『当事者エンパワメントシンポジウム』

「今後の地域支援のあり方」

中西 正司

1.支援費をめぐる闘争
2.支援費予算の問題
3.介護保険への組み込みのおそれ


1.支援費をめぐる闘争
 身体障害者から始まったこの自立生活運動というのは、1986年から18年くらいかけて、いま全国の自立生活センター協議会に属しているだけで125、それ以外に支援費以降60数団体がスタートして、いまおよそ197、大体200ヶ所の当事者団体が全国で動いていると思われてよいかと思います。これは北海道から沖縄まで、全国、全都道府県で活動が展開されています。この支援費制度が4月から始まる中で、全国自立生活センター協議会が自薦ヘルパー推進協会などと協力しながら、全国で猛烈にセミナーを起こし、そして自立生活センターを立ち上げようという団体や個人を支援してきました。その結果全国どこにいてもいま当事者が提供するサービスを障害者が受けられるというふうになっています。4月から知的障害者のホームヘルプサービスも、中・軽度者にまで広がったということで、知的障害者の方もようやく地域で暮らせるようになりました。それまでは知的障害者の中・軽度者は地域で暮らせない、結局重度の知的障害者が親元でホームヘルプサービスを受けるのはいいけれども、一人暮しの知的障害者はだめだったという状況です。

 精神障害者については、まだ支援費制度に組み入れられてないわけですけれども、一応今ホームヘルプサービスは措置制度下で動いていくということでですね、モデル事業から本格事業にいま移行しようとしています。東京でもホームヘルプサービスも精神のほう、私の市でも来年からスタートするということで、なかなか遅れているわけですけれども、在宅のツールが大体出揃ったというところです。私がいま属している厚労省の支援費の検討委員会、これは1月の、国が介護保険レベルの4時間に切り下げようということから始まった戦いだったんですけれども、これは一応私たち1200名の障害者が、全障害者団体、全国団体である育成会とか、日身連とか、全障害者団体が参加した統一行動が35年ぶりに組まれて、それで厚労省も撤退したということでですね、サービスに上限をなくす運動は一応効をそうしたわけですけど、いまだにこの後をまだ引いているわけですね。

2.支援費予算の問題
 この根本原因として、やはり施設から在宅へと言いながら、施設10に対して在宅1という予算配分の問題があります。2000億円ある障害者予算のうち、ホームヘルプサービスは280億という比率なんですが、この280億が更に切り込まれようとしたというのが1月の現状。そしてまた今年度の予算についても結局支援費スタートしてからの利用時間が、予想以上に伸びたというような理由を上げてるわけですけれども、実質的に100億円の欠損ということでですね、予算を国の方でかき集めて100億を浮かして、今年度の予算を一応獲得したと。ですから3月31日まで1年間に使われるお金の欠損分を補てんしたので、一応市町村においては使っただけの補助金が国から2分の1入るという状況が作れたわけです。この状況作りも我々かなり厚労省と力を合わせて、マスコミ対策をやり、そして政党、公明党・自民党与党、ならびに民主党の協力を得てですね、全党一致でホームヘルパー予算、この支援費予算を獲得してもらったという経過があります。

 私たちのサービス自体、自立生活センターが提供するサービスですが、ホームヘルプサービスの全国年間60億のうち12億を自立生活センター、全国2万人の障害者が利用する自立生活センターで使われています。そういう意味では重度障害者のサービス、全国200ヶ所の自立生活センターと関連団体がですね、国の1割強をやるという意味では、国の政策に影響しないわけはないわけですね。国も我々と協議しないと政策を作れないような状況になっているわけです。全国エンパワメントネットワークシンポジウムでも、厚労省の部長や課長がほとんど出てきているわけです。

 今回の今年度予算の補てん部分とか、16年度予算、来年度は結局今年度を基礎ベースとして計算しているものですから、全額の603億をとったとしても更に欠損が出る予定なんですね。元々最初から足りない予算を組んでいるという問題では、かなり問題をはらんでます。それで厚労省も先週来時間単価の切りつめという案を提案をしてきた。これは県とそれから我々障害者団体も同じに示してきたんですけど、例えば介護保険の基準単価に合わせるということを基本ベースにおこうという話でした。そこでは身体介護部分や、家事援助分、これがスタート時間1.5時間から始まる。高齢者の介助は大体1時間以内に初発で終わるんですけれども、障害者の介助は自立生活センター協議会の調査では、2.5時間から3時間かけないと初発の時間は終わらないんですね。そう意味で基本的に介護保険サービスと障害者のサービスは種類が異なる、全く内容的に違う種類のものだという理解が、今回の厚労省提案を見ても、無かったのだという訳ですね。また移動介助部分についても、身体介助つき移動と言う単価の高い部分があるんですけど、これを単価の安い身体介助無し移動に統一したいという提案があって、これは自立生活センターのような重度障害者が中心に利用している所では、実質的には4割ぐらいの収入減になるんですね。介助時間が保証されていない地方においては大体移動時間を2時間もらったものを、4020円ぐらい入るわけですけれど、これを4倍に引き伸ばして1000円で4時間分使うということで、2時間分を4倍して8時間分使うようなことをやって、在宅の障害者が今まで生き延びてきたんですね。こういう状況についての理解が無かったために、単に単価を引き下げるということをやってしまうと、2時間が単価の安い時間で出るということは、結局2時間分しか使えないということですから、これは実質的に生活が崩壊するということで、この2点で7団体が共闘して、この問題も白紙撤回ということで、先週以来、月・火・水の3日間がその戦いだったんですけども、これも一応白紙撤回しました。そのあと今後どうやってこの問題を処理するのかって、まだ継続中の議論であるのですが、今日、予算概算要求、朝、国から提示されていますから、そのなかで支援費サービスが603億に達しているかどうか確認していただければ、満額回答をやっているということなので、その満額回答を踏まえて更に今後の上積みをしないと来年度が取れないという話なのね。

3.介護保険への組み込みのおそれ
 どうしてこんな際どい話になりつつあるのかというと、基本的に国は2000年の介護保険スタート時から、2005年には障害者を介護保険に入れようと考えていたわけだね。ですから2003年の時点で、介護保険に入れようという予定の2005年の前、2年前には制度改正しなきゃいけないものですから、国会審議を通して各市町村におろすのに2年かかりますから、それで2003年、今年の夏の予算編成から介護保険組み込みを決めていたわけですね。ですから2003年4月にスタートして8月には介護保険に入れるつもりだったから、予算編成する必要はなかったという意味では符合するわけなんですけど。我々としてはいま介護保険に組み込まれる事は、ある意味でサービス時間は最大ホームヘルプサービスで4時間という事ですから、それはとっても飲めない相談ということでですね、市町村のサービスを我々は市町村とタイアップして守っていこうと。まあ実質的に障害者のサービスを今日8時間だしているのを明日4時間にするということは、あなたは施設に帰れというか、地域で死ねということしか意味しないので。このようにホームヘルプ制度は義務的経費化しているわけですけども、国の費用の中では裁量的経費という義務化されていない項目に入っており、また施設は義務的経費という必ず2分の1補てんするという、財源で補てんされているので、ここのところに根本的な問題があるということですね。ですから施設を閉鎖してもそれが在宅にお金が回ってこないというのが、勘定科目が違うという問題があると。まあこの根本的な問題を正さないといけないんだということを検討委員会の中で話しているところです。ありがとうございました。