当事者エンパワメントシンポジウム広島 ●

2004.02.22


 昨年4月より支援費制度が施行され、障害者福祉においてもこれまでの行政措置としての福祉サービスから、障害者自身が権利としてサービスを選択し利用する仕組みとなった。また、障害者はサービスの消費者のみならず、多くの当事者団体が指定事業者となりサービスの供給主体ともなっている。
 このように『地域福祉』『エンパワメント(=当事者自身が力を得ること)』が今後の福祉施策の方向性として明確に示される一方で、依然として支援費制度における地域福祉の財政的、社会的な基盤は施設福祉にくらべて弱いことが課題となっている。
 このような現状を変えていくには、世論を喚起し社会的合意形を図っていくことが必要であり、そのためには、障害者・高齢者の分野を越えて”地域福祉”“当事者エンパワメント”に取り組む当事者、支援者、研究者、行政、サービス事業者のネットワークを形成することが不可欠である。そこで、日本全国でシンポジウムを開催し、”地域福祉”“当事者エンパワメント”のネットワークを組織し、地域福祉を推進する社会的な合意形成を図ることを目的とする。また、介護保険見直しのテーマの一つである障害者の介護保険組み込みに関しても、障害者の望ましい介助サービスのあり方について議論する。     (開催要項「目的」より)

当日の会場の様子
●シンポジスト ●

江草 安彦  (旭川荘)

塩田 幸雄  (厚労省障害保健福祉部長)

田原 範朗  (広島市社会局障害福祉課長)

中西 正司  (全国自立生活センター協議会)

(五十音順)
●コーディネーター ●

横須賀 俊司 (県立広島女子大学)

○ シンポジウム講演録 ○●○

あいさつ

・中西 正司 


前半 シンポジウム

・横須賀俊司 《コーディネーター》

シンポジスト各氏の発言

・田原 範朗  
・江草 安彦 
・塩田 幸雄 
・中西 正司   


後半 ディスカッション







あ い さ つ



中西 正司 氏(全国自立生活センター協議会)

 このシンポジウムは札幌、大阪、など地方をまわりながら今日は広島へやってきました。ここ広島では、「地域生活あり方検討会」座長の江草さんにもご参加いただいています。また今日は厚労省塩田障害福祉部長にも来ていただいていて,ホットな話題もやっていただきたいと思います。

このシンポジウムの目的ですが、施設から在宅へというこの基本的な流れをどのように作っていくか、そしてそのための社会的な支援をどうやって作っていくのか。当事者が地域で支援するシステムや当事者サイドに立った支援者達のネットワークを全国に作っていきたい。これには知的の地域支援ネットワークや高齢分野では、高齢者生活協同組合、それから私たち自立生活センターなど自立支援にたずさわる人達、それから施設やグループホームや在宅サービスの人達、そういう人達のネットワークを作り上げていきたいということが、このシンポジウムを開催している目的です。今日も皆さん大勢集まっていただきありがとうございます。全国自立生活センター協議会を代表してご挨拶させていただきました。





前 半

シ ン ポ ジ ウ ム


≪コーディネーター≫
横須賀 俊司 氏(広島県立女子大学)

こんにちは。ただいまご紹介いただきました県立広島女子大学の横須賀ともうします。今日はコーディネーターという大役を仰せつかっております。時間がこういう時はなくなってしまうものですから、うまい具合に時間を配分できるように努力したいと思います。よろしくお願い致します。

それではさっそくシンポジストの方々のご紹介をさせていただきたいと思います。みなさまから向かって右手にお座りの方から紹介をさせていただきたいと思います。一番右手にお座りの田原範朗さんです。細かい肩書き等に関しては自己紹介方々おっしゃっていただきます。それから次にお座りの江草安彦さん。それから次にお座りの塩田幸雄さん。それから中西正司さん。以上の方々からいろいろとご発言等いただいて、皆さんと実りあるものにしていきたいと思っています。

予定ですけれども、まず前半では基本的に10分ずつパネリストの方々からご発言をいただきます。前半は施設から在宅への支援についてということがテーマになっています。間に休憩をはさみまして、その休憩時間にお手元の質問用紙に質問をご記入いただきまして、スタッフにお渡しいただきたいと思います。そのお渡しいただいたものから後半の方に続けていきたいと思っております。後半もまたパネリストの方々10分ずつお話をいただきまして、最後に質問用紙をもとにして会場からの質疑応答をしていきたいと思います。

それでは、一番右手にお座りの田原さんからご発言いただきたいと思います。それではよろしくお願いします。




シ ン ポ ジ ス ト 各 氏 の 発 言


田原 範朗 氏(広島市社会局障害福祉課長)

 こんにちは。自己紹介ということですが、地元広島市の障害福祉課長の田原と申します。私が障害福祉課長になりまして、今年度で2年目でございます。14年度に障害福祉課長になった時に来年から支援費だということがありまして、1年間バタバタと支援費の準備をしまして、いろいろな方々のご意見を聞きながら広島市の制度を作り、今年度の4月から始まりました。うまくいくのだろうかと気をもんでおりましたけれども、何とか移行できたかなと思っております。今日はその辺のお話しをさせていただければと思っております。よろしくお願いします。

それでは資料の15ページをお開きください。先ほどの続きでございますけれど、今回のテーマ、障害者の地域での生活ということでございます。地域での生活を支えるということで15年度から始まった支援制度というのがあろうかと思います。広島市では15年4月からの支援費制度の導入にあたりまして、いろいろと障害者の団体の方々と意見交換を重ねまして、広島市で拡充した制度というのを15ページの1として、(1)から(4)まで書かせていただいております。簡単にご説明を致しますと、(1)ですが全身性障害者に対するサービスの利用上限の撤廃ということで、今回支援費で日常生活支援というくくりの居宅介護ができました。それを利用する場合につきまして、全身性障害者の単身または障害者のみの世帯ということで、見守りを含むサービス体制を24時間までというような上限撤廃を行いました。

それから(2)でございますけども、これは支援費自体がこうなったわけですが、移動介護というサービスができました。これは従前、ガイドヘルパーという言い方であったかと思います。これにつきましては18歳未満の児を対象者に加えました。広島市におきましては児の対象年令については、学齢事情とかの制限とかは設けてはおりません。

それから(3)の移動介護におけるサービス利用時間の拡大ということです。これは視覚障害者の方、車イスの障害者の方というのは、時間数が一月あたり80時間までということになっておりましたけども、知的障害者のガイドヘルパーが平成13年度から事業開始したということもございまして、24時間ということでございました。これを他の障害と併せて80時間に拡大したということを同時にやらさせていたただいております。

それから(4)でございます。ちょっと資料を私が間違っておりまして、ここで訂正させていただきます。(4)でショートステイと書いておりますが、これはグループホームの間違いでございますので、大変申し訳ないのですが、この場でちょっと訂正をさせていただきたいと思います。デイサービスとグループホームにつきましては、14年度まではホームヘルプサービスとの併用制限というのを広島市ではやっておりましたけれども、支援費になって併用可という扱いにしております。ただ介護力の有無等によりまして、併用時間の調整というのはやっております。

それから15ページの2の(1)円滑な実施を図るための関連施策ということで、ガイドヘルパー制度というものがございます。これは支援費では移動介護サービスという事なのですけども、これまで、他の都市も同じでしょうけども、ガイドヘルパーという制度がございました。これはボランティアを中心としました登録ヘルパーさんの制度でございます。支援費になった時にこの制度を残すかどうかということが問題になりましたけれども、広島市におきましてはアンケート等でみなさんのご意見を聞いたところ、3分の1ぐらいの方しか支援費の事業の方に移らないということでございましたので、このままこの制度を存続しないと障害者の方の外出支援の供給体制がなくなってしまうのではないか、ということがございました。そこで当面これは単市のガイドヘルパーの派遣という事と、それから支援費によります移動介護という併用で存続を致しております。月に80時間という時間数ですけれでも、両方併せて80時間まで使えます。ですから単市のガイドヘルパーを使われる方もありますし、両方使われる方、それから支援費を使われる方と言うこともOKということにしております。

それから16ページにいきまして(2)ですけれども、障害者生活支援事業、それまでの国の補助制度が15年度からなくなりまして、地方交付税に入れるような改正が行われましたけれど、広島市ではまだ身体障害者の方の障害者生活支援事業をやっておりませんでした。15年度から1ヶ所、なんとか予算化する事ができまして、それを開始したということ。それから地域療育等支援事業につきましては既に5ヶ所やっておりまして、15年度を含めて 6ヶ所と言う事。これらの拠点を利用してケア・マネージメントを充実していくということをやっております。

それから(3)ですけれども、これは指定事業者のホームヘルパーの研修事業の実施というような事をやったということでございます。ではどうなったかということですが、資料で18ページのほうを見ていただければと思います。14年度は支援費になる前の事ですけれども、月平均の利用時間数の比較をしております。これで見ていただきますと居宅介護というものが14年度の月平均が1万3700時間あまりでしたけれども、15年度になりまして2万5600時間ぐらいですね。1.87倍に増えております。これにつきましては元々ホームヘルプサービスにつきましても移動介護につきましても過去の伸び率は高い状態でした。ニーズはあったわけなのですけども支援費になって非常に増えたと言うのは、サービス提供事業者が増えたと言うのが一番大きな原因ではないかなと私の方は思っております。それ以外にも、支援費制度をやるということでそれがPRになったということ。それから市の先ほど説明した政策拡充の結果と言うのもあろうかと思いますけれども、サービス提供利用者が増えたということが一番のサービス提供量が増えた原因ではないかと思います。

それから隣の19ページでございます。これは4月の利用分と9月の利用分で支援費になった以後の伸びを書いております。これにつきましても日常生活支援は0.99ということになっておりますけれども、これは使われる方が全身性の障害者だけということでございますので、あまり増減がないのかなと思います。それ以外の身体介護、家事援助、移動介護につきましては1.3倍から、移動介護におきましては2倍というような伸びを示しております。これも潜在していたニーズというのがサービス提供の事業者が増えたということで非常に伸びている、というのが私の思いでございます。

