからくるシステムに下のほう(利用者)が異論を唱え始めた。
 
 
施設を作ってきたが、入りたくない。知的障害者のようにコミュニケーションをとるのが難しい人が、4人のグループホームで暮らすことを決定するのはできない。本人が「入りたいかどうか」、政策の作り方が違う。この地域にどれぐらいのホームヘルプが必要か?ニーズに基づく計画をする、そういう政策立案をされたことがない。

 
「このシステムをやめよう」と、「当事者主権」という本を書きました。受付にあります。この本の中には、女性の当事者、ドメスティック・バイオレンスで一番いじめられているのは女性。被害を受けたもの同士がカウンセリングをするのがよい。障害者のピアカウンセラー。身体障害者だけでなく精神障害についても、2年間30名くらい実施。3名はうちの職員として、勉強中です。知的障害者も当事者団体を作り、お互いの地域での生活を支えようと努力しています。なにが地域で役立つかは、先輩がどうやって暮らしてきたか?のノウハウの共有です。これをすることは欠かせない。システムの中に組み入れる必要があります。体験は必要であるとは当然の要求です。どうして施策の優先順位の1位にならないのか?

 
我々は、政治的な力がないことを知った。当事者としての高齢者、介護保険の提供をしている施設があるが、全国に地域支援のネットワークがある。地域でのネットワークを広げ、女性についても、介助の負担を受けているのは女性。患者についても、ガンの宣告等当事者。このような当事者運動が90年代に法律を整備しています。世界的な動きがあるんです。

 
次の5年、10年は当事者に基づいて社会が動きます。アメリカにはARPという団体がある。道筋はできている。280億円の支援費制度のお金が足らないなんて……建設関係で多くの失業者ででるが、どこで受け入れるか?高齢者を社会参加させて在宅サービスをする。若者は介護保険を払うようになる。今の介護保険サービスを増やしても誰も怒らない。未来社会に希望が持てることが大切。国家は目的を喪失している。国をかえていこう。この新書を読んで国を変えていこう。国民の意識をかえていこう。国家施策の中で考える問題と思っています。

和泉氏
 ありがとうございました。高齢者の社会参加、介護保険に財源を払っていくだろう、質問の中で、介護保険の支援費制度が一緒になったとき、限度額があると一人暮らしの障害者を支えるのは無理だと思うとあります。村木さんと中西さんに向けての質問ですね。

中西氏
 介護保険の月々の負担。障害者の場合は免除されることはありえない。介護保険課が言っている。10万円の負担はどこからでるのか?どこから払うのか?それが最大の問題。今は上限4時間、これをどう延ばして24時間に使うのか。基礎生活4時間も厳しいが・・。
 
 私は、入浴2時間かかる。トイレも2時間かかる。
合理的でない。一律の保険の基準金額でいくのは無理なのです。4時間を、例えば社会参加分をつけたとしても、移動介護でかなり使います。全部で10時間使っても、残りどうするか?基礎的な部分は国が給付したので、上乗せはありえない。それ以上市町村が勝手にしなさいとなる。

 
それを避ける方法があるのであればいいが、現実性がない。介護保険は毎年増加。20歳から取り立てても少ししか増えない。3年で底をつきます。介護保険が安心だというのは嘘。根本的な社会参加。介護保険は我々にとって乗れる船ではないんです。医療保険でも高額医療費をやっているが・・・・。介護に関して合理化するのは難しいことです。

 
クリアすべき問題はとても多い。育つ過程で社会参加していく。若い障害者のみを考えて、高齢者は今後の生活の安定を考え、料理を作る過程を我々は大切にしています。社会参加の理念も「隣の人と話す」程度を社会参加の最高レベルととらえているとすれば、外へでて、レクリエーションを楽しむ社会参加とまったく違う。

和泉氏

 村木さんから一言お願いします。

村木氏

 架空の話は適切でないが、考え方を述べたいと思います。支援費は「ツール(道具)」との意見がありました。介護保険も道具。障害者が地域で暮らすために、どういうサービス、施策が必要か?その上で、それを実現する道具として何を使うか?全て介護保険ではない、雇用、教育、いろいろ問題があります。介護保険というツールを使うという選択肢はある。

 
介護保険になれば、ああいうサービスがない。その心配があるとの質問があった。ばら色ではない。介護保険も・・・。その中で、介護保険も道具なので、その道具にどういう機能を持たせるか?政策決定の問題です。こういう障害者のこういうニーズをみたす方法。どういう人にどうするか?合う、合わないを考えずに、すすめるのでは政策になりません。介護保険でも税金でも同じことです。

