『当事者エンパワメントシンポジウム』

「宜野湾市の障害者福祉について」

伊波 洋一
(宜野湾市長)


1.沖縄の自立生活運動とのかかわり
2.宜野湾市の障害者福祉


  みなさんこんにちは。宜野湾市長の伊波洋一です。今日のこのシンポジウムの話がイルカの長位さんの方からありましたときに、喜んで参加したいということでお引き受けいたしました。1995年ですか、新門さんが筋ジストロフィー病棟から出られて自立生活に入られたときから、宜野湾でテベの会、あるいはウチナーヤという形でスタートした。そこからこの今日までの自立センターイルカの流れとなっているんだろうと思っています。その時にやはり大変厚い壁があったということは承知しております。さきほど長位さんからもありましたように、スタートの頃、1日2回2時間の、週に3回というホームヘルプの状況の中で、いかにして全身性障害者の自立生活が可能かということが、自らつきつけながらこれまでやってこられた、こういうふうに思います。

1.沖縄の自立生活運動とのかかわり
  その時の当事者の要求行動、あるいは重度の障害のまま自立生活に入る、あるいはまたサービスにおいて有償サービスをという形の、方法論といいますか、その後ピア・カウンセリングやあるいは自立生活プログラム、あるいはその体験室等をイルカの中で実践してこられているわけですが、私は、後ほどお話があると思いますけれども、中西さんが10月に出版されたこの『当事者主権』という本の1章2章の部分を読みまして、それがいかに方法論的に確立されたものであったかというのを感じました。つまり自ら生活を切り開いていくという、制度を作っていくというような取り組みとして全国的に展開されてきたことなんだった、ということをですね、当時大変ラジカルで、ある意味で冒険的な試みというふうに、多分周辺も含めて受けとめられたところがあったと思いますが、すでに実践をしている東京をはじめ各先進地に学びながら、沖縄の自立生活センターが今日このように全国的な連帯の中で、全国10の地域で開かれるこのようなシンポジウムの一つの場所に選ばれたということ、実施する事ができたということは、本当に今から10年あるいは7、8年前の状況を考えますと、大変時代が急速に変わってきたということを実感いたします。その流れが今年から始まった支援費制度という流れのほうに、それをいわゆるその方向性を作り出してきたのがこの間の全国自立生活センター協議会の大きな動きだったのではないか、このように思っています。

  私は実はその頃から今のイルカにつながる動きと関わってまいりましたけれど、この4月からは市長をやっております。それまで7年間沖縄県議会で県議会議員をしておりまして、どちらかといいますと私は基地問題を取り組んでいる市長としてはよく認知されておりますが、障害の問題では必ずしも報道等ございませんので、そんなに深い関わりがあるとは思ってくれないとは思いますが、この7年間文教厚生委員会の場で、この全身性障害者をはじめ、養護学校の取り組みも含めて行ってまいりました。その中でやはり私たちが、私自身が大事にしてまいりましたのは、当事者の声を直接行政にぶつけていただく、そういう事を県においては取り組んでまいったわけですが、実はこの3月、1月2月3月までは、いよいよ支援費制度あるいは在宅支援事業が市町村で始まるということで、どうにか宜野湾市でこのイルカの事業を実現をさせなきゃいけないなという話をしていた所でございましたが、結果的に私自身が市長になっていますので、責任が私のほうにまわってきたということになっています。障害者の自立に向けて、市行政としてはできるだけの支援を状況作りをしていきたいと、このように思っておりますが、行政はやはり財源あっての行政の実施でございますから、この財政をめぐる問題が今年の1月の大きな行動として全国の障害者のみなさんが取り組まれた事も承知をしております。また次年度、16年度に向けてもさまざまな取り組みが今行われていると、後ほど中西さんからお話があると思いますけれども、その事も含めて私たちは状況を見ながらしっかりとした歩みを進めていければと、このように思っているところであります。

2.宜野湾市の障害者福祉
  そこで市の状況ですけれども、今私の宜野湾市の担当部局のまとめた資料がございますが、宜野湾市の人口はいま外国人の登録も含めて8万8190人、今年3月末でございますけれども、その人口のうち、およそ障害児・障害者が3442人でございます。ですから市民26名のうち一人が障害を持っているということであります。その内訳は、身体障害者あるいは障害児が1920名、ついで精神障害者、公費通院者数ですけれども、1114名、それから知的障害者・障害児が408名でございます。このような状況の中で、私たちが国の制度等を使いながらさまざまな支援制度、あるいは作業所運営などをやっているわけでございますけれども、ここで特に今日問題となっております全身性障害者の取り組みについてお話をしますと、ホームヘルプ、在宅支援の取り組みとしては、本市は現在月186時間まで、毎日、1日6時間の支援を31日と見ているわけですけれど、行っているところでございます。実はこの時間は、進んでいるところからは遅れていると言えるでしょうけれども、県内の市町村の状況を見てみますと、1日当り3ないし4時間という状況が多いと思いますので、この間市としては当事者団体であります自立生活センターのこれまでのさまざまな要求活動、あるいは実践活動、そしてまたそのサポート体制を自ら作り出して、このサービス支援をセンター自身が行うことができるわけでございますから、そういう中で拡大をしてきたと、こういうふうに言うことができるのだろうと、このように考えております。

  私はやはり全身性障害者がいま取り組みをこのように、全国的に方法論的に確立をしながら取り組んでいる事が、国の制度そのものを変えていると、後ほど中西さんからお話があると思いますが、いわゆる施設から地域へという流れですね、それからホームヘルプ、在宅ヘルプを制度化の重点に置くと、こういう流れができて今日の市の行政も変わってると思いますが、それをどのようにこれから更に充実をさせていくのかっていうのがやはり課題だろうと思います。

 併せてまた、精神障害者の取り組みにつきましても、あるいは知的障害者、あるいは今年取り組むわけでございますけれども、障害者の学童ですね、そのような取り組みも含めて、実は実施主体、いわゆる当事者の、子供たちの場合はいわゆる保護者も含めての事でありますけれども、当事者の主体が確立されないとなかなか実施できないという状況がございます。ですから今回このように沖縄で自立生活センターのこのような集会が持たれますのは、やはりイルカがきちんと取り組みを行い、そしてそれなりにNPOとして、大きく成長した経過があります。同様に障害者、いわゆる精神の障害、あるいは他の障害も含めて制度化されている面はありますが、その制度を具体的に使っていく主体が確立されないことには、なかなかそれが実行に移されないという面がございます。私はやはりそういった事も市としてもサポートしながら取り組んでいければと、このように考えているところであります。

  本日はこのように当事者同士のですね、貴重な体験交流ができるということは、これを活かして各地域で極めてこれから実践的な試みが行われるのであろうとこの様に期待をしております。更にまた宜野湾市としましては、やはりこれは宜野湾市においてだけではなくて、各市町村において同様な事をやっていただく事が本当に極めて大事であるし、重要な事であるということを最後にお話をさせていただいて終わりたいと思います。ありがとうございました。