あと現状については一応こういったところでございます。また後半で今後どうするかという事でまた話をさせていただくような時間があるということでございますけれども、一つは少し言いますと、事業者数が増えたという事は事実でございまして、17ページの方にちょっと戻っていただきますと、17ページの一番上の(2)というのがございます。実はここでもちょっと資料のミスがありまして、4月1日現在から10月1日現在まで居宅介護事業者数が2.28倍と言うように書いてありますけれども、これ申し訳ありませんが1.34倍ということで訂正していただければと思います。実は2.28と言うのは3月の31日からということでしたら2.28になるわけですね。支援費になる以前の状態から比べると2.28倍。ここに書いておりますように4月1日からということになりますと1.34倍ということで申し訳ございません。

提供体制がどんどん増えてきているということで、今後につきましてはまだまだ量も増やさなければいけないということもありますけれども、質の問題というのもあるのかと思います。今後指定事業者の量、それから質の向上というのがひとつのポイントと思っております。以上で広島市の支援費の制度の状況と、今までの状況ということについてお話を終わりたいと思います。




江草 安彦 氏(旭川荘理事長)


 江草安彦と申します。岡山県から参りました。岡山県では知的障害・身体障害の方々のサービス提供、そしてまた高齢者問題の様々な事業をやっております。そういったこともあるわけですけれども、先ほど中西さんからご紹介をいただき、42ページに書いてありますように、国レベルで障害者の地域生活支援のあり方に関する検討会というのが行われておりまして、2月まで14回開催されました。その検討会の座長を務めておりますので、そうした事で今日は出席をさせていただいておると思います。

では44ページを見てください。どういう方が検討会の委員であるかという事でございますけれども、私は左のページの上から4番目に旭川荘理事長という事で書いてあります。また右のページ45ページの一番上に、先ほどご挨拶がありました、今日の主催者であります中西正司さんが全国自立生活センター協議会代表という事でお入りになっていらっしゃいますが、お名前をざっとご覧いただきますと当事者ないし当事者関係団体、あるいは自治体の関係者、サービス提供者、学識経験者の方々で22人の方がお入りになっていらっしゃる。なお適宜、必要に応じましてご意見を頂戴するために、いろいろな方にご出席をいただいております。そして国内外の資料、国内外の動向というものを見守りながらあるべき姿を模索しておると、そういう検討会でございます。

そしてそれは全て、障害を持った方々のお一人お一人が、かけがいのないたった1回限りの人生を送っているわけでありますから、その人生が豊であるように、人格はその尊厳が守られるように、こういう事を願ってすべての社会制度は作られ運用されているわけです。それを在宅生活ということに絞りまして、どのようにしたら一番実現しやすいのかということを検討しているわけであります。

中西さんがお書きになった本でこんなのがあります。『当事者主権』という本がありまして、これは岩波新書でございます。この中に当事者が地域を変えるという部分がございます。これは当事者自身が力をつけて、今日も力をつける集まりのひとつでありますが、ものの考え方を、ものの見方を変えようではないかと。サービスを受けるのではなく、必要なサービスを獲得するというように行こうじゃないかという事が中西さんのご見解でありますが、こうした事などもそこで議論されているという事でございます。

いま広島の課長からお話がありましたが、介護保険制度は2000年にできました。ですから今3年たって4年目にはいっているわけであります。それから支援費制度は2003年にできました。3年遅れですね。ようやくこれは動き始めたというところでございますから、何事も動き始めは、機械でもそうでありますが、慣らし運転をするためにかなり時間と努力が要ります。多少のきしみも出るだろうし、予想しないところにオイルが必要であったり、という事もあるだろうと。そうした事をお互いの信頼と、お互いの譲り合いによって意見をまとめて、より良いものを作っていこうではないかと、こういうことであります。

ではその検討会がどのように行われたかという事についてでありますが、先ほどの資料にもう1回帰ってみたいと思います。これは46ページをご覧いただきたいと思います。46ページから47ページにかけまして14回行われたその回ごとのタイトルを書いてあります。そこでは関係者からのヒアリングという事で、知的障害の方ご本人、重症心身障害の関係の方、これはご家族の団体であります。また自閉症関係の方、これもご家族の団体から来ていただきました。第6回では、アメリカ、イギリス、スゥエーデン、ドイツ、外国の様子も勉強しようではないかということであったわけです。

そういう中でどうしても支援費制度というものについて、仕組みにもいくらか問題があるのだけれども、一番大きいのはサービスに制限がどこからくるのかというと財政的理由ではないかという事から、いったいどの程度利用されているのか、どの部分に問題があるのかという事を明らかにしなければいけないという事で、実は厚生労働省障害保健福祉部から49ページ以後に細かい数字を秋ぐらいから6ヶ月の経験を踏まえて、全国から集めていただいたものをご提供いただきました。49ページには居宅生活支援サービスの利用状況の調査の結果というようなものがでております。

それから52ページの居宅支援サービス利用状況の調査など。この事については後ほど、あるいは塩田部長からのお話もあるかもしれないし、またみなさんじっくりと後でごらんいただきまして、思いを新たにしていただければありがたいと思うのでございます。

そのような事を受けて16回が済んだわけでありますが、もっと各論的な話をしようというので48ページをご覧いただきますと、全身性障害者と長時間介護が必要な者に関する支援のあり方、視覚障害聴覚障害者に関する支援のあり方、知的障害児・者に関する支援のあり方、という3つのグループを分けました。2月の初めから3月の終わりまでにかけて、それぞれのグループは作業班を編成しまして、3回にわたって検討を続けている最中でございます。いずれこれがまとまりましたならば4月以降において、皆で集まってその議論の問題点を明らかにしていきたい。それを中心に4月から始まる新しい年には、予算の要求もありますし、それについての政府としての見解というものをある程度まとめていく。更なる次の年への展望でありますが、少なくとも夏くらいまでには今やってきた事の集約をしながら、新しい展開を目指そうという事であった。非常に建設的に、前向きに、しかもスピードを上げて検討が続けられているという事でございます。

もとより当事者である方々、及び私ども当事者と共に歩いているものにとりましては、不充分であると思う事がないわけではありませんけれども、これはやはり国民的課題であります。一部の人の考え方だけでまとまるわけではない。全国民がこれを理解してくれなければいけない、そして協力してくれなければいけない。いわゆるパラダイム、仕組みの構成を十分考えなければいけない。そうすると相当スピードを上げているつもりでもやはり多少時間がかかっている部分がないわけではありません。これを深く心に刻みながらいま努力をしておるというのが私どもの現在の姿であります。またこれに対して私は岡山という土地でどんな事をいま考え、どんな事をやろうとしているのかという事は後段でお話を申し上げたいと思います。




塩田 幸雄 氏(厚生労働省障害保健福祉部長)

 厚生労働省の障害保健福祉部長をしております塩田といいます。今日はお招きをいただきましてありがとうございます。私が障害者行政に携わるのは2回目です。国際障害者年の後ですけれども、昭和の58、59年、当時の社会局厚生課、いまでいうと障害保健福祉部障害福祉課の高齢担当の補佐をしたことがございます。その時の仕事は障害基礎年金制度を作るということと、身体障害者福祉法の改正ということをしました。障害者基本法の中に障害者は社会・経済・文化のあらゆる分野で参加の機会の保障を与えられるものとするという趣旨の規定があるとおもいますが、これもその時の改正で盛り込む事ができたということで、いろいろな思い出を障害者行政には持っております。

ここ数年間は環境省のほうに行って循環型社会を作るという、いろいろな制度作りをしておりまして、このまま環境省で仕事を終えるのかなと思っておりましたが、障害者の仕事しろという事で、去年の8月29日に久しぶりに厚生労働省に帰ってきたという事でございます。ちょうど支援費制度が始まったばかりです。全体としてはスムーズな施行だったと思いますが、いろいろな問題が明らかになってきて、いろいろな問題を解決しなければいけないという大きな役割を担当する事になりました。非常に責任が重いなと思っています。

この支援費のいろいろな問題点を変えるという仕事は、たぶん障害者福祉行政全体をこれからどんな方向に持っていくのかという仕事でもあると思っています。課題は山積しておりますが、さっき江草先生もおっしゃったようにいろいろな所で皆と議論して、良い方向に持っていきたいと思っています。中西さんも毎週課長達と議論しているという事でございます。

支援費制度をどう見るかという事について私の考えを言いたいと思いますが、支援費制度の障害者の自立とか自己決定という理念、この理念は本当に素晴らしいものだと思っております。広島の課長さんから紹介があったようにサービスも伸びていますし、それは支援費制度の意義が広がっていくということだと思います。個人的な事になりますが私の甥っ子が京都に住んでいて25才ぐらいで知的障害があるのですが、母親、私の姉ですね、正月に会いましたら、うちの息子が今年初めて一人で初詣に行ったと。その時にガイドヘルプで行ったと。京都に住んでいるのだけれどもヘルパーさんは兵庫県からやってきたとか、この話を聞いて支援費制度が本当に障害者の方の社会参加という意味で大きな意味を持っているのだなということを実感しました。

そういう意味で支援費制度は非常に優れた制度だと思いますが、一方で大きな問題点を持っていまして、それは税制的な裏づけが非常に不充分だという事であります。例えてみると自動車は非常にいい自動車なのですが、その自動車に見合ったエンジンの部分が非常に弱い、パワー不足であるという事であります。このままの制度ではこの自動車はいずれエンストを起こす。もしかしたら今年も既におこしていたのかもしれませんが、幸いな事に国ベースで大体100億円くらいのお金が足りないということが分りまして、厚生労働省の中のいろいろなところから協力していただいてなんとか確保できました。これも国と自治体の基準ベースで100億円足りないという話ですから、自治体が皆さん方に提供しているサービスとの関係ではもっと足りないということであります。

ご存知のように国も自治体も非常に財政が厳しい中で、15年度の在宅の支援費が、ホームヘルプサービスでいうと3割増くらいの予算を確保していたのですが、実際は6割増くらいになったという事です。この非常にお金が無いときに、この支援費制度をきちんと運用するための財源をどう確保するかということが、これは本当に深刻な話になっています。これは今年度だけではなくて、来年度、再来年度とどんどんお金がないということが、広島の方もそうだとおもいますが、私たちにつきつけられた課題でありまして、支援費の理念を実現するための財源をどう確保するかという事が目の前の課題になっております。