 24時間介護、それに公のお金をつぎこむためには、一体どういった人たちに、どういう生活をするのか、お金はいくらかかるか?効率的にできているか。そういうことは問題になります。それを払う人がよいといわなければいけない。どの制度になろうとも同じ。介護の制度を理論化するのは難しいが、具体的に何に、誰にどういうサービスが必要か?この世界で財源を確保することが重要です。

和泉氏
 新しい介護保険、当事者が、「生活のためにこんなことが必要」。実際の高齢者との差などを明らかにすることを述べられたと思う。残り時間は、会場からもう少し聞いてみたいことがありましたら、だれに答えて欲しいかもお願いします。

会場
 有益な話を聞くことができ、感激しています。これは、野村さんに。香川県のこれからのあり方をどう思っているのか?を踏まえて応えていただきたい。皆さんの話を聞いて、20年前から考えているが、親との生活をしているが、「しんどいから施設に入ろうか?」と思ったことがないわけでもない。施設に入るという選択肢は、排除された。どうして排除か?というと施設から学校へ通ったり、会社に通ったり、施設の中で深夜のテレビを見たりすることはできない。「施設にはいることができずにしんどい思いをしたな」と思っている。お話の中で施設か、地域かという定義をされたが、では、施設に入っている人、入れない人、こういう人たちは社会参加がないのか?ではなく、施設を地域生活ができる場所、例外にしませんか?と感じる。施設から地域ではなく、施設を地域にする。これからの施策で抜けてはいけないと思う。施設を運営している香川県の責任で、施設のあり方、変える、入所のやり方を簡単にするなど、香川県としてかんがえているかどうか?野村さんに伺いたい。


野村氏
 施設、地域と2つに割るのでなく、施設入所者も活動する支援をする。
ことも大切と思うが、個人的な暮らし方として、集団生活の空間でよいのか?果たして、それでいいのか。集団生活を前提とするあり方ではなく、普通の場所で普通の生活を。施設の中で交代で外に行くということなどはあってよいと思います。

 施設の中で、そいうった取組みをして、どんどん施設が増えればよいのか?立場上、そいうことは言えない。グループホームは通過点でよいとおもう。施設を開放的にしても、やはり集団生活という限度がある。基本は地域で普通の生活の実現を考えていきたい。一方で、施設にいる人はその空間に閉じこもってよいのか?という問題もある。施設の中で、「地域の人を祭りをひらく」など逆の発想。そういう中から一人で暮らしてみたいという人には、施設としてどういう支援ができるのか?香川県の現状からいえば、これから考えて行くこと。

 全国にはばらつきがあるが、積極的にやってきたわけではありません。逆に施設に押し付けた懸念があった。そういうところも考えて、施設の役割、地域のネットワークを考えたい。サテライトしたままで施設がいいのか?そういう人の選択を止める権利はない。今の生活で親と一緒に暮らしたい、親からいろいろ言われたくない人もいる。それぞれの思いを実現したい。施設を地域化すれば解決ということは言えない。どっちを重点に考えるか?「普通の暮らし」を実現するために、どのような仕組みが必要か?考えていくべきと感じている。あまり答えになってなくてすみません。


和泉氏
 よろしいですか?
うしろの男性、そして前の方。

会場
 知的障害の授産施設からきました。法人になって2年。グループホームの単価。居宅支援、地域移行の方針だったが、そうなっているのですか?デイ、ショート、グループホームの単価。単価をみれば、措置の時代と変わっていない。知的障害者の施設、日曜通所でやるとすれば、人の確保が必要。1時間800円払っています。今は450円くらい。支援費は赤字。居宅支援は赤字。支援費の本当の姿。グループホームにしても単価は措置の時代と変わっていません。

 障害者自身、家族は安心して生活できるのか?単価が上がったが、今の単価を3倍ぐらいにすればよい。地域で生活できるためには、今の制度でも単価をあげればできると私は思う。メニューは全くない。2者択一しかない。当施設でも10年いた人が入所になった。今、現在いる人が入所にいかなくてもよいように。2年前に県を辞め考えている。今の支援費制度そのものが、本当の居宅支援になっていないと感じている。村木さん、野村さんに回答お願いします。