なぜそうなっているかというと、法律で在宅のサービスについては補助する事ができるという規定になっていまして、これが負担しなけばならないとか、いわゆる義務費とかいう性格の制度であればずいぶん状況は変わったと思うのですが、残念ながら支援費制度の在宅サービスの部分については裁量的経費という事で制度的に非常に不備があるという事でございました。じゃあこの法律のところを改正すればいいじゃないかという議論があるのですが、これが残念ながら難しいという事であります。それはなぜかというと、国と地方公共団体の関係については地方分権とか、あるいは国から地方自治体の補助金は無くそうというのが世の中の流れになっているからです。これは自民党も民主党もそういう国と自治体の関係について、三位一体とかよく新聞とか出ていると思いますが、権限も財源も国から地方へという流れの中で、この支援費の在宅の国庫補助規定を義務費にするということは残念ながらほとんど可能性はないということが言えると思います。

じゃあそれができないとすると、どのようにして在宅の支援費の財源を確保するかということになるのですが、そこで私自身がひとつヒントになるなと思うのが、高齢者の介護保険制度という事であります。高齢者の介護保険制度には非常に優れたところがございます。ひとつは高齢者の介護が必要になるということを、これは他人の問題ではなくて一人一人自分の問題だという制度になっていまして、高齢者の介護のためのお金をいろいろな人が持ち寄るという仕組みになっています。これは国とか自治体だけではなくて、本人とか企業とか、制度的には医療保険からお金を出すということになっているのですが、いろいろな関係の人が、税金だけじゃなくてお金を持ち寄って高齢者の介護を支えようという仕組みになっています。

それからもうひとつ優れているのは、市町村がサービスの提供に関する計画を作るということになっていまして、市町村が責任を持って高齢者介護についてのサービスを提供するというしかけが制度的にできあがっています。

もうひとつはこれが最大かもしれませんが、支援費の在宅の補助金が裁量的経費になっているのに対して、高齢者の介護保険はいわゆる義務費ということになっていまして、提供したサービスについて必要なお金は国や地方自治体がきちんと負担するということが法律上仕組まれています。

このように高齢者の介護保険制度には幾つかの優れた点があります。そういう高齢者の介護保険制度の持つ、優れた仕組みのようなものを支援費制度の中に導入できないかということがいまの私達の問題意識です。たぶん皆さんが心配されるのは高齢者の介護と障害者の介護は明らかに違うじゃないかということですが、これはおっしゃる通りでありまして、あるいは今の高齢者の介護保険と同じ仕組みにすればサービスの上限があるとか、あるいは本人の負担があるとか、家族の認定が全然違うじゃないかと、いろいろな違いがあるということでそういう問題をどうクリアするかという事が非常に難しいテーマである、というのは事実だと思います。こういう問題はこれから議論して乗り越えていかなければいけない。

それからもうひとつは仮に高齢者の介護保険のような仕組みを支援費に導入した時の、その新しい仕組みですべてのサービスを、いわゆる時間制限の問題です。介護保険のような仕組みでは上限があるわけですが、全てのサービスをその制度で提供できない可能性もあるわけでして、それについてはこれから議論しないといけません。仮に介護保険で必要なサービスをすべて提供する仕組みを作れないのであれば、その介護保険を補完するような仕組みですね、それは今の支援費のような物を上乗せするということになるかもしれませんが、幾つかいろんな制度設計はできると思いますので、そのあたりはこれからよく議論して、皆さんがご心配にならないような仕組み作りをしていきたいと思っています。

それと介護保険のような仕組みを導入する上で、障害者の団体とか関係の方の理解を得ることが当然なのですが、一方でこの制度が作られますと市町村の責任がすごく重くなりますので、市長村長さんたちがこういう仕組みを導入する事に賛成してくれるかどうかという問題もあります。それから保険料の半分は企業が負担するということになっていますので、保険料の半分を負担してくれる企業とか医療保険の方が理解してくれるかという問題があります。いずれにしても今の支援費制度は財源確保が非常に厳しいものですから、なんとか新しいエンジンをつけるという作業をこれから議論していきたいと思っています。その際には実際のサービスの提供が市町村という事が中心になりますが、知的・身体だけじゃなくて当然精神障害の方々、今は支援費の対象になっていませんが、そういう方々も含めて高齢者、知的障害者、精神障害者、身体障害者、ユニバーサルなサービスが提供できるようなことを考えていかねばならないと思っています。

それから介護保険のような仕組みだけで障害者の抱えるいろいろな問題がすべて解決するわけではありませんから、就労の仕組みとか住まいを確保するとかいろんな施策を併せていろいろ考えていかなければならないということであります。


中西氏

 塩田さんのほうから介護保険がらみの話も出たので、24ページを開けていただいて、介護保険と支援費制度の比較という表をつくってありますのでこれをちょっと見てください。ざっと見てみると、自立の理念が違う。理念が違うというのは一番大きいわけです。ADLレベルでの自立をすること、介護予防をして自立して介助を使わなくなる事が自立だという介護保険に対して、支援費制度は自己選択・自己決定による成長の過程で、失敗しながら経験をし学んでいく自立という見方です。また社会参加の部分ではデイケアに通う事も自立と介護保険には入っているけれども、障害の場合は経験を踏む事が自立です。それから利用者負担の問題では利用料の1割負担がある。支援費は応能負担で利用者負担の限度額が決まっていて、障害者のうち23%くらいのしか利用料を支払っていません。障害者はそれだけ所得が低いということです。介護保険ではアセスメントの方向が79項目のコンピューター審査による決定に対して、支援費は8項目の勘案事項をもとに市町村が決定する。支給量の上限が介護保険では35万であるのに対して、支援費では上限がない。介護保険ではケアプランが義務付けられている事、限度額内での給付管理というのが行われるのに対して、支援費では手法として活用される、それからエンパワメントやセルフマネジドケアも了承されるという違いがある。介護保険においては、ヘルパー3級以上2級が基本であるのに対して、支援費制度では日常生活支援という20時間で資格がとれるという研修過程がある。

支援費制度がどのようなものかというと、この下に書いてあるように当事者のニーズによってサービスが支給され、ケアプランが義務付けられず、一ヶ月の支給量の中で本人がケア・マネジメントできる。支給量の決定権は市町村が持ち、当事者の意見が優先される制度というようにまとめられています。

介護保険に入るということは支援費制度がなくなるということで、社会福祉法や、知的障害者福祉法、身体障害者福祉法の中の支援費に関わる項目がなくなるということです。

こういうような支援費と介護保険との対比があるわけですけれども、高齢者へのサービスと利用の実態としてどう違うかというのは、38ページを見ていただくとわかりやすいかと思います。障害者の方は、社会参加の経験について宿泊旅行や映画、お芝居、買物など非常に高い得点を取っています。また今後の希望については趣味を楽しむとか、学校や行事、ボランティア活動の項目において非常に高い希望が出ています。

下のグラフが高齢の方で、社会参加の希望については、買い物を希望する(約40%)と同じくらいの割合で「特に何も望まない」と答えています。これは、介護保険においてはそのような社会参加サービスがないといことも影響しているのですけれでも、人生長い間暮らしてきた高齢者と障害者ではだいぶ差があるということだと思います。右側のグラフですが、これは障害者と高齢者の利用料の負担についてです。障害者のうち19%だけが本人が利用料を負担しています。下のグラフは高齢者で、60%が介護保険で利用料を負担しています。負担無しが上の障害者では77%、下の高齢者で7%。家族が負担しているのも高齢では32%ということです。利用料の負担を感じている割合についても、障害者は66.3%が感じるということです。高齢者の93%が利用料を払っていて、そのうちの48%が利用料を負担に感じているということです。

次の40ページには全国の自立生活センターと、それに類似する当事者サービスの提供団体の一覧があります。これで197ヶ所ですか、今はもっと増えているのですけれども、このような形で全都道府県に配備されて、当事者主体のサービスが受けられるようになっているわけです。

このような意味で、高齢と障害の違いというのはかなり顕著にあるのですれども、こういう形のものをどのようにやってどうしていくのか、具体的な話がなかなか厚労省からも聞けない。徐々にこの頃出してくださってはいるのですけれども、我々としてはこのような対比した不安が一個一個なくなっていくことをいま望んでいるような状況だと思います。

皆さんの中でも支援費になってかなりサービスが伸びたと、支援費制度、財源の問題はともかくとして、非常に喜ばれている。1.4倍から2.5倍くらいのサービスの伸びを示している。今まで2、30%の市町村は全く障害のサービスをやっていなかったところが、支援費になって全市町村実施をしてきている。知的障害者については40%くらいのサービスの伸びを示しているというようなことを考えると、今スタートしたばかりの支援費制度、もうちょっと伸ばしてどのような形に育っていくのかという事を見守りたい気がするわけです。状況がいろいろあると塩田さんも今日は話してくださっているわけですけれども、今日はその辺りの事も含めて後半の部分で話し合っていきたいと思います。

特に3障害について、これは身体の方はかなり進んできたけれども、知的については支援費制度で本当にスタートについたばかりです。ほとんどの自立生活センターでも知的のサービスというのは去年スタートしたに等しいのですね。ですから知的障害者の利用者達が使い始めたのも今年になって初めてです。他人に介助してもらったことが初めてで、使い方がわからないという人たちが、おずおずと今使い始めているという状況だとおもいます。

これを精神にまで拡大して考えた時に、精神の人たちはもっと家の中に他人が入ってくるのを不安に感じます。他人とのコミュニケーションがとっても難しい方ですから、一対一で閉じ込められた環境の中で掃除・洗濯をやってもらうというのは、僕のセンターだと今10人いる内でホームヘルパーを使いたいというのは1人だけなのですね。みんな本当は使わなければいけないような人たちなのですけれど、その気苦労を考えると使いたくないという感じですね。この1人の使いたいという人はどういう事かというと、夫婦とも精神障害で、奥さんの方が炊事などをするには身体障害も併発されているので難しいと。家事援助を旦那さんが精神障害を持ちながらやるので、疲れて精神障害を再発しそうだということで、どうしてもヘルパーに入ってほしいという感じです。そのような切羽詰った状況でなければ、自分の事であれば我慢してしまう。でも奥さんの事を気遣うから、やっぱりヘルパーさんに我慢しても入ってもらわなくては、という感じだと思います。なかなか広がるといってもすぐに利用が広がるとはとても思えないのが精神・知的の状況です。それを当事者サイドで支援しながら、何とか利用できるように彼らを支えていく。ホームヘルパー利用のためのさらに精神的サポート、というような事が今必要になっているのかと思います。


横須賀氏

 それぞれのシンポジストの方々からは、それぞれ貴重なご報告をいただいたかと思います。私が前半のまとめをということですけれども、それぞれの方々がおっしゃってくださった事をまとめるというようなことはなかなか難しい事だなと。支援費制度に関しての今の最大の焦点は、やはりシンポジストの方に触れていただきましたけれども、介護保険とどうなるのかというようなところにあるかと思います。介護保険のいい面、悪い面、支援費制度のいい面、悪い面、それぞれあるわけですから、それらをつき合わせて江草さんが座長をされておられる検討会で主に話合いをなされるわけですけれども、それを後押しするような形でこういうような場を持って、外からも、世論といいますか意見といいますかそういうものを作り上げて、大きな流れのようなものを障害者として、あるいは障害者の家族として、あるいは障害者に関わる者として、支援費制度のこれからというものはこういうのがいいんじゃないか、というような大きな流れを作っていけるように、私は個人的には思っております。そのための1つとして、このような場が設定されているわけですから、皆さんにご質問等たくさんしていただいて、シンポジストの方々と意見交換をして、さらに障害者の日常生活にとっていいような制度、施策を作っていけるように、皆さんも参加・参画をしていただく1人として一緒にがんばっていきたいなとおもっております。









後 半

デ ィ ス カ ッ シ ョ ン



塩田氏


 支援費制度の目指した理念、自己選択とか自己決定という事は、大変意義ある事だと思っています。その支援費制度の理念を本当に実現するというか、将来にわたってこれをどう実現するかという事が議論のポイントで、そのために介護保険の考え方が使えるかどうかということで議論をしているということです。ですから中西さんがご説明されたように、今の高齢者の介護保険と支援費制度、理念とかいろいろな違いがあるのは当然でして、障害者の制度にふさわしいものに高齢者の介護保険の考え方をすり合わせていくということにつきます。それでいま支援費制度でいろいろなサービスが提供されているわけですが、このサービスを低下させるというようなことはないと考えて下さい。仮に新しい制度に合意ができていくようになったとしても、いまの支援費制度で目指したものが後退するようなことはありません。

それから、高齢者にはない、例えば私が申し上げた初詣の話とか、社会参加していく上で高齢者と違ったサービスのニーズがあるわけですから、こういうものは仮に移るにしても新しい制度に当然残さなければいけないと思います。それから新しい制度で例えばホームヘルプの利用時間に限度があるとすれば、それだけで地域生活ができない場合には、それは介護保険を補完するような仕組みを作っていかなければいけないという事です。これからいろいろな課題があるのですが、これは時間をかけてみんなと意見交換をしながら、どういう設計図にするかという事を考えていくということです。

それから去年の4月に始まったばかりなのにすぐに見直しだということで、こんなのはおかしいではないか、といわれるのは当然だと思います。最初からわかっていたのではないか、見通しが甘いとか、その批判を私達は甘んじて受けないといけないと思います。なぜ移行の検討を急いでいるかというのは、ひとつはやはり財政的に財源確保が切迫していますので、1年でも2年でも早く財源を確保できる仕組みを導入したいということです。

それと高齢者の介護保険制度の見直しというのは5年に1回ぐらいしかないんですよね。今年1年かけて議論をして、来年の通常国会に改正の法律を出すということでありまして、このチャンスを逃すと介護保険のような財源をきちんと義務費として使える制度に乗遅れてしまうのですね。ですから拙速といわれれば拙速なのですが、要するに数年に一度しかないチャンスを逃さないためには、僕はむしろ拙速でなればいけない部分があるのではないかと思っています。それからこのチャンスを逃すと数年、下手すれば5年、10年先になってしまいまして、その間いまの支援費制度で本当に財源がきちんと確保できるのかという事を真剣に考えたいと思っています。

仮に新しい制度に移行するとしても、法律が出るのは来年の通常国会ですし、それからさらに何年間かけて介護認定のあり方とかいろいろな問題が一杯ありますから、それもまた数年かけてシステムを作るということになりますので、新しい仕組みに移行するのもかなりまだまだ先の話で、支援費の仕組みとかサービスの提供はこれからも数年は同じ仕組みで続くということです。いずれにしてもいろんな不安とか問題点がありますので、それはいろいろな場を通じて議論をしていきたいと思っています。

資料の12ページを見てください。12、13ページは公式の検討会でありまして、一番上にありますのは江草先生が座長をしていただいている障害者の地域支援のあり方に関する検討会です。中西さんもメンバーに入っています。この検討会だけではなくて、その下に精神障害者の地域生活支援のあり方に関する検討会もあるとお伺いしております。それから13ページに、来月からは社会保障審議会障害者部会というような検討の場もスタートさせる事にしています。江草先生が座長である検討会では、地域生活の支援というか、サービスの提供システムとかという課題が中心になるのですが、社会保障支援委員会障害者部会では、その問題だけではなくて就労の話とか、あるいは住まいの話とか、あるいは高機能自閉症のようないま法律の対象になっていない障害や、いま谷間になっているような方々の制度のようなことも議論していきたいと思っています。

これが公式の議論の場でありまして、それ以外に中西さん達と週1回議論というか勉強もしていますし、そういうチャンネルもきちんとやりたいと思っています。これからいろいろな新しい制度に移行するにしてもメリットとデメリットがありますし、そういうものを乗り越えていけるというか、みんなの合意が得られるかどうかという事なのですが、いろいろと勉強していきたいと思っております。

いろいろと難しい課題はあるのですが、今度は本当にチャンスというか、障害者に対するいろいろな施策をこれからは市町村が中心になってやっていく必要があると思うのです。そういう課題に取り組む事によって、地域社会のなかでいろいろな障害を持った人とか高齢者が普通に生活をできるというものをつくっていかないといけないと思っています。たぶん介護保険のような考え方を入れるかどうかということが、そのような議論につながっていくのではないかと思っております。

幾つかご質問をいただいておりますが、介護保険と支援費制度、高齢者と障害者のニーズがあまりにも違わないかというご指摘があります。これはその通りだと思いますし、障害者のニーズとか特性に応じた制度をどう作っていくかという事だろうと思います。

それから新しい制度を作るためにも企業の理解とか、市町村の理解が必要だろうと思います。こういう議論を皆さんとするだけじゃなく、これから経済界の人達とも議論をして障害問題への理解を深めていく必要があると思っています。特に企業戦士といわれる方が職場で仕事をしすぎて精神的な心の病になるようなこともありますけれども、こういう企業戦士の人の心の病のような問題について当然企業がある程度責任を持つべきだと思います。そして新しい制度に移行するときに企業が一定の負担をするということは、僕は当然の事だろうと思っていますので、そういう経済界の人たちへの説得もこれからして期待と思っています。


横須賀氏


 紙には書かれなかったけれども、塩田さんには是非ともお聞きしたいという方おられればどなたか。



会場1


 介護保険と支援費制度がありましたら、生活保護でない限り介護保険が優先といわれています。支援費の方と介護保険の方では全然施設も違います。問題は65にならなくても重度疾病になった場合、介護保険が優先されるのです。非常に困っています。何とかそれを支援費か介護保険か選べるように変えてはいただけないかどうか塩田さんにぜひおうかがいしたいです。



塩田氏

 障害者の方が地域で暮らしていけるようにするためには、やはり市町村の役割が本当に大きいと思います。高齢者福祉はどこの市町村でも相当な水準になっていると思いますが、残念ながらご指摘のあったように障害者福祉では市町村によって本当にばらつきがあるのが現実です。どこの市町村にいっても一定水準以上のサービス、どこにいっても同じようなサービスが受けられるような社会に1日でも早くしたいと思っております。そのための国の役割というのが何かというと、市町村が提供したサービスについてちゃんとした財政的な支援をするとか、国はきちんとやるべき事はやらなくて行けないと思っています。そういう市町村がきちんと障害者の方々のサービスを提供する仕組みとか、国がちゃんと財政をターンする仕組みというのをどう作るかというので、いまいろいろのところと議論しながら頭を悩ましているところです。

介護保険の場合には、やはりサービスの制限があるわけですから、今の高齢者の介護保険のサービスだけでは障害者の方が地域で生活するには不充分だと思います。ですから介護保険だけですべての対応ができないのであれば、それを補完するような仕組みというのをきちんと作っていくのが国の責任だと思っています。

いろいろな課題がありますけれども、これまで確かに支援費制度の見通しが甘かったとか、いろいろな批判はその通りだと思いますけれども、私たちも障害者の方が地域で生活できる仕組み、自治体の人が一生懸命やれるのをどう応援できるのかとか、真剣に考えていきたいと思っています。なかなか期待に答えられない部分もあるかもしれませんけれども、それは全力投球で頑張りたいと思っていますので、いろいろなご意見を寄せていただければと思います。



横須賀

 介護保険と支援費の選択性はどうかという最後の方の質問・ご意見・提案をいただいたのですが、その辺りの事はいかがですか。最後の方が、特定疾患とか65歳になったら介護保険の適用になるのではなくて、その時当事者が私は介護保険でいきます、支援費で行きますというのはどうか、という提案をいただきましたが、その辺りはいかがですか。



田原

 私の方からお答えができるかどうかですけれども、現在介護保険の方が優先になっているというのは、そういう決まりになっていまして、市町村の方がどうこうするという話にはなっておりません。ですから介護保険を優先せざるを得ないというのが現状であります。ただご意見の優先選択というのと、もうひとつは支援費の方を優先するという考え方もあろうかと思うのですけれども、これは塩田部長さんの言われましたように、今後介護保険との絡みの議論の中で今日の意見を踏まえてやっていただけるのではないかと思います。



横須賀

 ちょっともやもやが残った感じのお答えをいただきましたが。現行ではそうなってはいるけれども、検討をする中でそういう事考えていきたいというように理解させていただいていいということでしょうか。

先ほども申しあげたように飛行機の時間がございますので、申し訳ありませんが塩田さんはここで中途退席とさせていただきたいと思います。塩田さんどうもありがとうございました。引き続いて田原さんお願いします。



田原

 いま支援費制度を使っていただいた方が65歳になると、介護保険の場合介護認定を受けるようになっています。介護保険制度のホームヘルプサービスを使って、なおかつ足りない場合は上乗せとして支援費制度のホームヘルプを使える事ができるようになっています。ただ実際の問題は、介護保険に移った時に利用料が10%かかるという事が問題でございます。ここのところは先ほど塩田部長さんに振るような回答をしましたけれども、調べてみますと今の支援費の法律の流れの中で介護保険優先ということになっておりますので、ここの部分は市町村判断で今できるところではないのですね。ただ今後の見直しの時には少しそこの辺も考えていただきたいな、ということを思います。