村木氏
 財源があれば、出来るだけ良いサービスをしたい、これは私も同じです。現実は、かかるかかるお金は、単価×サービスの提供量単価設定には苦しんでいます。単価が上がっている部分も居宅支援ではある。そのアップのためにお金が増えているのも現実問題ある。単価が高くなれば、ヘルパーの質、教育の問題、土日、深夜の問題プラスになるのも分かる。しっかりとした財源が必要。支援費制度になって、来年度は経営実態調査をやる予定。施設も在宅も経済実態がみえてくるので、それらを考慮して、単価の見直しも考えていく予定です。

和泉氏
 厚生労働省の方に質問です。ふたつの問題があって、施設と雇用。施設に行けといわれる。福祉事務所では安定所で自立をと言われる。その二つの狭間にある障害者も施設か、地域か?選択肢が非常に少なくて、「ここに行かなければいけない」とか・・・。そうではなく、もっと中間点があればよい。施設と雇用の間選択肢の中で選んでいくことが、負担も少なく、厚生労働省がいっしょになってるのだから、選択の幅が増えればいいと思う。

村木氏
 障害者対策課長をしたといいました。自分がやった施策のなかで成功したのは、厚生省から出向した人とペアで作ったトライアル雇用というものです。今までは雇用と福祉が分けられていた。チャレンジするのにハードルが高い。一つは3ヶ月だけ雇う。障害者の人が気に入らないと断っていいです。逆に障害者も気に入らないと断ってください。お試しコースがあるので、ハードルが低くなります。

 もう一つはうまくいかなかったときに戻れるようにしました。施設から地域でとか、福祉の世界と雇用の世界とのハードルを低くするというものです。ハードルを低くするには、失敗したら戻れる必要がある。中間的なものをいかに作るか?就労の問題では、福祉的就労にいろいろな幅があります。一般雇用とまったく働かない中間のそれを、もう少し体系化できないか?在宅で働く、それをサポートできる仕組みをできないか?もっといいアイデアがあるのかも知れないし、精神ならグループ就労も必要かもしれない。やり直しがきく、卒業してから次のステップへの仕組みを作りたいと思っています。徳島ではちゃんと働き給料をもらっている人がいました。

和泉氏
 
まだまだ質問がつきませんが、パネルディスカッションを終わります。支援費制度化開始から半年。一つは解決のために柔軟で、支援する人、本人が、行政と話をして垣根を越えての話しあい。また、会場の方から、支援費制度を地域の制度として情報公開するためにネット上での公開。情報を公開しながら、互いにネットワークを作りあうのが必要ではないかと思う。また、サービスの向上は、大切なことで、「サービスができました」では困る。支える職員の質、その中でのサービス。それらを向上することが必要。第三者評価も必要。私たち当事者にも責任があるのでは?と話し合えた。今日は長時間ありがとうございました。会場の皆さんもありがとうございました。

前半

シンポジウム

≪コーディネーター≫
和泉 とみ代 氏(香川短期大学助教授)

 こんにちは。雨を心配していたが大丈夫でした。晴れて皆さんのパワーかなと思っています。香川短大の和泉です。大学で介護士の養成に携わっています。本日は道官さんなどに支援を受けながら進めていきます。

 今回のシンポジウムは当事者自らの力を発揮して、主人公となって検討し、地域福祉をよくすることを目的としています。その課題を検討するのにふさわしい方を招いています。お名前だけを紹介します。各発言のときに自己紹介していただきます。

 厚生労働省 障害保健福祉部企画課長村木厚子氏。在宅福祉サービスの全国的な動き、今後の方向性をお話いただきたいと思います。次が野村知司氏香川県健康福祉部 障害福祉課課長です。香川県の障害者福祉の現状と課題についてお話いただきたいと思います。自立生活センター高松副代表、道官敬子氏、日ごろ高松の自立生活センターの活動を中心に話してもらいます。身体障害者通所授産施設 善通寺希望の家 施設長田中慎治氏、知的障害者の地域生活支援の現状、今後どのようなサービスが必要か話をしてもらいます。中西正司氏、全国自立生活センター協議会1990年に障害構造改革の骨子が出されこれまで、行政主導から本人が主に移行し、今年度から新しい支援が始まりました。シンポジウムのはじめは支援制度がスタートして半年、施設から在宅への発言をお願いしたいと思います。


最初に田中さんから施設から在宅への課題を話してもらいます。資料の最初のページにあります。4ページです。