それから「いろいろなサービスを利用したいにもどんなサービスがどこにあるか、私にどんなサービスが必要かなどを知るために介護保健のケアマネにあたるものを自分でするには限度があるようです。自立生活センターは遠すぎるし、支援費制度にもケアマネが必要なのではないでしょうか」というご質問でございます。広島市としても利用者の方への説明する窓口というのは支援費の中でも非常に重要だと思っております。前半の部でも少し言いましたけれども、相談窓口ということで今年度障害者生活支援事業を1ヶ所なんとか作ったのわけなのですけれども、そういう障害者生活支援センターとか地域療育支援センター、各区役所ですね、あと各障害者の施設の中にもいろいろ相談の窓口を持っておられる方があると思いますし、もっというと各事業所の方も、いろいろと相談ができるような能力をつけていただければ、と思っております。

支援費制度にもケアマネが必要なのではないかというご提案がございますけれども、こういう意見も確かに一面正しいかなと思います。ただ支援費制度については介護保険とは別で、権利としての自己決定というようなスタートをしておりますのでいまのような形になったのかなと思います。この辺も今後、介護保険になるかどうかわかりませんが、その話の中で意見としていただく必要があるのだろうと思います。

それから次の質問ですが「今の移動介護の時間を50時間から80時間に増やして欲しい。なぜ全国で統一してないのか」というものです。移動介護の時間というのは全国の市町村でまちまちでございます。これは支給決定量ということでございますので、広島市では前半で言いましたように、月に80時間という設定をしております。なぜ全国で統一していないのかという事ですれけども、これははっきりいうと財源の話であろうと思います。国の財源がいろいろ塩田さんの方からありましたけれども、広島市もそうですけれど、他の市町村も財源といいますか、一般財源の中で支援費をこなしていく必要があります。そうするとその中で各市町村ごとに振り分けるわけですけれども、手厚くする部分とそうでない部分の色分けの中で移動介護の時間というのは各市町村でまちまちとなっているのが実態だと思います。

それから次に「車の事と出張の事での質問です。車を使うと運転ヘルパーがつかなければいけないのに、2人の支援費が出ないのはどうしてか。出張については12時間しか支援費が出ない。それだとあっという間に時間が過ぎる。出張の場合は2、3日あるのになんで12時間しか出ないのか」という質問でございます。まず車の事ですけれども、これは支援費というのが今の制度では1人の利用者の方が何時間という事でその時間分出るような形でやっていると思います。運転とヘルパーの関係ですけれども、いま介護の業務というのは車に乗せるまでという事で、車で運転して移動している間は介護にあたらないというようなことになっております。そういったようなことだと思います。それから12時間という時間については移動介護の時間が全国で市町村まちまちだということと一緒なんですけれども、各市町村の財源の事情で変わっているという事しかお答えできないのです。



横須賀


 それでは田原さんに、支援費制度で3障害の地域移行を進めるために市として今後取り組んでいく施策について。それから当事者団体との連携、あるいは厚生労働省に望む事などに関してご発言いただければと思います。


田原氏

 
それでは資料の方の16ページを開いてください。中ほどに「3.15年度当初予算」というのがございます。支援費の関連事業分、広島市の予算ですけれども、49億2675万円あまりが15年度の当初予算でございました。この中には居宅生活支援と施設訓練の二つに分けておりまして、居宅生活のほうがここに書いてありますように中が分れております。実は議会が始まりまして、16年度の当初予算をもう議会の方に送っております。成立するのが3月末という事なのですけれども、若干ご紹介しますと、広島市の一般会計が非常に厳しいこともあって、マイナス2.6%ということになっています。これはかなり低い規模らしいです。

支援費の方はどうかといいますと、16年度は58億117万円ほど予算を組んでおります。これは対前年で17.7%増やしているところです。そのうち居宅生活支援のほうですが、これがいくらかといいますと、16億8365万円という事で、居宅の方が27.9%の増。それに対して施設のほうですね、施設訓練等については41億1752万円という事で14%の増ということになっております。これは15年度が実は11ヵ月分でよかったという事情もあり自然に増える部分もあるのですが、それ以外にもかなり伸びを見ながら予算を組んでいるところでございます。

その内訳で見ますと、実を言いますと居宅介護というのは5億あまりの予算でしたけれど来年度は7億8000万あまりという事で、これは45.5%増、ですから1.5倍になっているということになります。塩田部長の話からもありましたけれども、大体そんなものかなと思います。あとはデイサービスについてはそんなに個所が増えないということもありますので、そんなに増える事はありません。それから短期入所は率的には増えていますけれども、これは支援費になってかなり利用者の方が増えたのが一つの要因かと思っております。

グループホームですけれども、じつは知的障害者の方が地域で暮らそうと思うとグループホームというのは非常に大きな位置付けになろうかと思います。国のほうではかなりグループホームで伸ばされたという事があろうかと思います。広島市の方ではグループホームが大体年間22ヶ所ずつずっと増やしてきております。来年度もそれくらいの増を見こんでおりますけれども、いままでと違いましてグループホームを作りたいという事で、ある程度基準が達していれば作りやすくはなっているかと思いますので、みなさん方にご説明をしながら少し力を入れていきたいと思っております。

それから次の17ページで、「5.今後の課題」というところがございます。じつは今後については塩田部長さんの言われる介護保険という話もあるのですけれども、私がちょっと話をするのはもっと近視眼的なところで、広島市の担当としていまの支援費をどううまくやっていくかという視点での今後の課題でございます。(1)指定事業者等の確保、指定事業者とかヘルパーさんの質と量を充実していかなくてはと思っております。支援費が始まりまして事業所がバッと増えたのですけれども、中には障害者の方から問合せがあって「うちは介護保険で手一杯でできません」とか、知的の方の問合せがあった時に「知的障害者のサービスの仕方がわからない」というような事業所もあったと聞いております。今年も事業所の方の研修をやったのですけれども、来年もそういったような研修とかに力を入れて、質の確保それから量の確保という事でやっていきたいと思います。特に来年度は、ヘルパーの研修については大体民間の事業者さんがやっておられるのですけれども、移動介護のヘルパーですね、それから全身性のヘルパーさんについてはなかなか民間の方でやられるところが少ないので、来年度は広島市の方から実施をしていきたいと思っています。

それから(2)ですけれども、相談支援の充実という事で先ほど相談する個所がないというご質問もありましたけれども、障害者の生活支援事業とか地域療育等支援事業の実施時間を拠点にしてケアマネージャーの養成に取り組んでいきたい。利用者の方が相談できる個所をできるだけ増やしていきたいと思っております。

それから(3)の財源の確保という事で、ここは塩田部長さんがおられる時にぜひお話をしたかったところでございます。今年度国のほうでホームヘルパー等の居宅介護の支援事業費の予算が不足するという話がございまして、市町村政令市と国のほうにお願いというか要望に行きましたが、非常に、それはないだろうというものが率直な気持ちでございます。ただ他の団体のみなさんの働きかけもございまして、今年度はなんとか国のほうでかき集めたという事でございます。ただ、かき集められた分より沢山必要でございまして、その部分はいま公共団体の方が負担しているというのが現状でございます。

広島市もサービスの提供見込ほどは入ってこないような見込みを担っています。それともうひとつ、広島市の場合はガイドヘルパーの事業を単独でやっておりますのでそれが支援費にない分だけ国が助かっている。逆にいえば広島市の負担があるという事でございます。将来的な財源という事で早く介護保険との議論をというのが塩田部長さんの話でございますけれども、それに移るまでの財源もなんとか頑張っていただきたいのが私の希望でございます。

それから(4)で指定事業者への監査指導体制の強化という事です。これは従来の措置費でありますと社会福祉法人が認可されて施設経営をするとそれに定期監査とか入っていましたけれども、今回居宅の事業者さんとか支援費の事業者さんが4月から立ち上げられております。ここに対しては広島市の方で指定をしているという状況ですけれども、そこへの指導とか監査という事がやらなくてはいけない仕事でございます。これは先ほども言いましたように、支援費を始まったばかりで、例えば知的の方へのサービスの問題、それから他のサービスとか利用者さんへの対応の仕方とかいろいろ問題もあろうかと思いますけれども、支援費自体の制度は利用者が選択する事によって事業者の質を向上をさせるということです。ですからいい事業者には利用者が集まるからいい事業者が残って、悪い事業者がなくなっていくだろうというのが支援費の理念だと思います。

ただ現在はまだそこまで行っていない、利用者のほうが立場的に弱い状況ではないかと思います。現在社協の方に相談窓口がありまして私どもの方にいろいろ話が入ってまいりますけれども、やはり事業者の方が支援費という新しい世界に入られた方もおられるという事もありますし、いろいろ実態をお聞きしながら質の向上の手助けをしたいと思っております。

最後になりますけれども。今回の予算で議会に提案しておりますけれども、広島市の障害者基本計画というのを来年度から2ヵ年にかけて新しい計画に策定をするような事を考えております。現行の計画というのが平成9年から平成18年という10年間のものでしたけれども、この間に国の新障害者基本計画が策定されるとか、支援費の導入、精神障害者への支援も、かなり変わってきております。そういった新たな課題や視点に対応して、障害者の実態ニーズに即した新たな広島市の障害者基本計画を立てたいと。これについては来年度調査をして再来年度策定をするわけですけれども、障害者の方の声、市民の方の声など広くからいろいろな意見をいただきながら策定をして行きたいと考えておりますので、この場をお借りしてご協力をお願い致したいと思います。


横須賀氏

 ありがとうございました。それでは引続きまして江草さん方から質問いただいた事に関しての回答と、それから施設の経営者として、身体・知的障害者のサービス提供者として、あるいは専門家としての立場から、今後の障害者の地域支援についての課題と、進め方等についても言及していただきながらご発言いただければと思います。


江草氏

 じつは私には質問がないのです。答えられませんけれども、いまお話を聞いておりまして多少とも関係があるかなと思う事を申し上げてみたい。岡山の場合、岡山という町は人口約65万なのですが周辺に2万、3万という町が沢山あるのですね。そこから岡山市が単独で私どもの法人に援助している事業があるのです。自閉症のお子さんの施設。これは法で定められた施設ではないのですね。無認可施設です。これに対しまして1000万を限度として、いままで十数年間歩んできました。それは岡山市民の方々にサービスをしてくださることに対する感謝なのですが、実際は必要なお金のごく一部なのですけれども、まあそういう事がある。

ところが近接している町から、入りたいという事が次から次へ出てくるのです。そうしますと担当者から見ると岡山市の税金でやっていただいているのに、他町村から入れてもらっては困ると。これは事務当局者の考えとして当然かもしれませんね。そういう事を言ってきました。これは数年前の事なのです。私はすぐその事について市長と電話で話しましたところ、市長のいうことに、それはやはり兄貴分が弟や妹の面倒を見るのは当然だろうと、定員のほとんどが他町村というところもあるのだけれど、1割や2割ならいいじゃないですか、度量を示せ、と言う事を担当の課長に言ったようでして、それで済んだと。

こういうこともありますので私は、いまの町村合併、自治体の合併は、財政的に成り立たないから合併してとりあえずなんとか急場しのぎをしようということなのですが、そういうような財政論や掛け算足し算の合併論ではなくて、住民の福祉サービスを向上させるためにはどこと合併させたら都合がいいのかとか、広域的な協力をどうしたらうまく行くのかなど、こういうような格好でいくべきではないかと私は思っております。

そこで大変口幅ったいのですが、私どもが、医者とか薬剤師とかOT・PTを供給している町が幾つかあります。私どもの法人は数10名の医者を常時抱えておりますので、そこから応援に出すのですね。その時にそのような私どもの考え方にご協力いただけない所からは医者を引き上げると言います。我々は医者が不足しているから手伝っているのではない、地域住民の皆さんのサービスを向上させようというご趣旨に賛同しているだけなので、だから引き上げますよと言います。じつは昨日もある町長さんに言いましたら、町長さんが、合併はやめるわけにはいかないけれども趣旨はわかったという事なので、なにかするでしょう。こういうこともあります。

それから自閉症の事でありますが、あるいはどこかでお目にかかった事あるのかもしれませんが、私は数年前まで日本自閉症協会の会長をやっておりました。8年ぐらい会長をやるともうやめた方が良いというのでやめたのですが、その時に、会長である私の地元のご父兄はどうなさっておるのだろうかと言う事でしきりにご父兄と話合いいたしました。いまでは何にもお手伝いする事はないですね。非常に主体的に活動をしておられました。

そしてその結果、逆に自閉症協会の岡山県支部という所から、私どもにこういう事をやってもらいたい、ああいう事をやってもらいたいというご要望が出ます。その1つは自閉症発達障害のセンターを作ると。これは一昨年全国に7ヶ所か8ヶ所できているのですが、最初は中・四国地方では岡山になります。いまも活発に活動いたしております。ですから私は、やらない行政担当者も横着だが、ご家族も行っていい所はどこかと良くご検討の上で、せまられればそれなりの効果があるのではないかと思います。そういうために今日のような集まりがあったのですね。あるいはそれぞれ障害種別によるところのご家族の会がありますね。そこで成功例をお聞きになったら良いのではないか。このように思いました。

それからつぎに旭川荘という法人は最初に自己紹介いたしましたように、知的障害、身体障害の方々についての、入所・通所・在宅支援という三本柱のサービスをここ約47年間くらい続けてまいりました。もちろん障害者の方以外にも高齢者の問題もやってまいりました。その中で大きく流れを申しますと、約50年のうちの初めの30年間くらいは入所施設の整備ということに力を注ぎました。次の10年間、初めからいうと40年までですね、入所施設の新設は全くいたしておりません。規模を縮小しながら通所施設の増設に努めました。そしてこの10年間はそうではなくて在宅支援のみに力を注いでおります。先ほど私も偶然だなと思ったのですが、いろいろな都合で広島市がグループホームを年に2つずつとおっしゃったのですが、私ども旭川荘は1年間に3つずつ作っております。

そしてご承知のように、知的障害のグループホームは13年前から始まったのですね。ところが精神障害のグループホームは2、3年前から。ところが身体障害のグループホームは実は今年からなのですね。非常に遅れている。なぜかわかりません。中・四国で最初の身体障害のグループホームを建築ではなくて改築中であります。既存の建物を改築して始めるという事でやっております。これは爆発的に広がるだろうと思っております。岡山市長と最近話合いをいたしまして、市が持っている建物で空いたところはないのか、くれとは言わないから貸せ、と。改装費までは出せとは言わんから、我々が改装する事について認めろと。現状に復帰して返せなんて汚いことを言うなと。という事を言いまして、市長も、趣旨はよくわかりました、という事であります。障害保健福祉部というのがやはり市にあるのでありますが、そこに言ってくれているようであります。年度が変わりましたら話をしていくと。

それから今日私が少し申し上げておきたい事がありますのは、実は私どもの所では訪問看護、訪問介護を、これを大体高齢者のものだと皆思っていらっしゃるのですが、そうではないのです。私の所の訪問介護ステーションも訪問介護ステーションも24時間体制で、医者と看護婦と介護福祉士が待機いたしておりまして、半分以上は障害者のためです。お宅から電話があるとすぐ駆けつけるという事をやっております。これはそれぞれの町で設置を要望なさったら良いのじゃないでしょうか。これを訪問看護ステーションだけとか、訪問介護ステーションだけやりますと、わずかに数名の職人しかいないのです。ですから別々にやりますと24時間体制とは言葉だけで、実際24時間やろうとしたら大変な事なのですが、2つが一緒にやりますと、一緒の棟におりますのは内科のお医者さん、責任者でおるのですけれども、これがおると両方併せて7、8名ですから、1週間に1回だけ当直をすれば良いわけですね。こういうやり方ならばできるのではないか、ということがありますので、こういうことも考えて、在宅支援の場合に、支援費の使い方もですが、支援費を使ってサービスを提供する側も確保なさればいかがでしょうか。現在の福祉施設はそういう方向に行っております。

私どもの法人では、強くそれを進めております。ですから施設は入所しておられる方については、終のすみ家、生涯そこに住むのだという事を考えてもらっては困ると。これは誰に言っているかというと園長以下に言っているのですよ。そんな思いではなしに、1日も早く自立できるようなお手伝いをするべきである、そして定員の2割は原則として通園部に切りかえると。そして通園の方はどこに通園するのかというと、そこから作業所に通園するのですね。通いに出ていくわけです。こういう形をとる。そうすると1%という数字がありましたね。塩田さんの就職1%、地域生活実現1%を10%に持っていくような努力をしたい。これをやっております。

それからどうしても必要なのは、重い障害を持った方々の医療サービスを受け持ってくれる病院がどれだけあるかという事をお考えいただきたいのです。例えば年末年始は病院も休むわけでありますが、でも救急患者に対しては病院は見なければいけないですね。ところがそこにいきまして重い脳性マヒの方、あるいはけいれんの強い方、これは一般病院では対応できないのですね。そうすると結局旭川荘の救急外来へ行ってくれということになるのです。私どもは絶えず複数の医者、障害者問題に通じた医者が待機しておりますので、これは実は外の人のために待機しているのではなくて、中のために待機しておるのですけれども、駆けつけて来られますと医者は緊急診療を実施する義務がありますから、やるようにいたしております。

そしてその中で特に皆さんに申し上げておきたいのは、ここ数日来宮城県知事の浅野史郎さんが、知的障害者の入所施設をすべて解体という大きな見出しが新聞に出ていますね。まあ嬉しい事であります。嬉しい事ですが、よく読んでみますとこう書いてありますね。「こうした知的障害者を一生にわたって施設に入所させるのではなく、グループホームなどを通じて地域に根付かせていく体制を整えるものである」と。したがって県は平成14年11月、船形コロニーという県立の約500名の方がお入りになっていらっしゃる所があるのですが、それをやめて地域生活に移行していただくという事であります。が、この次がちょっとトーンダウンしまして「宣言はあくまでも解体が目的ではなく、地域生活以降の条件を整備する事、整備や理解が進むと民間はこうした流れに乗っていくはずである」と。これは産経新聞の2月21日号。それから22日、今日でありますが、これにも大体同じ趣旨のことを少し詳しく同じ新聞が報じております。

したがって大きな流れとしては、入所施設か在宅か、ではなくて、すべてのお子さんたちは、すべての障害をお持ちの方々は、子供も大人もみんな社会的自立をするのは当然のことであるという認識が強まっている。それに改革は段階的で、今日行ったらすぐ明日からできるわけではありません。それからまた、片山さんという鳥取県の県知事さんは、地域への移行は賛成だが、こうした宣言はある種の誤解や不安を生むと書いております。千葉県の我孫子の市長さんは、よい方針だ、具体的にまず地域の受け皿の整備をしなければいかんという事をおっしゃっております。今の支援費というのは受け皿作りの1つだ、というように考えるべきではないでしょうか。

いま皆さんのご発言を聞いておりましても、不充分どころか穴だらけであるという印象を持ちました。それにしてもロケットに例えるなら第1段のロケットを打ち上げたわけですね。一度打ち上げなければこれはもう金星も木星も行くわけはないですね。ともかく打ち上げたと。打ち上げたものの今度はやがて2段ロケットを切り離さなければならない。その切り離すためにこうした集まりが非常に有効であると、私は思っております。よく使われる言葉に持続的可能という言葉がありますね。会う時だけパッパッと言ってもしょうがない。持続的に可能、つまり年ごとによくなっていくという見通しがなければいけません。

これについて田原さんとは違った意味で塩田さんがいないのは残念なのであります。実は塩田さんは自己紹介の時、環境省に行っておりました、ゴミの処理のなんとかという事をおっしゃったですね。で、全くそれで環境省の人になるのだろうと思っていたわけです。ところがあまりにも地域支援のサービスが急を告げるにもかかわらず、スピードが出ないので、誰か有能な者にさせなければいかんという事で呼び返されたという噂を聞いております。ご本人はどういうように自覚したのか知りませんが、そう聞いております。したがって我々にとってはエースが登場したわけでありますので、このエースが2段ロケットを本当に打ち上げるかどうか見守らなければいけない。同時にこういう内容のものを打ち上げてもらいたいという事を言わなければ、やはり実態は机の前に座っている人にはよくわかりません。だから我々がこうして、今日おっしゃった事などを取りまとめて、主催者の側から毎週集まりがあるそうですから伝えてもらいます。実は来週の木曜日でしたか、第15回の在宅支援検討会が開かれる予定であります。そこで私もいちいちを申し上げる訳にはいきませんが、今日のこうした雰囲気を伝えまして、委員の皆さんの奮起を促したいし、行政当局の一層の勉励をお願い申し上げたいと思っております。

どうもまとまりのつかない話でありますが、その中に1つレジュメに例をあげてと書いてありますので、その例の1つをちょっとだけご紹介してみたい。皆さんNHK障害福祉賞という賞があるのをご承知でしょうか。NHKが募集していて、今年が38回目なんです。先週この授賞式がございました。その中で「1段を乗り越えて」という題で、岡山にお住まいの天野さんとおっしゃる方がお書きになったものが最優秀に選ばれました。天野さんは全身性障害です。しかし車イスに乗って、非常に体が不自由であるに関わらず、1年半前まで岡山大学工学部の技術員という事で20数年間に渡って勤務されていたわけです。この方は24歳の時にクーゲルベルグベランダ病という、後へ戻る事のない進行性の神経疾患である事がわかったのですね。そして年ごとに症状が重くなる。

最初は岡山大学工学部で、ちょっと時間を間違えましたが、35年間と書いてあります、技官として働いたと。障害と共に歩んだ35年であった。仕事の内容は研究補助、その他座長であった。歩行が困難になってから、パソコンによる仕事が中心であった。もしパソコンがなかったなら、障害者である私は仕事をさせてもらえなかったであろう。仕事は一生懸命した。成果も出した。上司からも信頼された。自分ながら研究して役に立っているという自信を持っていた。決して足手まといではなかった。そのために自分は・・・、という事で書いてあるのであります。仕事において困る事はたくさんあった。通勤においてそうであった。最初は自転車、次はバイク、自動車、タクシーとなったと。タクシーで出勤なのですね。そして大学に着くとその車イスを部屋まで10人の学生がみんなで担いで上げてくれたと。そしてタクシーの運転手は、自分でタクシーに乗る時に背負ってくれた、というのは奥さんも寝たきりなのです。結婚された時はそうではなかったのです。最近寝たきりになられたそうです。

そしてヘルパーさんは6人、交代でやっておると。その他8人のボランティアがいる。8人のボランティアの学生の名前を聞いて私は感激しました。私の大学の学生でした。そのうち半数が今回卒業するというので、この天野さんは不安だといわれましたので、すぐ私は大学でその学生の所属する学部長に伝えまして、押しつけがましいのはいけないが自発的に行ってくれる人がいたら大変嬉しいと言いました。そして結局この方はそれだけではないのです。トイレと入浴のために3時間かかるとかいてありますね。そして現在風呂に入るのに着替えを入れると3時間かかる。以前は1時間くらいでできたのに、障害が重くなっているのが風呂でわかる。天井昇降機を使っている、我が家は様々な機器がある、と言っていろいろ書いてあります。

結局私が皆さんに申し上げたいと思いますことは、この方はいつまでも自分で誇りと自信と未来への希望を持ち続けていたという事である。同時に多くの人々に支えられたとおっしゃっていますね。なぜみんな支えるのかと、私は学生に聞いてみました。そうすると、あの方にお目にかかったらお手伝いしなければならないと言う気持ちが起きるような方だったというのですね。私はこれは道徳的な話をしているのではないのでして、やっぱり我々の新しい社会はどういうような社会であったらいいのかという事を考えなければいけない、という事を私は市民意識という言葉で言ったわけです。

もう一人、これは大阪の方でありますけれども、これは最も皆さんに近いです。家平さんとおっしゃる方で、西暦2002年、まだほんの前に結婚しました。「私は重度の身体障害があります。妻は健常者であります。非常に悩みました。妻が健常者であるから、あなたが障害者で重いから介護してもらうために結婚するのではないか、という思いを持ってもらいたくなかった。そして自分は奥さんに向かって、あなたの介護を求めていないという事をいった」。そこで、どういうような事かと言いますと、自分で自立しようと務めておる、そのためには支援費制度をどのように活用するかという事である、と言って、今日は申し上げませんが、その活用の内容を書いております。

この人は最優秀ではなく優秀賞、2等賞になられました。私は実は今回の7人の方を選ぶ審査委員長をやっておりまして、審査委員はみんなそれぞれに1人づつの方を選んで感想を述べるのですね。私はいま2番目に申しました方の感想を述べました。そこに私は、新しい形の家族を作ったというように書きました。そういう事でございますので、皆さん今日を機会に明るくいくという事を申し上げる事によって市民の協力を得られるのではないか、理解が得られるのではないかとこのように申し上げたいと思います。



横須賀氏


 大変貴重な提起をいただいたかと思います。それでは最後に中西さんの方から、これからの地域支援の中で、3障害当事者の果たす役割について等、ご質問いただいたものと会わせてよろしくお願いたします。


中西氏

 今日は淡々と進んでいるようなのですけれども、本当は結構重要な事を塩田さんは言っています。今日同時に行われている滋賀アミニティーフォーラムでは高原障害福祉課長と山崎史郎さん、老健局の若手・新鋭ですが、障害者の介護保健統合の参謀本部である幹事会の事務局長が今しゃべっているわけですね。それと同じ事を塩田さんは言わなければいけない。同時的な時間の進行上、ここでいま同じ事を塩田さんは向こうで言ったのと同時に、介護保険に入った場合でも君たち安全だよという発言をこちらでする。こういうように官僚の世界は非常に時間差も気にしながら、発言を、同じ事を同時に話すと言うようなことをやっているわけですね。こういう複雑な官僚を今まで相手にしながら政策を作ってこられたのが、温厚でにこやかに話していらっしゃる江草さんなのですね。

江草さんはある意味では日本の福祉の中で一番重要なキー・パーソンというか、こういう障害者の介護保険にという話になると江草さんのイエスがないと進まないという重要な方なのですね。そういうような重要な方を呼んでお話をしているという事で、一語一語が重要になります。驚いたのは江草さんがこの『当事者主権』をもう2回も読んでくださって、10冊も買ってあっちこっちへ配ってくださっているという事を聞いて、よくそんな暇がありますねと、よくあちこちの本をそのNHKブックも含めていろいろなことを勉強してらっしゃる。自分は学者ですから、とおっしゃるけれども、それにしても僕の書いたものなどあちこちで読んでくださっているというのを聞くと、なかなか怖いなという感じがします。ある意味ではそういう政策通なのですよね。

この介護保険問題、29ページに図を書いたのですけれども、塩田さんの言った事はこう言うことなのですよね。この介護保険、老健局がやる身体介助、生活家事援助、今では生活援助と介護保険では名前が変わっているのですけれど、この黒い部分を障害者の介助サービスから切りとって介護保険でやりたいとさっき言ったわけですよね。そしてそれを超える部分を、身体介護・生活援助で時間が超える部分を上乗せといいますよね。この上乗せ部分は時間オーバーの分。

それから横出し部分といって、介護保険で言われるのは移動介護など、それから視覚障害者のガイドヘルパーとかこういう介護保険のメニューには無いようなものは、こうやって横出しといわれるのです。こういうように上乗せ横出しでやりたい、それで保障したいとおっしゃったのですよ、言葉の意味では。そしてこれをどういうように介護保険ではやってきたかというと、財源は第1号被保険者の払った費用から上乗せというのを、基本的に介護保険では行っているのですね。第1号被保険者というのは65歳以上の介護保険料を払っている人たちですね。これは介護保険の利用者でもあるわけですね。その人たちに各市町村において上乗せ料を払わせるのですよね。3500円ならばそれに1000円なり500円なり上乗せして、自分たちが払って、自分たちで上乗せ分を受け取るというのが介護保険のシステムなのですね。ですから障害者がここに入ったとしたら20歳から介護保険になると。3号被保険者というのができるのかもしれませんけれど。その人たちが自分たちのサービスを使いたければそこで1000円を上乗せして、広島市で特別に上乗せ分を作りましょう、というようにしてやるのが介護保険の手法なのですね。

横出しというのも、これも市町村で介護保険料を上乗せしてやるというのが基本です。ですから上乗せ横出しに関しては、市町村は負担しない、都道府県も負担しない、国も負担しない。保険料でやってください。介護保険がどういうシステムかというと、50%は介護保険料収入でやるわけですよね。残りの半分のさらに半分は国が持つ。それからその半分、8分の1と8分の1は都道府県と市町村が持つという形で構成されているわけです。こういう意味で市町村負担というのが今までの4分の1から8分の1に減るという意味では、倍のお金が使われるというようになるわけですね。

次の30ページですが、今までの介護保険ではどのように上乗せ横出しがやられてきたかというのが左側の年表です。1999−2000年に介護保険が始まるのですけれども、ここで上乗せ部分として在宅高齢者保険推進事業というので10億、2000年の介護保険がはじまったときに自立というように判断された人たちの介護予防生活支援事業というので367億円出るのでしたね。これが2001年、介護予防とか成年後見料で500億になる。これが食の自立支援、食事を食べる訓練とか、痴呆性高齢者の事業というのが段々積み上げられていきます。そして2003年になってこれが減ってきてしまうのですよね。病院150億になり、2004年で400億になり、それでこの辺りで生きがい活動支援通所事業の人件費部分が一般財源化されていくと。結局400億と減っていっていると。

こういう上乗せ横出し分というのは税金でやられるものですから、2分の1、4分の1、4分の1と、市町村負担4分の1でやられる部分なのですけれども、やはりこういう形で上乗せを税金部分でやる以外、障害者を入れた場合に介護保険でも方法は無いわけですけれども、そうすると支援費と同じような財源不足に陥る可能性というのは起こりうる。こういう事をどのように塩田さんは解決していこうとするのか、この辺りの財源をどのように確保するのか、なんていうことが明確に示されてこないと我々も不安になると思うのです。確かに31ページにあるように、上乗せ横出しメニューはこのように一杯あるのです。高齢者の生活支援事業、介護予防、家族介護支援事業、その他事業、このようにメニュー的には増えるのですけれども、実際に時間数のオーバーした分は上乗せでやった例というのがあるのかと聞かれると、上乗せ部分までやって、高齢者の負担を増やして、サービス時間を増やしたという例は僕も聞いた事が無い。そういう意味では塩田さんにとって上乗せ分と言うのはなかなかやりにくいと思うのです。

そういうような問題を幾つか解決していく必要がある。障害者のほうで実際そういうのが起こるとどうなるかというのが、31ページに大きな活字で書いてあります。この横グラフ棒みたいなのは、例えば1日24時間出ていた所がどのようになるかというものです。介護保険ヘルパーが1日3時間分。介護保険料で35万円というのは1日3時間分にあたるというように計算しました。それで2階建て部分が右側の部分ですよね。残りは21時間ある。それで全部になるわけです。そうするとこの部分は障害ヘルパーで2階建てにする。これは市町村でも現状出ていたところでは現状を維持する。さっき塩田さんがいわれたのはこの意味なのですね。2階建て部分であなたたちの現状の生活を維持しますよという事で21時間分をプラスするわけです。やはり市町村も、まさかいま暮らしている人に明日から3時間にしますとは言えないから、ここで21時間プラス分が出てきて生活の継続が図られる。これは現実にはもう義務経費化されているわけです。つまり暮らしている人たちの生活を守るということは、どんな事があっても市町村も都道府県も国もやるということで、この分は確保されるだろうということです。

2番目ですが、いま3時間以下のヘルパー利用者しかいないような所で、3時間の介護保険ヘルパーが適用されると、今度は介護保険の3時間が基本ベースになって、そのプラス2階建てというのを新規にやるということにはなかなか市町村は手を出してこない。その辺りをどういうように市町村にやる気を出させて、2階建て部分を奨励させていくのかというのが不安材料といえば不安材料ですよね。このような事を一番懸念しているというのは、やはり施設から在宅への動きというのが、ここのところ支援費制度になってかなり加速化してきた。ところが介護保険制度に移行したら、またこれがしぼんでしまうということがとても心配だということです。だからそれを元気付けていけるような介護保険プラス2階建て部分というのがどのように確立していくのか、この問題の解決方法をお互いに探って行かなければいけないという事なのでしょう。これが今一番の問題点として、まあティピカルに取り上げているわけですけれどね。

その他に対照表にあるアセスメントだとかケア・マネージメントだとか、自立の理念、社会参加の理念とか、そういうのとのすり合わせというのは相当の時間と労力とコミュニケーションが必要だと思うのですよね。この部分の調整というのは我々からすると、かなり高いハードルかと思います。理念の問題というのは一番重要で、お金の問題というのはバブルがまた再来すれば解決するかもしれないけれども、理念というのはある意味で未来永劫の障害者の生活に関わるところだからです。いま自立の理念が改めて類型化の世界から、類型化というのは障害手帳1級、2級、3級、4級という、障害手帳1、2級はホームヘルパー使っていいよ、知的障害者の1、2度はホームヘルパーを使っていいよというような、等級制度による類型化から、ようやく今度支援費制度で個別化に向かってきたわけです。個人のニードにしたがって、手帳によらないであなたたちの必要に応じてサービスを使えるように、ということです。

この世界の福祉制度史上で、類型化から個別化に向かった例というのは無いのですよね。日本の福祉史上でも支援費制度で初めてそこに向かった。そこが10年先取りした制度だという意味だと思いますけれども。これがまた類型化の介護保険に戻って行ってしまうということは、非常に大きな問題です。これは後世の障害者にとって、あの時君たちが介護保険に入ったのがよかったのか、支援費制度という制度を残した方が良かったのかという、やはりこれはいまの目前の利益を考えるのではなく、長い目で10年50年100年と先を見て考えなければいけない事かもしれません。

そういう意味で、我々がいま直面している問題というのは、50年後の障害者の生活を変えるような大きな制度変更なのです。これは障害者の運動史上、かつてこのような事は無かったのですね。われわれ障害者は支援費制度ができると、支援費制度という制度がポンとできてきて、その中身について障害者のホームヘルパーの資格制度はこれじゃマズイですよとか、朝晩の時間帯の料金格差はどうとか、瑣末な問題についてはわりに厚労省とも話合って改善をしてきた例はあるのだけれども、これらは制度の中身ですよね。

今やろうとしているのは、介護保険なのか支援費制度なのかという、制度の根幹の問題です。こういうような事に障害者が政策参加したことは過去の運動史上無いことですよね。そういう意味では、塩田さんも参加して話し合おうといってくれているという意味では非常に開明的な厚労省になってきているのだと思います。でもその議論が、やる時間がいつまでなのか、6月で終わりだよといわれているところに問題があるのか、3月末でこの検討委員会の方も決着を一応つけなければいけないとか、いろいろと時間的な制限があるのは申し訳無いというようにおっしゃった。確かにこれだけ沢山の問題を議論するのにやはり本当に2年や3年、5年かけても足らないくらいの問題かなとも思います。

われわれも介護保険が2000年に始まった時に既にこういう時がくるのだろうと予想して、イギリスの介護保険の状況、ドイツの介護保険の状況、イギリスのケア・マネージメントの状況、カナダのセルフマネージド・ケアの状況などをずっと調査してきました。2003年になって、そういうようなすべての世界中の制度を勉強してきた結果、いまやはりこれはダイレクト・ペイメントとか、別立てのパーソナル・アシスタント・システムとか、根本的なシステム変更が必要だろう、ということです。今まで高齢者ホームヘルプサービスのつぎはぎ状態できた障害者サービスというのが、ある意味で1つの曲がり角にきていることも確かだろうというように思います。これは横須賀さんなどの学者を交えて十分に議論をしていかなければならないし、江草さんのような障害の事もわかり医療のこともわかりというような、学者さんがこういうように具体的な現場で具体的な訪問看護の問題と夜間の巡回の問題等を組み合わせてとか、いろいろな策をなさっているというのはすごく勉強になりますし、そういう事も含めて勉強をしていきたいと思っております。



質問

 広島市内の精神障害の作業所の職員です。精神の話がちょこちょこと出ているのですが、いま支援費の方にも入っていませんしこれからどうなるのかなと思って聞きにきました。田原さんがこられているので、よかったら広島市単独でピア・サポート事業を立ち上げて欲しいと思います。ピア・ヘルパーとかピア・カウンセラーとか、大阪でやっているような就労になるのですが、グループ就労支援事業というのもあるのですが、良かったら広島でも先駆けてやって欲しいなと思います。法定雇用率に精神障害者が入っていないので、良かったら広島市単独で、アルバイトでいいので雇って欲しい。例えば保健センターの方での相談員とか、ピア・カウンセラーの資格を持った相談員とかを雇って欲しいなと思います。



田原氏

 精神障害の方への支援という事は、実は先ほど言いました身体・知的というのにさらに少し遅れてスタートした制度でございます。おっしゃるように非常に足りない部分が多いのかなと思っています。さきほどのピア・サポート事業とか雇用について非常に重要な問題だなと思っています。実は昨年の6月頃になんとかそういう政策をやりたいなと思って労働局さんのほうに行ったのですけれど、かなり厳しい状態でした。しかしこのあいだ労働局さんのほうが広島市のほうにこられまして、今度から法廷雇用率の企業名を、広島市の方が障害者の雇用政策で何か使うということがあったらしますよというのでこられました。やはり国の方も流れが変わってきているのだなと思います。いま不況の中で障害者の雇用率が下がっているので、そこを何とかしなくては行けないと労働局のほうもきて、それに対応してうちも早く何かをやらなくてはいけないと思っています。

単市の事業については、当面、来年度16年度の予算ではいま言われたようなものはまだ入れておりません。ただ16、17年度で改定を計画しております広島市の障害者基本計画の中では、精神障害者の計画は10年前と全然違っていますので、その辺も含めながらいいものを作っていければなと思っています。またその時にもご意見をいただきたいなと思います。


横須賀氏

 ありがとうございました。最後のまとめをするわけではありませんが、先ほどの江草さんのご発言の中で、私は非常に重要な事をおっしゃっておられたなと思いながら耳を傾けておりました。ご質問の中でもサービス格差が出てどうなているのか、というご質問がありましたけれども、田原さんの前でこのような事を言うのもなんですが、基本的に行政というのはなかなか思い通りに、放っていたらやってくれるものでは残念ながら無いのですね。そこで何が必要とされるかというと、やはり当事者、あるいは関係者による働きかけでしかないわけです。広島市が支援費になって、他の自治体、地方公共団体に先駆けて4つあるというようにこの資料の中で田原さんも書いておられましたけれども、なぜそのようになったかというと、それはやはりある障害者団体が粘り強い働きかけをしてきた積み上げなわけです。

おそらくあまり積み上げの無い支援費のなかで、地方公共団体、自治体があるとすれば、それはやはり当事者の働きかけが残念ながら弱かったところではないだろうかと思うのです。やはり残念ながら、当事者等ががんばらなければ、世の中はなかなかいいように進まないという現実があるわけです。本当はそういう事をしなくてもいい世の中、私はがんばらない事を目指してがんばるというわけのわからない事をいつも言うですが、しかし今現在はがんばらなければいけない。特にここ1年は中西さんのご発言にもあった通り、介護保険との統合問題、非常にシビアな局面を迎えております。いまここで腰を上げなければやはり不満足な、障害者が生活できないような制度になってしまう可能性が非常に高いと思うのですね。ですからぜひこれを機会に我々自身が立ちあがって、いろいろなところに働きかけていくということが必要ではないかということを江草さんから提起を受けたのではないかと思いました。

江草さんのご発言を聞きながら1つ思い出した言葉がありまして、イェーリングという法学者の『権利のための闘争』という本があるのですが、その中でイェーリグはこういっています。「権利の上に眠るものは権利を得ず」。日本でも憲法25条で生存権が一応保障されているということになっています。しかし憲法25条があるから障害者が十分な生活ができているかというと、やはりできていないわけですね。こうやって権利が言葉になってあるからといって、そこで歩みを止めてしまっていたのでは、本当の権利というのは残念ながら実現しない、だから権利の上に眠ってしまうと権利というものは得られないのだという事を言っているのですけれども、まさにそうだと。

繰り返しですがやはり当事者関係者がいろいろなところに働きかけていく。1人でやるのはやはりしんどいな、辛いな、恥ずかしいなというところがあるとは思うのですが、そういう時は仲間を募って、一緒に働きかけていくと。多勢に無勢ではないけれども、1人で行ったら顔を憶えられるかもしれへんな、でも10人で行ったら僕の顔くらいわからへんやろ、と気楽に思える部分もあるかもしれません。そういうようなところで私が、もしお役にたてるということがあるならば喜んで、私も広島の市民ですから、お役に立ちたいなと思っております。